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エピローグ




 それからのボクたちは、あの日――カリスく……カリスさんを迎えに来た<家令>のエルバさんに連れられ、四日の道程の末に王都<エコノミックワーカー>――もう、つっこまんぞ!――へ辿たどり着いていた。


 王都は<ホリックワーカー>をも超える城壁を有する、白亜の城を中心とした同心円で形成された都市だ。内側を貴族と一代貴族、外側を平民の住居とし、その境目は市場、工場、役所、宿泊施設、そして『神殿』などの生活に必要とされている物が配置されている。また、生活区と貴族区を分ける境目には第二の城壁と呼ばれる物がそびえ立っており、その先の王城との境目には堀が巡らされている。

 城門は東西南北と設置され、そこから伸びるようにして道が堀までつながっている。それを元に更に区画分けがされているが……いまは置いておこう。


 エルバさんが言うには、


「<暗殺者>ギルドへの依頼撤回にはもうしばらくお時間を頂きたい」


 とのことなので、安全を考慮した上でカリスさんの実家たる王城へとお邪魔し、一室を借り受けていた。

 そこでボクたちは、これまでの事の成り行きを説明すると共に、始祖としての自覚を促された訳で――。


 その一方でボクは<メイド>さんと戯れていた!

 以前ヨーク商会で見た、服を着ただけのなんちゃってメイドさんとは違い、職業:メイドの素晴らしい方々だ! 聞いた話によると、上級職には戦えるメイドさん! <バトルメイド>なる職業ジョブまであるという。是非ともボクにも仕えて欲しいもんだよね!

 まあ、いまのボクには無理な話なので、メイドさん成分を蓄えるべくセクハラをしていたって感じさ。


かゆいところはありませんか?」


「もうちょっと上の方」


 柔らかな声で尋ねてきたミサにボクは適当なことを言って、至福の時を少しでも延ばそうと画策する。

 ボクはいまミサさんの膝の上にいた。そう、膝枕だ! 耳かきですよ! ムチッとした太もものがボクの頬を包み込んでくれているという訳ですよ!

 ホントはお尻などさすったり、【吸魔】を使って「いやぁん」と声を上げさせたりしたいところだったが、ボクの耳が大ピンチ! になるので、どうにかしてその欲求を抑え込んでいた。後者に至っては更に気絶させてしまうわけでして……。


 このほかにも(入る必要がないのに)お風呂に入れてもらったり、「あ~ん」と食べさせたりして貰ったりして――ぶっちゃけ、調子に乗っていた! ボクの我がままかなえてくれるメイドさん、特にミサさんが甘やかしてくれるから歯止めが利かなくなっていたともいう。

 でも、ね。これはつらい思いをした後のご褒美だと思うんだよね! 生後一ヶ月未満のボクは<暗殺者>に付きまとわれながらの()(こく)な旅を終えたわけでして。むちが先に来たなら、その後にあめが来てもいいんじゃないか? いや、来るべきだ! としてボクはこの楽園生活を堪能していた。


 『ご褒美』で思い出したけど、ライラさんに発破を掛けた【甘言】による約束は、ボクの1日デートを所望されてしまった!

 やはりレズか。レズなのか! ――と驚愕きょうがくすることになったが、実際は快楽のとりことなっているだけだった。皆さん、エロいお姉さんはお好きですか? ボクは大好きなので、聞くなり早速ベッドに連れ込んで【吸魔】の虜にしてあげました、まる。


 その途中でカリスさんが乱入してきて、「私のご褒美もそれで頼む」と言い出してきた訳で――。

 で、頂いちゃったわけですよ。あ、ちゃんとカリスさんは女の子でした! ナイチチだったけど、あれだけの戦闘をこなしておいて玉のような肌は反則だと思います!

 筋肉も特についてないし、どうやってあれだけの戦闘を――と考えたところで、この世界は全てスキルが肝心だったと思い出したのですよ。腕力が上がるのと筋肉が必要なのはイコールじゃないんですよね。色々とご都合主義な感じが否めませんが、そこのところどうなんでしょう、<ワーカー>さん。


 それはそうとして、ボクにとってもライラさんとカリスさんの要求は、願ったりかなったりな状況だったのですよ。

 ――実はですね、ボク、自分の魔力を回復するということが出来ないんですよ! 素養っていうかスキルを持っていない、それだけのことなんですけど……。

 という訳で、身体もまりょく美味おいしく食べさせて頂きました。

 情事の後のカリスさんの顔はモザイク推奨って感じでしたね。中性的な顔であの顔はマジやべぇ。望まれたので最後まで吸い取って上げた結果がアヘ顔。それ以来カリスさんを見ても王族って思えなくなりました! ごめんなさい、王様、王妃様……。


 ちなみにカリスさんの母親は、別にめかけでも不貞の相手でもなかった。れっきとした正妃であり、当代の<宰相>を担うフリューベル子爵の娘だとか。ぶっちゃけ政治の采配を振っている彼の手腕により成立した結婚だそうな。

 迎えに来たエルバさんはそんな人物の長男だとか……。

 エルバさんは次代の<宰相>に就くべく、もっか職業ジョブを修めている最中だ。<家令>であるのもその(いっ)(かん)で、それを習得すればあとは<政治家>だけとなるらしい。

 の家がそのうち国家転覆でも狙いそうで、聞いて少し後悔してしまった。




 それから六日後、王都に訪れてから一五日後のことだった。


「ミヅキさま。<暗殺者>ギルドにおいて、ミヅキさまへの暗殺依頼が撤回されました」


「ふぇ?」


 ミサさんにおやつを食べさせて貰っているところに、エルバさんがやって来てそう告げた。

 ライラさんがそれを聞いて、おもいも世ならない事を告げてきた。


「そう、なら――私のお役目も御免かな?」


「ふぁっ!?」


 いきなり何を言い出すんだライラさん! もっとボクを守ってちょうだいな。


「ほら、だってさ、ミヅキを守護してくれる人が出来るまで……って話だったでしょ?」


 うぅむ、確かそんなことがあったような。


「ごくんっ。いや、さ。確かに<遊び人>は卒業したよ? 王家付きの<司教>さんにお願いして貰って」


 ボクはいま<運び屋>の職業ジョブに就いていた。習得条件が『自分の体重と同じだけ【ポケット】に収納できるようになる』なので、筋力トレーニングならぬ【腕力向上】で、自身の体重を支えられるように訓練の最中だ。

 王家付き<司教>さんにはお金を払うようなことはなかった。の人物は王家から固定給を貰っており、カリスくんのお願いの元にやって頂いた訳でして。

 ――と、いまはそれどころではない。


「それに依然とボクは戦い手段を持っていないんだよ?」


 ライラさんがいなくなってしまえば、ボクが精霊さんを操ることも出来なくなる。それを彼女に告げると、


「……確かにそうね。でも、ここに滞在すれば王女カリス様が守ってくれるでしょ?」


 ライラさんはズバッと事実をたたき付けてきた!

 うぅむ、それはその通りなんだけど――。

 ボクにとってのライラさんは、時に守ってくれて、時に叱ってくれる。保護者みたいな存在なんだ。この世界で始めて出来た味方ってこともあり、いてくれるだけで心強かった。そんな人物がボクの元からいなくなるなんて――。


「それに私もまだ修行の途中なんだ。私――<精霊術師エレメンタラー>になりたいの。<風魔法師>を前回の戦闘で修めることが出来たから、残りの2つ。いま就いている<火魔法師>と<土魔法師>をきわめる修行の旅に行こうと思ってるわ」


 夢を語るライラさんの瞳には希望があふれていた。

 ボクは黙ってそれを聞き続ける。


「今回ほど過酷とは言わないけど、その旅には正直――ミヅキは足手まといになるわ。だからね、あなたとはここでお別れよ」


 ライラさんの言葉が胸に刺さる。

 彼女は金銭のやり取りではない善意でボクを守ってくれていた。自由意志でやってくれていたのだ。なので、ボクにはライラさんを縛るという権利はない! けど、けど……!

 ボクがすがろうとしたその瞬間、エルバさんに口を挟まれてしまった。


「ご歓談の最中失礼します。ミヅキさま、私どもにとっても始祖さまを預かるというのは栄誉でございます。ですから、最善の注意をもってお守りしますのでどうかライラさまを解放しては頂けませぬか?」


 語る言葉は丁寧にもかかわらず、彼がボクを見つめる視線には批難の色がこもっていた。まるで子供を叱りつける父親のように――。彼の瞳には夢を追う若人を縛り付ける嫌な女、そう見えていたのかもしれない。


「――っ」


 ボクはそれに言い返すことが出来ない、出来なかった……。

 約束、一緒に(主にボクが)バカやったこと、極限での死闘、語られた夢――。ライラさんと共に過ごした光景おもいでがボクの頭の中で際限なく回転していく。


 ――そっか……。ボクはライラさんのことが好きになり始めていたんだね。


 離したくない! それがボクの感情の全てだった。別れを告げられて自覚するなんて何処どこ物語フィクションだよ、ったく。

 ボクはいつの間にか流れていた涙を拭い、ライラさんに向かって微笑ほほえむ。


「うん! 分かったよ、ライラさん! いままで有り難う御座いました」


 そう言って深くお辞儀をした。

 いまなら諦められる。いまなら応援してあげられる! そう思い、ボクはライラさんの夢の成就と無事を願った。

 ぽつり、ぽつり、と絨毯じゅうたんらしていく事を気付かぬまま――。

 ボクはその日、一晩中ライラさんを愛した。



 次の日、ボクが起きる前にライラさんはこの王都<エコノミックワーカー>を旅立っていった。

 それから数日後、城内の庭園でボクとカリスさんは花をでていた。

 花の香りを楽しんでいる王女姿のカリスさんに――、


「ねえ、カリスさん」


「なんだい? ミヅキ」


 少しれてしまった声でボクは誓った。


「ボク、強くなるよ」






転生八二日目

 ぴろろ~ん

ライラ「こ、これは……」

 ライラは祝福【始祖の願い】を獲得した。


 【始祖の願い】

 説明:寿命が延びる。始祖が生きて再び出会うことを願った(あかし)


ミヅキ「あ、なんかライラさんとつながったような気がする」

カリス「ふっ、(きずな)ってやつじゃないかな」


※付録※

<メイド>(複合1次職)

条件:女性であること。学徒・料理人・菓子職人

技能スキル:【清掃】【奉仕】

限定:『仕える喜び』

習得:1年間同じ主人に仕える。

備考:あぁ、またやっちゃった。これじゃメイド長に叱られちゃう……。


『仕える喜び』

効果:心から仕えたいと思える主と会合した場合、強制的に雇わせる。その場合は給金3割減となる。

備考:あ、主様……。どうか、どうか今宵だけは……!


【清掃】

効果:染み・汚れを浄化する技能スキル

備考:部屋の汚れは心も淀んでしまいます。


【奉仕】

効果:他者のためにする行動にプラス補正。

備考:喜んで貰えるって嬉しいな……。


ミヅキ「【奉仕】って、『キミは! ボクが! 守るからっ!』ってやつだね」

カリス「自身の気持ちで【甘言】並みに強化されるそうだよ」

ミヅキ「それにしても『仕える喜び』って――ヤンデレさんが取得したらヤバイな……」

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