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一話擬き
この世界は、補正で出来ている。
例えば勇者補正。
勇者補正を授かった者は良い師と試練に恵まれ、成長限界が高く、成長速度が速い。
つまり戦闘においては貴重な才能である。
だからだ。
彼女は、勇者補正をもつエミリアは今、自分が地面に膝をつけているのが理解出来ない。
モチロン、勇者補正があるからといって誰にでも勝てる訳ではない。
賢者補正や兄貴補正を持つものに負けることもあるし、努力を怠ればレベル1の魔物にだって負けることもある。
だが、エミリアはそうではない。
努力を怠らず、良い師から学び、多くの試練を打ち破ってきた。
王国で疾風のエミリアと聞けば知らぬ者はいない、それほどの実力者だ。
それ故に、彼女は今、目の前の青年に打ち負かされたことが理解出来ない、受け入れることが出来ない。
だからこそ彼女はこう問う。
「あなた、いったい何者?」
「名も無きモブキャラです…」
こうして、勇者様と名も無きモブの旅が始まった…
「始まりません」