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17話 王都に帰ってきました。

 後処理も終わり、王都へ戻った2人はすぐに冒険者ギルドへ向かった。

「よお! 帰って来たな!」

「「……」」

 買い取り窓口で待っていたのは何故かギルド長。買い取り担当の可愛い受付嬢方や、普段お世話になっているゾルではなくギルド長。

 村では大宴会に巻き込まれ、ようやく王都に戻ればすでに噂が広まっているのか、ギルドへ入るなりひそひそと何かを言いながら視線を向ける冒険者達にも辟易していた2人の口角が引きつっても仕方がないだろう。

「おいおい。なに辛気くせー顔してんだよ! 買い取りだろ? 裏で用意してっからちょっとこっち来い」

 「「……はい」」

 半ば引きずられるようにバックヤードへ案内された2人は、表面上取り繕いながら歩いた。

「こんにちは。あの……お二人とも、大丈夫ですか? 何だか目が……」

「マイラさん……良かった……」

「買取カウンターにギルド長がいて……」

 バックヤードで待機していたおっとり癒し系美人受付嬢こと、マイラが麗しの笑顔で2人を出迎えてくれた。しかし、すでにギルド長で精神的疲労が振りきれた姉弟は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

「もう! ギルド長! だからカウンターで出迎えるのはダメだって言ったんですよ! 自分の顔を考えてからそういうことを言ってください!」

「え」

「さ、2人はこちらへどうぞ。鑑定しますのでゆっくりソファにでも座って休んでください」

 まさかの部下からの罵倒。ギルド長は心に大ダメージを負った。

「「ありがとうございます」」

 マイラに促されてソファに座るヒメカとユウトは、少しだけ回復したようでふにゃりと笑った。

「いえ。こちらこそギルド長が失礼しました。それで、今日は主に貴金属の鑑定でよろしいですか?」

「はい。あとワイバーンの解体と買い取りもお願いしたいのですが」

「かしこまりました。ワイバーンは間もなく解体師が来ますので少々お待ちいただけますか?」

「勿論です」

「では先に宝飾品の鑑定をさせていただきますね。こちらに出していただけますか?」

「はい」

 落ち込むおっさn……ギルド長をよそに、サクサクと交渉を進める女性陣。ユウトはソファでくつろぎながら解体師を待っている。勿論ギルド長は視界に入れない。

 しばらくしてやってきた解体師は、予想通りゾルである。

「よう。ついにワイバーンまで討伐したんだってな。用意は出来てるからちょっと持って来てくれるか?」

「あ、じゃあマイラさん、少し席を外します」

「かしこまりました。では鑑定を進めさせていただいておきますね」

「よろしくお願いします」

 宝石類の鑑定は『鑑定』スキルで充分なので、解体を優先する2人。とはいえ、初めての魔物の場合、大抵見学させてもらうのだが。

「よっしゃ。じゃあここに出してくれるか?」

「7体あるので1体は自分達でやってみてもいいですか?」

「お! いいぜ! とりあえず最初は見ておけよ」

「「はい」」



 無事ワイバーンの解体を覚えた2人は、1体だけ解体をしてみるも、やはり本職には敵わないため、残りはゾルに任せることにした。

「いやいや。ウチの中堅くらいには上手いぞ」

「ありがとうございます。でもこれでは価値が下がってしまうので。精進します」

 一通り考察と反省をした2人は、『洗浄』魔法をそれぞれに掛けてマイラの方へ戻ることにした。さすがにワイバーンの解体は数日かかるとのことなので、残りのワイバーンもマジックポーチから取り出して渡しておいた。

「失礼します」

「おかえりなさいませ。ひとまずリストにあった物だけ選り分けさせていただきました」

「そういうものはどういった処理をするものなのでしょうか?」

「現物はギルドが回収し持ち主にお返しする形になります。その時に報酬の打ち合わせを行い、お二方には後日報酬をお渡しする形となります」

「割符のようなものはあるのですか?」

「ギルドカードに情報を登録させていただきますので、他のギルドで報酬を受け取ることも出来ますよ」

 出来る受付嬢マイラは、2人の聞きたいであろうことをサクッと教えた。

(あ、この人姉さんの同類だ)

 斜め下にある頭を見ながらそう感じたユウト。すると、その頭が不意に上げられ、ニコッと笑った。ちなみにマイラも同じような笑みをユウトに向けている。

「なあ、ちょっとくらい俺を慰める奴はいないのか……?」

 そんな空気を壊すように、ギルド長が声を発した。

「あ、ギルド長。まだいらしたんですね」

「ずっといたぞ!?」

「まあ! それは申し訳ありません。職務に集中していたもので。ところでギルド長、明後日には副ギルド長が視察から戻ってきますがお仕事はよろしいのですか?」

「うっ! いや、あの……いつもよりやってるぞ!」

「あら。では安心してお迎えできますね」

「うぐっ……」

 ふふふと笑いながら的確にギルド長を追い詰めるマイラに感心する。冒険者の間では、マイラは「癒し」だの「女神」だの言われているが、本質が垣間見えた瞬間である。これはこれでファンが増えそうだが。

「マイラさん、今日はもうお暇しますので、残りの査定をお願いしてもいいですか?」

「勿論です。ワイバーンの買い取りと合わせてご報告させていただきますがよろしいですか?」

「はい。よろしくおねがいします」

「承りました」

 ギルドカードにその旨を登録し、下手に声を掛けられても嫌なので、2人はそそくさとザライの家へと帰るのだった。

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