表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/53

遊び人8話 すべての決着





 カリスくんに遅れてライラさんの元へと戻ると、そこには死神しにがみ対峙たいじする彼の姿があった。

 ぶつぶつと口ずさむ死神にカリスくんは詠唱をさせじと迫った。気合い一閃いっせん! 獲物おおがまを壊す勢いで剣をたたき付ける。死神は大鎌をクルリと回しその攻撃を受け流そうとする――も、それを読んでいたカリスくんは途中で攻撃を強引に切り返し、(よこ)()ぎにする! 死神は大きく後ろに飛ぶことでそれを避ける。が、体勢を崩しているっ!

 ――これで決まりか!

 しかし、カリスくんが追撃を掛けようとした瞬間、飛来する矢にチャンスをくじかれてしまう。まったく、厄介極まりない狙撃手だ。何処どこのどいつだよ、コンチクショウ!


 1対2の状況であったが、先程の巻き戻しに感じられる。

 もし、カリスくんが駆けつける前にスノーアロー・ウルブスの一矢いっぴきが残っていたなら、優勢に持ち込めたかもしれない。狙撃手を狙うのもよし、カリスくんとの戦いで生まれるすきを突くのもよし、何でもござれだった。しかしカリスくんが――。

 いや、よそう。今現在この状況に持ち込めてるのはカリスくんの奮闘のおかげなのだ。感謝こそすれ批難するなど見当違いにもほどがある。恩知らずといってもいいだろう。むろん、ボクの活躍あってこそだけどね!


 けど、いずれ魔法が完成してしまう。そうなったらいくらカリスくんでも――。

 ボクは氷の大狼スノーウルフに盾になってもらいながら、ライラさんに迫る! 少し身体がだるい感じがする。もう体力の限界か!?

 近づくなり手を首へ持って行き鼓動を確かめてみると――動いている! いや、流石さすがに死んだとは思っていなかったけど、少し感慨深いものがあるのは確かだ。


「ねえ、ライラさん。ねえ、起きてってば!」


 ボクはライラさんを揺する。

 圧倒的不利とは言わないが、この現状を打開出来るのはもはやライラさん以外には存在しない。あるいは助っ人すけっと――。いや、封鎖されてるから無理と諦めよう。やはりライラさんをたたき起こすしかない!

 しかしいくら揺すってもライラさんのまぶたは開かない。まるで(たぬき)()(いり)りしているかのように……。


「これでも起きないか……。じゃあ仕方ないよね」


 一応、寝たふりをしていないか確認の言葉を掛ける。うん、やっぱり寝てるというより気絶と言った方がいいかもしれないな。そして言い訳じみた言葉と共にボクは最終手段に躍り出た。


 【吸魔】を発動したゴールデンフィンガーでライラさんのおっぱいへと手を差し伸べる。むにゅぅ、むにゅぅ……。うむ、気持ちいい。――ってそうじゃなくて、早く起きなさい、ライラさん!

 手のひらから伝わってくる魔力。と、同時に魔力が全身に行き渡り、先程生じていた身体のだるさが抜けきっていく。ああ、そうか……。これが魔力不足による現象か。初めての感覚ゆえにどうやら気付かなかったようだ。


「う、うぅん、あ、あ、あっ、あぁん!」


 感じ始めたライラさん。敏感になったいまなら! ボクはそこで【吸魔】を打ち切り彼女をたたき起こす。少し(ほお)が腫れたかもしれないが、まあ、気にしないでおこう。


「痛っ。もう、何なのよいったい……」


 頬を(物理的に)赤らめて身体を起こすライラさんは少しチャーミングだった。


「ライラさん! まだ戦闘中なんだだよ、気を引き締めて!」


「――ッ!」


 ボクが注意を呼びかけると気絶前の記憶が喚起したのか、ライラさんは我に返り呪文を口ずさみながら身体を起こした。うん、これで痛みは戦闘の所為と勘違いしてくれることだろう。

 それを見てオオカミさんを一矢いっぴき、狙撃手へ差し向けた。もうボクたちの守護は一矢いっぴきで十分だからね。出撃したのはライラさんを守っていた最初の角付き。暴れ足りないってのもあったのだろうが、ボクとの約束のために活躍したそうにしていた。

 ちなみにボクをくわえて飛んでくれたオオカミさんにはキスをプレゼントしておいた。ひんやりとした身体で唇が少しくっつきそうになって痛かったけど……。

 あとはライラさんの魔法が完成するのを待つばかり。


 視線をカリスくんの元へ戻す。

 カリスくんは相手の左側を集中して狙っているようだ。踏む込むと同時に胸――ではなく、腕を突く。何故なぜ――っ!? いや、様子が変だ! 半身をらすだけでいいと思っていた攻撃を死神はわざわざ受け止める?

 それからも(しつ)(よう)にカリスくんは左を突く。もう斬りかかることもせずに。

 明らかにおかしい。ボクでさえ避けられる――とは思わないが、スノーアロー・ウルブスを防ぎきった体術と(かま)(さば)きからしてあまりにも不自然……というより異常だ。如何いかにカリスくんの猛攻を受けているからってこの無様さは一体何なんだ!?


 カリスくんが稲妻のような突きを放つ。しかし、やはり左腕を狙うという中途半端なところだ! おぉぅ、今のを転がって避ける? らしくない、らしくないぞ死神! さっきまで旋回斬りとかしてたじゃないか! いや、らしくない方がボクのためにもいいことなのか?

 このまま死神が不調なのは歓迎すべき事ではある。でもね、でもね……何かこう、釈然としない物が残るんだよ!

 その時ボクの視界にある物が映る。

 ボクはそれを躊躇ためらいもなく取りに走ると、思わずといった感じで詠唱を中断したライラさんから「ちょ、ちょっと! 危ないわ!」という声が掛かるが、構わずそれを拾い上げると共に投げつけた。――そう、石だ! それも小さな小さな小石。それにボクは怒りを込めて【投石】で投げつけてやったんだ。


 放たれた一陣の小石は、カリスくんの攻撃を避けた死神の、左腕の肘へと吸い込まれていく。そして――千切れる腕ぇぇえええ!? ボクの怒りにそんな効果が!

 そのチャンスを逃さすこともなく、カリスくんは死神の大鎌を切断してしまった! 勝負あった! そのままカリスくんは追撃をしかける――こともなく、剣を突きつけながら死神に語りかけた。


「もう、君たちに勝利はないよ。どうかな? このまま私たちを諦めてくれないかな?」


 ちょ! どこの勇者だよ、カリスくん。敵に慈悲を見せるなんて……。――って、カリスくんは<勇者>だった! いや、でもたとえ<勇者>でもここはブスっと一発やるところじゃないのかね?


 その時ボクの耳がある物を捉える。

 ボクはライラさんに振り向き、うなずくと、彼女もそれを返してくる。やってしまいなさい、ライラさん!


「行きなさい、シルフ! ――シルブンネット!」


 ライラさんの手から吹き出す糸の様なマジックネット。それにご自慢のシルフが力を加え『切り裂き』効果が付属される。以前見た魔法だ!

 シルブンネットはライラさんの手から離れ、おのずと死神の身体に巻き付いていく!


「よし、そのまま輪切りだ!」


 おっと、興奮のあまり声に出してしまったよ。腕まで振り上げてるじゃないか。紳士なボクとしては頂けない行為だったな。

 深呼吸をしてクールダウンしたボクが見たのは――。芋虫のようにぐるぐる巻きとなり、それに傷を負わされて血をにじみ出している死神と、ボクが撃ち抜いた手を見分するカリスくんと彼に近づくライラさんの姿だった。


「え、殺すつもりじゃなかったの?」


 ボクの無慈悲な独白が真夜中の街へ消えていった……。


 蛇足ではあるが、躊躇いもなく石を拾いに走るという行動に出られたのは、精霊スノーウルフから狙撃手を倒したから『褒めて』と念を飛ばされてきたからだ。ボクには勇気はおろか、蛮勇を発揮する()()(しょう)はないからね。安全なとき強気に出る、それがボクさ!

 それとカリスくんが執拗に左腕を狙っていたのは、戦っている内に【弱点看破】で見抜いたからとか。終わってから調べた結果どうやらそれが義手でありながら魔導具まどうぐだったらしい。どの様な効果があるかは【上位鑑定】で調べないと分からないそうだが。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あのときカリスくんが刺客を見逃そうとしたのはともかくとして、ライラさんはライラさんで思惑があった。そう、ここら周辺に張っている規模と依頼内容の確認だ! 拷問するつもりか!? やるな、ライラさん! ――って、思ったら普通に尋問するだけだった。

 そんな肩すかしを食らったボクであったが、やはりというか死神もとい職業:死神の刺客はしゃべることもなく黙秘を続けた。

 こうなってしまってさすがにボクも殺せ! とは言えない。なので、ボクは【吸魔】をすることで胸のくすぶりを癒やすことにした。あえぐ声を嘲笑あざわらってやろうとちょっとだけ考えた。

 全てを吸い尽くそうとしたその時――。


「ご、ふっ」


 突如<死神>の口から血があふれ出す! あれ? 【吸魔】って身体に実はよくないの!? いや、違う。舌をんだんだ!

 まさか自決するなんて――。ボクならば絶対にやらない手段を用いてきた。

 しかも血に混ざるようにして酸っぱい匂いまで! これって毒じゃ……。服毒するほど重要な情報を持ってたとは思えないのだが。――となると、失敗=死という()(こく)な鉄のおきてでもあるだろうか。う~む、この世界は命の価値が低いみたいだし、それもありえそうだ。

 ライラさんもカリスくんもこれには絶句。やっぱり二人から見ても自殺はやり過ぎって事だね。後味悪すぎ……。もうね、『殺す』より『死なれる』方が怖いんだよ。なんか湧きそうだし、ね。


 それから五日後、カリスくんが出した手紙の結果が返って来た。――というより、やって来たかな?

 <ウォンテッド>に現れた場違いな武装をした集団。その名も王家親衛隊! 所属する全ての者が<近衛兵>についてると言うんだからもうね……。ぶっちゃけ、もっと早く来いよ!

 <近衛兵>は<暗殺者>と同じく上級1次職の職業ジョブだけに互角、いや、純戦闘に関してだけは<近衛兵>の方が強いはずだ! <暗殺者>はその名の通り暗殺に特化したスキル構成なんだから。

 そんな中に一人だけ更に場違いな人物が混ざっていた。

 男はボクたちの前に来るとひざまずき――、


「姫さま、お迎えに参りました」


 と、カリスくんに向かって告げたのだ。






転生五三日目

ミヅキ「ボクの右腕は世界を制す(キリッ」

ライラ「いきなりどうしたのよ」

ミヅキ「いや、さ。ほら! 今回の戦闘、全部ボクが勝利を左右した一因でしょ? 殊勲賞は明らかにボクだよね」

ライラ「殊勲賞って、あなたね……。まったくよく言うわ。不意打ちや横やりしてただけじゃない。しかも人の魔法まで強奪して」

ミヅキ「ふっ、アイツらの目的はどちらかというとボクだからね。つまりボク対刺客って構図だったんだよ。ライラさんとカリスくんが助太刀という形だから、横やりでは決してないといいたいね!」

カリス「いや、ホントミヅキはよくやってくれたよ。正直私も盾を使ってた<死神>は正直やばかったしね」

ミヅキ「あの盾使い、男だったのに急所攻撃効かなかったね!」

カリス「それは<暗殺者>になるまで前提条件職業ジョブに痛みを軽減するスキルがあるからね。鍛えれば鍛える程無視出来るようになるらしいのさ」


※付録※

<暗殺者>(上級1次職)

条件:戦鬼・軽戦士・斥候兵

技能スキル:【忍び足】【暗視】

限定:『猛毒生成』

習得:依頼を100達成する。

備考:次のターゲットはコイツだ。お前なら簡単な任務だとは思うが……。


『猛毒生成』

効果:【道具生成】の技能の猛毒だけ限定的に生成出来るようになる。

備考:こいつぁ、致死量だぜ。


【忍び足】

効果:足音を消せる。

備考:抜き足、差し足……。尾行必須技能。


【暗視】

効果:暗闇の中でも普通に見えるようになる。

備考:そんなに暗くして……目が悪くなるでしょ!


<死神>(上級2次職)

条件:暗殺者

技能スキル:【暗黒魔法】【死を尊ぶ物】

限定:『隠遁』

習得:国主を暗殺する。

備考:神といっても神様じゃない。俺は神に人命を捧げているんだ。


『隠遁』

効果:光を遮り、暗闇に潜む。

備考:ゴクリッ。あの子の胸……大きいな……。


【暗黒魔法】

効果:補助魔法を使える。

備考:我が魔力は全てを縛る。

 ・スタン

 ・スリープ

 ・バインド

 ・サイレント


【死を尊ぶ物】

効果:暗黒魔法の適正を得る。

備考:神よ。また今宵も血を捧げましたぞ。


ミヅキ「消音魔法……サイレントって名称だったんだね」

ライラ「私が食らったのはスタンね」

カリス「ふっ、そのとおりさ。スリープは聞く話によると範囲魔法らしいから。けど、魔力が低い相手にしか効かないみたいだから、スタンを選んだんだと思うよ」


転生五八日目

ミヅキ「な、なんだってー!」

ライラ「あー、はいはい。やっぱり気付いてなかったのね」

ミヅキ「え? ライラさんは気付いていたの?」

ライラ「もちろん。というかよくあれだけ接触しておいて気付かなかったわね」

ミヅキ「いや……だって『一発やらしてくれ』なんていうし、男のように振る舞ってるし」

ライラ「王族が王女を王子のように育てることはあるわ。男女で継承に違いはないけど、戦場では男の方が頼もしいって風潮があるし」

カリス「うんうん、私もね、つい10年前くらいまでは自分は男だって思ってたのさ」

ミヅキ「10年前って……いくつだったの?」

カリス「15歳さ。そのとき初恋だったあの子が、私の求婚を断って隣国の王子に嫁いでいったとき始めて知ったのだよ。『あなたは女だから私とは結婚は不可能よ』って」

ライラ「身体の違いとかあったのに……よくそれまで気付かなかったわね」

カリス「いずれ生えてくる物だと思っていた(キリッ」

ミヅキ・ライラ「「いやいやいやいや!」」

カリス「まあ、いまとなってははかない思い出さ。彼女を思い続けて5年った頃、そのとき転職と共に祝福【追憶者】を得たわけさ」

ミヅキ「(胸が薄くて、女と聞いてもいまだ男に思えてしまう!)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ