表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

出逢い

 俺があいつと出会ったのは、大学の入学式の日だった。

綺麗な薄ピンク色の桜が空一面に舞い上がり

とても幻想的だった。

入学式には最高の天気だ。

そんな日だったからだろう 俺の心でも桜が花開いた。


俺は、例年なら家でゴロゴロしている日に

珍しく大学に来ていた。

今日は入学式の為か周りは初々しいスーツばかり

ジーパンにパーカーの俺は、かなり浮いていた。

だが、今日中に紙束を提出しなけば

単位をもらい損ねるので、

気にせず目的地へと足を動かしていた。

俺は、このやたらに広い校舎をひたすら歩き

目的地まで後100mの所でふと窓を見た。

雨の匂いがしたからだ。

しかし、空は蒼く澄んでおり絵に描いたような雲が

点々とあるだけだった。

“気のせいか…”

ポツリと独り言を呟きまた目的地へと急いだ。


俺は、無事に単位を貰えるという安心感と達成感に浸っていた。

そのためか、普段は一人では行かないが

よく行く喫茶店に足を運んだ。

カランカラン…

俺が扉を開けると乾いた鈴の音が店内に響き渡った。

“いらっしゃい、今日は一人かい。珍しいね。”

“何となくね。”

俺は、マスターの前を陣取り椅子に腰掛けた。

“今日は、どうする。”

“そうだな… 取り敢えずミルクティーちょうだい。”

“はいよ、あったかいのね。”

“さすがマスターだね。”

俺は、ミルクティーが来るまで外の桜を窓越しに眺めていた。

“どうぞミルクティーね。”

“ありがとう”

また俺は、桜を窓越しに眺めた。

“今日は、本当にいい天気だね。入学式日和だね。”

“あぁ 本当に。…そういえばさっき雨の匂いがしたんだ。”

“雨の匂いかい 今日は雨は降らないって言っていたよ。”

“そうか… やっぱり気のせいなのかな”


カランカラン…

しばらくして乾いた鈴の音がまた店内に響いた。

“いらっしゃい、久しぶりだね。”

“どうも、マスター 久しぶり”

一人の男性が入ってきた。

ひょろりとしているが捲った腕からは

がっしりとした腕が見え身長も高く

顔もイケメンと見た目は完璧だ。

“隣 座っても良い”

“ど、どうぞ”

俺は、俺の隣りに座ってきた男に

妙に動揺していた。

“マスター いつもので”

“はいよ”

“君は、学生だよね”

“はい…そこのS大です。”

“そっか”

“どうぞ 濃いめに入れておいたよ”

“いつもありがとね マスター”

俺達の会話は、そこで途切れてしまった。

暫くの間 マスターがカップを拭く音と

俺達がお茶を飲む音だけが

店内で寂しく響いていた。


“またね”

その男性は 静かに立ち上がり

マスターに声を掛けてお店っを出て行った。

俺は その男性を無意識に目で追っていた。

そのまま窓越しに男性を眺めていた。

すると男性は俺の目線に気づいたのか

振り返り静かに微笑み俺の視界から外れていった。


一目惚れだった。

俺は初めて微笑みを美しいと感じた。

そして自分の中になにか疼くものがあることを

はっきりと感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ