第2話
ピピピッ ピピピッ
朝5時半、いつも通りの時間に私は起床した。
「んんおぉ〜」
ぐいっと伸びをして首をポキポキと鳴らす。
その動作に釣られて、私の胸がふにょんと揺れた。うむ、我ながら見事な胸である。
私こと里中凛は、今日から私立双葉高等学校に入学する女の子である。
前世の自分の夢?のため魔性の女なるものを目指した私は、色々と努力をした。
美容面では毎日の筋トレ、早朝のランニング、豊胸体操。前世の自分とは違ってなかなかの運動能力を持っている。毎日の努力の成果もあって、身長166センチとくびれのある素晴らしいスタイルを手に入れた。胸もそこそこ大きい。
次に勉強面。勉強のできないアホな子もそれなりに可愛いが、頭は良い方がいい。また、中学範囲までの勉強は前世で終えていたため、自分で参考書を買ってお勉強を頑張った。その成果もあって高校卒業レベルまでの学力は身についた。
そして料理。インターネット情報によれば、男は胃袋を掴めば勝てるとのことなので努力をいたしました。家庭料理の範囲ならばそれなりの料理を作れるようになった。もちろんお菓子の方も手は抜かない。私が甘いものが好きなため頑張ったという理由もあるのだけど。
もそもそとパジャマを脱いで新しい制服へと着替える。
白いシャツの上に濃紺のブレザーに黒地に白のチェックのスカート、一年生の証である赤いネクタイを締めて鏡を見る。
そこには見慣れた自分の姿。腰まである長い髪にやや強気に見えるつり目、すらりとした手足の女の子である。とても男受けの良さそうな女の子だ。美少女だ。
男を魅力するために磨きに磨いたのだから当然なのだけど。
前世の私も今の私も恋愛はまだしたことがない。特に今の私は体は女の子、心は女でも男でもない中立の立場にいる。一人称は前世の『僕』から『私』へと自然と変わり、恋愛対象にいたってはまだ不明だ。
目標である魔性の女はへの道は準備を整えただけだ。これからがスタートである。ランニングをするためにランニングシューズやジャージを買って満足するみたいな勿体無いことはできない。男に貢がせるだけ貢がせてポイしてやろう。むふふ。
まあ、中学時代にも告白はそこそこされたのだが、中学生はアルバイトもできないため経済面での余裕はない。お付き合いやデートをする場合は、きっと割り勘である。
そんなのは魔性の女予備軍の私は癪に触る。よって皆を振っているのだ。バッタバッタと。
まあ本当は人見知りが発動して、よく知らない人とはうまく話せないという理由が大きいのだけど。
着替え終わって時計をちらりと見る。
時計は5時45分を指している。
あれっ?なんか時間に余裕があるな。
おっと、いけないいけない。早朝のランニングを忘れている。1日の油断は美容と健康の大敵だ。
いそいそと、しかし制服がシワにならないように器用に制服を脱いで畳んでからいつものジャージに着替えて私はランニングへ向かった。