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魔法戦士3話 中二病





 【下位魔法】を鍛えた期間は10日だったけど、【中位魔法】はマナバーストが便利というか(ひっ)()に感じたのでそれ以上の15日掛けることにした。

 ホントはもっと時間を掛けたかったところだけど、


「これ以上は勘弁してくれ! 壊れてしまう!」


 と訓練所を管理する人から苦情が来たのでやむなく諦めた形だ。

 ま、ある意味お墨付きをもらったも同然な【中位魔法】。それだけにかなりの威力を秘めているのではないかと自負している。

 これがあればあの時――<暗殺者>の襲撃も楽に対処できただろうね。


「さて、そろそろお待ちかねのアレの出番だよね?」


 ついに! <魔法戦士>の(あかし)たる【魔力剣】が満を持してのご登場だい!


 ――――始まりの虚無より生まれしモノよ

 無為に生き、怠惰を貪るモノよ

 われなんじに生きる目的やくめを与えん

 さすれば我は勝利をもって汝をたたえよう

 我が声に応え、我が前にでよ


「――――【魔力剣】っ!」


 職業ジョブスキルを発動し、体内に眠る魔力を安物の剣に付与していく。

 あ、ちなみに詠唱なんてモノは存在しない。魔法じゃないし、あるわけがない。

 ……じゃあ、さっきのは何だって? 決まってんだろ? ノリだよ、ノリ。言わせんなよ! 下位・中位とアホな詠唱でこっちはまいってるんだよ!

 って感じでとなえただけで深い意味はない。強いて言うなら気合いが違う!

 そして数秒の後に、輝かしき光に包まれた(ような気がする)剣が誕生する。


「素晴らしい! とても銀貨1枚未満だとは思えない剣だよ!」


 以前武器屋で見た、金貨数枚はしそうな物に匹敵する存在感をそのクズ剣が発していた。

 ミスリルも魔力を込める事で強度が増し魔法をも切り裂く事ができるらしいが、所詮気持ち程度。あくまで鉱石の特性に過ぎず、微々たる量しか魔力を吸えないのでたかが知れている。

 しかし【魔力剣】はそれ以上に込められる。それだけにくず鉄で作った武器でも十分に強力な武器へと早変わりする――という訳だ。むろんミスリルならば更に効果が増す。

 しかも魔法ではないということで、他の魔法を使いながら行使出来るという便利仕様。マジックアーマーをまといながら特攻することも可能なのだ。

 更に武器は剣だけに限らず、それどころか金属以外にも……。つまりあらゆるモノに魔力を込める事ができるという訳だ。


「まさに攻防一体とはこのことよ! ふっふっふっふ」


 ボクは剣を軽く素振りをしたところでポージングを決める!

 そこでさらに追加。むちにも魔力を込め、次なるポーズへと移り台詞せりふを決めたところ――で、首筋に視線を感じた。

 振り返りその気配を探ると、そこには――<メイド>のミサさんがいるじゃないですか! クスリと笑みを浮かべ、「もうしょうがない子ね」という視線をボクに向けていた。


 …………。

 ……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああっ! やっちまったー!

 近所のお姉さんに“ごっこ遊び”を見られてしまった気分だよ、これ! ちょ、ホントに……いや、マジで勘弁して!

 早くこの場を去りたいおもいで、ボクはとある呪文を唱えた。


「『休憩中失礼します。マナ先生、出番ですぜ。アッシを彼の地へ飛ばしてくだせぇ』――――ワァァアアアプッ!」


 刹那、ボクの周囲の空間がゆがむ。そして元に戻ったその時、――ボクの身体は後宮のレティの部屋へと転移していた。

 バクンバクンと五月蠅くがなり立てる心臓をあやすため、軽く何度も呼吸を繰り返し落ち着ける


「レティは……いないみたいだね」


 室内を見回したところ、部屋の主はいないようだ。

 本当は自室にワープ地点を記録する予定だったのだけど、いずれ引き払うこともあろうかと思い相談したところ、ここに設置することになった。

 それはともかくとして。


「ミサさんに見られるとか……どんだけだよ……」


 よりにもよって、何時いつも甘えていたメイドさんに。マジで恥ずかしい。

 まあ、ボクは1歳で子供といってもいい年齢だから、おかしくないと言えばおかしくはないのだけど。さすがにちょっと……ね。ボクの精神は中二を卒業していたんだから恥というものを覚えてしまうよ。


「あのなんちゃって詠唱まで聴かれてたら……」


 その場合は恥ずかしすぎてここにはいられない。旅に出るしかない!

 けど、「どこから見てましたか?」などとく勇気もない。こんなときにカリスさんの『勇気』があれば……!

 ボクは【魔力剣】を解除するとそそと自室に戻り、旅支度を始めるのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 それから5日後。

 ボクはいまだ後宮にとどまり続けていた。

 え? 何故なぜかって? そりゃ決まってるでしょ。復讐ふくしゅうしてボクより恥ずかしい思いをミサさんにさせたからだよ!

 いや~。あの晩は盛り上がったよ。さすがサキュバスボクってところかな、うん、まさに雌豚誕生! って感じだった。あの時のミサさんに比べたらボクのごっこ遊びなんてへそでお茶が沸くレベル!

 ――てな感じで、共にその日の出来事はなかったことにした訳で。うんうん、実に対等な(とり)(ひき)だね。

 以上、ボクの黒歴史でした。



 あの日のことを無かったことにしたボクは、中二心がうずく【魔力剣】をそっちのけにし、【強化魔法】を先に高めることにした。

 <魔法戦士>の習得条件は『魔法戦士の魔法を全て使いこなす』だから、どちらかというと【強化魔法】をマスターすることが本来優先すべき事だったんだ。まあ、ロマンに釣られてしまったという訳だね。はははっ。


 で、肝心の【強化魔法】なんだけど――。その名の通り使用者の能力を高める魔法だった。言うなれば、魔力を身体能力に変えるみたいな感じかな?

 パワーアシストはいつも以上の腕力を、スピードアシストは限界以上の速度を、マジックアシストは普段以上に魔力を込められる――といっても【魔力剣】にしか使えない!――ようになり、フィジカルガードは防御力が増し、メンタルガードは暗黒魔法などの精神攻撃の威力を緩和させる魔法だ。


 これらを使い分け、【魔力剣】で颯爽さっそうと戦場を駆け回るのが<魔法戦士>って訳さ。マグネットバリアほどではないがフィジカルガードが十分役に立ってくれることだろう。

 が、【強化魔法】は意外と難しい。

 使用するのは下位魔法語なので別に問題無いのだが、魔法の維持がとてつもなく面倒だ。いや、ただ使うだけなら簡単だ。しかし動きながら、つまり戦いながら維持しなくてはいけないのだ。


「ううむ、ちっとも成長している気がしない……」


 どうやら【強化魔法】はただ漠然と魔法を使えばいいってものでもないらしい。熟練度はそう簡単にまらないようだ。

 『使いこなす』とはよく言ったモノだ。ヤレヤレだぜ。イージーモードはここまでだったらしい。


「さて、もう一度やるか」


 再びスピードアシストの呪文を唱えて身体を強化する。

 ここで【魔力剣】を使いたいところだが、残念ながらボクの集中力では未だ同時に扱うことはかなわなかった。

 自身に魔法の効果が発揮するのを確認すると、ボクは踏みだし剣を斜めに大きくぐ。その剣を途中で止め、踏み込んだ左足に力を込め身体を開くようにして剣を逆に切り返す。振り終えると同時にバックステップ。そのかんにカリスさんの様に体勢を整え、着地と同時に前方へ突きを放つ!

 ここまでが一連の動作。それが終わると今度は逆の向きでこれを行う。それを何度も繰り返した。


 所詮、素人動作だが、この世界にはどうやら道場と呼ばれるモノが存在せず皆我流で剣の道――というか武の道を究めているらしい。要するに大系が存在しないのだ。

 ボクが思うに、これは才能に限界というものが存在しないこの世界ならではの事だろう。たった一撃をきわめ、一撃必殺を志すのが強さの秘訣ひけつなんじゃないかと。


 なので、格好かっこいいと思うツバメ返しからの突き。これを極めるつもりでボクは終始この動きをこなし続けている。

 スカート着用なのであまり大立ち回りできないことからこれに決めていた。装備を考慮して戦法を考えるなんてよくあることだろうし。ソリュンさんも「そんなもんだ」と言っていたし、あまり間違っている動きではないはずだ。

 身体を開いたり上下したりするような真似まねは本来御法度ごはっとと聞いたことがあるが、そこはファンタジー的なパワーで上手うま誤魔化ごまかす予定だ。

 むろん、防御に関しては真面目にやるつもりだけど、やはり必殺連携はこだわりたいところだった。






転生一八二日目

ミヅキ「くっくっく、カリスさんと戦う襲撃者にマナバーストを発射すれば……!」

カリス「ふっ……。そ、それは止めて欲しいかな」

レティ「あら、お姉さまの『ふっ』にキレがありませんわ」

カリス「そりゃそうさ。いくら【特殊歩法】があってもマナバーストの規模次第で回避などできないのだからね」

ミヅキ「ハーッハッハッハッハ! なぁに、カリスさんなら大丈夫さ! そんなときは『勇気』を使えば恐怖なんて感じないはずだよね♪」

カリス「怖くないだけで、ダメージは負うんだけどね……。まあ、死なないとは思うけど」

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