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魔法戦士2話 下位の次は中位





 あれから10日間。

 ボクはひたすら【下位魔法】をとなえ続けた。その結果によりライラさんのが以前張ったマジックバリアと(見た目だけだが)遜色のないレベル――魔法の構成はボクの方が早い。まあ、魔力を必要以上に使ってるからなんだけど――に達している。

 もちろん、アレが全力だったと仮定しての話だ。が、ボクの総魔力量キャパシティとライラさんの物を比較し、日数や使用頻度を計算したらそう間違った物ではない気がする。


 なので、早速(後宮で暇そうにしていた)カリスさんを捕まえ、実験に協力してもらうことにした。


「本当に全力でいいんだね? 一応身体には当たらない場所を狙うけど……万一もあり得るんだよ?」


「大丈夫ですわお姉さま。わたくしがおりますもの」


 ケガの心配をするカリスさんに【癒しの光】があるから案ずるなと告げるレティ。ボクはカリスさんの技量を信じているが、最悪の事態を考えてレティにも声を掛けていた。

 ボクはマジックバリアを張った状態を維持し、両手を広げ「バッチコーイ!」と呼びかけた。


 カリスさんは一度嘆息するも顔を上げた途端、表情を真剣マジな物にし、『アイテムボックス』から剣を取り出し――ボクの視界から消え失る。そして次の瞬間、ボクの眼前に出現した。

 ――【特殊歩法】かっ!? しかも攻撃態勢に移っている!


「キェェェエエエイッ!」


 稲妻のような突きがボクに迫る。

 来ると分かっていたから視認できた攻撃。もし敵であったならば、声を掛けられなければ感知出来なかったであろう一撃がボクに肉薄する!

 ガチンッ!

 マジックバリアがそれをはじき返す。

 カリスさんはその反動を利用し、大きく後退。着地した時には既に次の攻撃に移れる準備を終えていた。

 流れるようなその動作は癖になるまで訓練をした証拠だろう。――が、これは一撃の耐久テスト。追撃するつもりのないカリスさんは構えを解除するとともにボクの元へと歩いてくる。


「……。うん、大丈夫そうだね。ここにちょっとだけヒビが生えてるけど、十分実戦で使えるよ」


 攻撃した箇所をつぶさに観察したカリスさんはそう告げてきた。

 視線を示された場所にやると、カリスさんが刻んだ傷痕がほんの僅かばかり残されていた。


「同じ場所を狙っても多分あと一撃は防げそうだね。けど、だからって安心してもらいちゃ困るよ。この程度なら精霊剣<フランベルジュ>を使えば貫通出来るから」


「そうですわね。ですが、これなら普通の武器を相手にした場合なら十分かと」


 聖剣――ボクと出会った頃から常に使い続けている――を仕舞しまい込んだカリスさんのボソリとつぶやいた声に、近づいてきたレティも賛同の意を示す。


「え? 聖剣より精霊剣の方が強いの?」


 以前ボクの貞操と引き替えにくれると言った聖剣よりもすごい武器があるのだと聞き、思わず――だってしょうがないよね? もっとも価値のある物を呈示されたと思ったら違ったんだもの――といった感じでたずねてしまう。

 カリスさんはにこりと微笑ほほえみ、一本の剣を『アイテムボックス』より取り出す。

 それは聖剣と比べとても無骨なつるぎだった。何の飾り気もなく申し訳程度につばがあるだけ。刀身は赤く、まるで炎を連想する色合いであった。

 確かにこれならば価値で言えば聖剣の方が高いだろう、見た目で言えばだが。しかし武器の本質は見た目ではなく性能が肝心だ!

 ボクの視線を感じたのか、カリスさんはその剣の由来を語り始める。


「これは、ね。剣の形をしているけど、実は“精霊”とも言って良い存在なんだ。武器の精霊ウェッポンスピリットとでも言えばいいのかな。詳しい話は除くけど、この精霊剣はボクと契約した精霊と捉えてくれていい」


 んん? 精霊といったら地水火風の四大だけど、それ以外に類する属性の精霊もいるってことか?

 そもそもだ。<○魔法師>でなくとも契約できる方法があるっていうのか?

 頭の中でたくさんの疑問符がサンバを踊っていると、カリスさんはボクに構うことなく話を続けていく。


「そんなわけでね、切れ味とかは聖剣<ファーレン>には及ばないけど、こと魔法に関してだけは精霊剣<フランベルジュ>の方が圧倒的に効果を発揮するんだ。これ自体が魔法そのものに近いからね」


 ナルホドネー。あの精霊剣<フランベルジュ>は魔剣って存在やつなのだろう。<魔法戦士>の【魔力剣】とは違い威力を追加する事は出来ないが、強い力を最初から秘めている、恒常化されている――ってところか。

 聞きたいことはまだまだ沢山あるけど、特殊職に絡む可能性や習得条件を含む場合もあるので深くくことは辞めておく。

 それより今は、早く<魔法戦士>の職業ジョブスキルに移れるように頑張る時間だ!



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 王族としての仕事があるカリス、レティ姉妹が退場した後ボクは、【下級魔法】にひとまず見切りを付けて、次なる【中位魔法】に励むことにした。

 3つしか魔法の無かった下位のそれと比べ、【中位魔法】はなんと! 7つも魔法が存在している。


 マジックブラスト。この魔法は、一言でいうなら大砲みたいなものだ。

 マジックアローのように、そそぎ込む魔力によって数は増やせず、単発で固定されている。だがその分威力に特化しており、テクニックを捨てた攻撃魔法――脳筋魔法ってところかな?


 アローを破壊力に特化したのがブラストであるならば、貫通力に特化させたのがマジックランス。

 この魔法は特攻する前衛に先駆けて使う事で、敵軍に対し優位に立てる――防ぐのは無謀。余程の防具か防護魔法がなければ避けるのは必至で、敵の勢いをほぼ確実にぐことが出来る――魔法だ。まあ、ボクなら(雑魚以外の)敵数が多い時は撤退を進言したいけどね!


 フォースショットは散弾銃みたいな感じで、魔力次第で1から5個の球体を作り出すことが出来る。それを射出して任意の場所で散弾させられる魔法だ。

 マジックアロー、ランス、ブラストを個体対象魔法とするならば、フォースショットはいわば地点対象魔法ってところかな。


 これら3つはマジックアローの威力や命中力の強化番ともいえる魔法だが、【中位魔法】には範囲に特化した攻撃魔法も存在する。それがマナバースト。

 この魔力を圧縮してから射出する魔法だ。それをフォースショットのように飛ばして指定した地点で爆発させる。

 この爆発を見て、「ボンバー!」と叫んだ人がいたらしく、それが原因でボンバーヘッドが生まれたという。ぶっちゃけどうでもいいマメ知識だ。



 この4つで攻撃魔法は終わり。残りは防御魔法と移動魔法になる。

 防御魔法はマジックバリアをそれぞれ物理防御と魔法防御に分けたような形でマグネットバリアとアンチマジックアーマーが存在する。


 マグネットバリアはマジックバリアと同じく固定された膜を生み出すだけだが、金属攻撃をはじき返すという効果が付随される。その代わりに対魔法に関してはもろくなってしまうのだが。

 マジックアーマーはより利便性が増したマジックバリアだと言ってもいいかな? 膜の内側でしか動けなかった以前とは違い、アンチマジックアーマーはアーマーの名の通り身体にまとう結界を作り出す魔法だ。というか、前衛向けのマジックバリアじゃないかな。


 何にしても、どの防御魔法も内側からなら攻撃を透過するので、防御魔法を展開する人以外に魔法や弓などの遠距離攻撃をする人がいる場合は【中位魔法】など使わず、広く強固なマジックバリアを選んで戦うべきだよね。

 そもそも複数の魔法を同時に行使出来ないので、ぶっちゃけ前衛を補助する余裕なんてないはずだ。チームを組むためには魔法職でもある程度戦えないとダメなのだろう。

 ライラさんだって鋭い突きを放つ技量があった。なので精霊魔法に走らずに<魔法戦士>を取ったのは間違った選択肢ではない! そう信じたい!


 で、最後の移動魔法だが。

 テレポートならぬワープだ。

 空間を跳躍することで、一度行った場所というかワープ地点を設置した場所に瞬時に移動する事が出来る(つじ)()(しゃ)涙目の魔法だ。

 けど、この魔法は自分限定だったりする。集団を移動させることは出来ないからぼっち専用、あるいは逃亡のための魔法とボクは感じている。


 ――仲間のピンチを感じ、一人だけ逃亡する<魔術師>……。


 うん、ないね。あり得ないわ。知り合いを置いて逃げるとか目覚め悪すぎてとても出来る物じゃないね!

 ただし、臨時パーティを除く!

 ボクは聖人君子じゃないからね。どうでもいい人間の命などクソ食らえ! だ。


 ちなみに【中位魔法】の呪文は【下位魔法】とも違う変な方面でびていた。

 ヤのつく自由業さんたちが、「先生、お願いします!」みたいなノリだった。

 この先に上位魔法とかあるだろうし、それがどんな風になっているのか正直なところ興味が尽きないね。






転生一六二日目

ミヅキ「ボクのイメージだと聖剣の方が強そうなんだけど……」

カリス「聖剣は<聖人>がミスリルの剣を長く愛用することで出来る物だからね。いや、〝変質した〟と言った方が良いかな? 所詮限定スキル『聖剣』の一部が染みこんで宿っただけに過ぎないから、その程度なんだよ。実際の『聖剣』が込められた一撃は<精霊武器>も及ぶところじゃないよ。このほかにも『聖槍』という強力無比な投擲魔法があるらしいけど、詳しいことはさすがに私も知らないよ」

レティ「<聖人>は<信徒>から至れる最上位職ですよ。みなさん、どうですか?」

ミヅキ「うぉっ!? レティが急に布教を始めた……だと……!?」

レティ「あと一人が中々見つからないんですよ!」

カリス「焦ることはないよ、レティ。最悪お金で解決すればいい。ふっ」

レティ「それじゃ<聖女>に選ばれないかもしれないじゃないですか! 神はみているんですよ!」


※付録※

<魔術師>(複合2次職)

条件:魔法使い

技能スキル:【中位魔法】【中位魔法語習熟】

限定:『詠唱』

習得:中位魔法語を習得する。

備考:魔力を扱うとは……こういうことですよ。


『詠唱』

効果:淀みなく詠唱出来る。

備考:早口言葉、正確な発音、なんでもござれ。


【中位魔法】

効果:広範囲に影響する魔法や戦闘に特化した魔法を使える。

備考:チィ、チマチマとやるのは苦手なんだよ!

 ・マジックブラスト(大砲) ・フォースショット(散弾)

 ・マナバースト(爆発)  ・マジックランス(貫通)

 ・マグネットバリア(反物理結界) ・マジックアーマー(反魔法鎧)

 ・ワープ


【中位魔法語習熟】

効果:難解な魔法語の習得を手助けしてくれる。段々と難しくなっている。

備考:やっべぇ、これ何語だよ……。マジ共通語でおk


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