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美人局3話 転職神殿③



「さて、ミヅキさま。それでどの様な事をお聞きしたいので? 私に分かることでしたら何でもお答えしましょう」


 うーむ、どうにもなぁ……。年長者から尊敬の念を向けられるのは中々にしてやりづらい。それが生まれついての物だから困りものだ。ボクは王族か、ってーの。


「まず、サキュバスというのは――ボクしか居ないってことでいいのかな?」


「ええ、そういうことです。1歳でその姿なのも、不老なので固定されている状態です」


 生きるために必要ってことか。けど、1歳から子供を産めるってことでもある。うーん、なんだかなぁ……。


「あと、神祖というのは?」


「神祖は神のひなみたいな存在ですよ。いずれ神に至ります」


 ん? 神は神であって最初から存在する概念的なモノじゃないのか?

 それをくと、クレトマスは「創造神であり、全ての父である<ワーカー>さまのみが概念的存在……いえ、世界そのものであります」と答えてくれた。

 ふむ、創造神と来たか。どうやら<ワーカー>さんはしんなる超越存在であるらしい。法則すら生み出してるのだから言われれば納得できることだった。他の存在ものは肉を持ちながら神に至ったらしい。

 なんにしても――。


 そっか……。ボク、やがては神になれるのか……。


 不老であるので余り変わらないような感じもするけど、恐らくそこに不死がつくのだろう。正直実感できないな。ちょっと想像してみよう。


 ……。

 …………そうか。そうだよね!

 ボクは美の神として君臨する。そしてボクを取り合い、天界および地上は戦禍を被ることになる。いやぁ、参ったなぁ。ボクのために争わないで! な~んちゃって。えへへっ。


 おっと、いけない。思わずトリップしちゃってた。

 見るとクレトマスもライラさんも不審な表情でボクを見ている。ごほんっ。


「……そっかぁ。というか、教団としては始祖とはいえ一般人が神を目指しちゃっても、いいの?」


「え? ああ、生後間もないミヅキさまは知らなくて当然でしたね。我がセントエルトリア教団は過去に天界へ昇った神祖をも敬っております」


 一神教じゃないのか。<ワーカー>さんの懐が広いな。まあ、実際はもっと利権的な問題で、単に始祖が神となった一族を利用するためかもしれない。


「そもそも我が教団の誇る、当代の<聖人>が神祖であらせられます。の人物の一族――禿(とく)(とう)(ぞく)は始祖が死滅していたのですが、あのお方は厳しい修行の結果で通常種からロードとなり、なんと神祖に至るという偉業を達せられました。このまま修練を積めば至れるでしょう、近いうちに神へと」


 禿頭族とな? 生まれながらにハゲているのだろうか。現在の運び屋業界ではバカにされてやっていけないに違いない。

 にしても、始祖の死滅と通常種からの成り上がりは何か関係があるらしい。ボス不在による突然変異みたいなものだろうか。


「つまり、教団出身者からも神になった人がいるからそのまままつったって事かな?」


「あり大抵に言うとそうなります。一柱加えれば一神教でなくなるので、この際全部加えてしまえ! と、八代前の<法王>のときに祀られました。古く忘れ去れた神については、当時登極したばかりで天界と地上を行き来できる神に教えていただきました」


 ……。

 直接聞いたと言うことは創造神にして最高神である転職の神<ワーカー>さんが許した……ってことですね、はい。懐が広いのか、はたまたずぼらなのか……。

 とりあえず気になる所は終わったかな。あとは転職をして――。


「もういいかしら?」


 ライラさんがその時口を挟んできた。


「あ、はい。大体気になる所は訊きを終えました」


「そう、<美人局ハニートラッパー>の習得条件も覚えているわよね?」


「え? ええ、まあ、はい」


「それじゃ行きましょう。私も条件を知っているから手伝うわ。というか一人にするなんてより一層出来なくなったし」


 ん? 転職は?

 それに条件を知ってるって、ライラさんも<美人局ハニートラッパー>の経験者?


「<遊び人>になるんじゃ?」


「ミヅキなら簡単にこなせそうだし、早い所こなして転職しましょう!」


 そう言われ、来たときと同じ様にボクは引きずれてこの場を立ち去った。ア~レ~。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 場所を移して宿泊施設。そこでボクたちは互いの思惑を確認しあった。あまりにも()()があったしね。

 で、ライラさんが言うには<美人局ハニートラッパー>の職業ジョブスキルはすごく有用で、人、魔物、精霊などあらゆる存在に効果があるそうな。それとボクの種族特性たる種族能力アビリティとも相性は抜群だとか。

 まあ、サキュバスといったら誘惑という位にはそれも当然なのだけど、ボクとしては『悪のフェロモン』の効果がきつすぎた。


 あれから帰る途中にソービ村でやらかした事を『神殿』の別の部署に申し開きをしてきたのだけど、どうやらボクに一端はあったものの、あの場で行動に移した者はすべからく心にやましい物を持っていたとのこと。当然有罪となり、<虜囚>へと転職させられていた訳で……。

 まあ、それほど刑期は長くなく、わずか数ヶ月で習得してしまうという話だけど。


 習得して解放されるとはなんぞや、って聞いたときは思ったね。でも<虜囚>もれっきとした職業ジョブで、刑期が終わることで条件を達成するという。

 そのため、あの日の晩それを狙っての犯行を起こした者もいるとか。

 <虜囚>を経なければ就けない職業ジョブもあるのだから、それもしかないと言えばしかたない。実に上手な立ち回りとボクは思う。

 だけど、そんなの関係ねぇ! ボクの初めてをなんだと思ってるんだ! 慰謝料払え、コンチクショウ!

 ――と言ったら「ああ、忘れてたよ」と、担当してくれた方が銀貨を8枚寄越よこしてきた。どうやら犯人の財布の中身らしい。半分を被害者、もう半分は国と教団で分けるのが決まりだとか。

 残り半分といいつつ、端数もゲットしちゃってるんだろう。汚いな国家権力、さすが汚い。


 そう言えば俗にいう犯罪奴隷はないのだろうか。

 で、訊いてみた結果、<奴隷>は歴とした職業ジョブであり、二つを兼任できるわけないと嘲笑あざわらわれた。ぐぬぬ、この恨みはらさでおくべきか。

 だけどボクは笑ってそれを聞き流した。

 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥という。ならば恥を既にいた以上は訊かなきゃ損損ってやつな訳で。要は、その前に相手の感情を悪化させたら聞くのも聞けなくなるってこと! ボクは賢いのでそのくらいわきまえているのさ、ふっふっふ。

 ボクは意識的に【甘言】を使い、いい気分にさせてそれを聞き出した。


 <奴隷>にしても買われた金額分を給料として働いて返すことでいずれ解放されるとの話だ、そこに職場の自由選択がないだけで。

 <奴隷>とは――。いうなれば、途中仕事を変えることが出来ない、ブラック企業の社員の様な物であるらしく、衣食住まで保証されており、それほど悪い待遇ではないそうだ。しかも<奴隷>になるのは自ら自分を売り払わないといけない。だからまさに自己責任な職業ジョブ

 また、返済期間についても考慮してくれるらしく、早く済ませたい場合は()(こく)な場所へ。過酷はヤだ! 笑って働ける職場以外NOだ! というなら長く緩い職場へ。

 そんなことも可能だそうだ。

 そうして返済を済ませると晴れて転職可能となり習得状態となる。また、仕事も別の物に就けるという。


 しかし、過酷な仕事からは逃げたくなるのが人情である。

 長く買い殺されるのも同様だ。精神的におかしくなるからね。

 そんな時、脱走を試みる人間がいてもおかしくない。と言うか当然居る。そうしたとき、とある職業ジョブの特殊条件を満たすことになる。

 それは――<賊徒>だ。


 ん~、少し蛇足になりすぎたかな。<賊徒>に関しては今は関係ないので置いてく。まあ、いずれ関わる機会もあるだろう。


 さて、転職したいボクとこのまま行くべきというライラさんで意見が分かれたのだけど、結局ボクはライラさんの思惑に乗ることにした。


 ――だって……合法的にお金を巻き上げられるんだもの。


 <美人局ハニートラッパー>はボクッタリ商品を売りつけても、犯罪とならない素晴らしい職業ジョブだったのだ!

 美貌と『悪のフェロモン』で強欲な者を寄せ付けて、【誘惑】と【甘言】で金をだまし取る。そんな素敵コンボ技が使えるのが、現在就いている職業ジョブな訳で。


 そうと決めたボクは、街中をライラさんと歩き回り、それなりに見栄えがいいだけのつぼや絵画など、斬新な造りの物などを買いあさっていった。






転生七日目

ミヅキ「ぐふっ、ぐふふふっ」

ライラ「ミヅキ、あなた……もう少し自分の美貌自覚したらどうなの? さすがにその顔はいけないわ。せっかくの顔が台無しよ」

ミヅキ「おっと、いけない。そうだね、美の神としてみっともないことダメだよね。常に美しさを心がけないといけないんだった」

ライラ「(美の神?)何を言っているの分からないけど、明日からの準備はいい?」

ミヅキ「もっちろ~ん! いくぞ強欲王、家財の貯蔵は十分か?」

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