第四翼 彼女の翼
こうして佑助は指令棟をあとにした。すると一人の女性が寄ってきた。
佑助の彼女、岩島舞。佑助と同い年、パーソナルレベル2+で普段は指令棟のオペレーターをしている。今日はオフなのだろう。
「ねぇ、ユウ!!お誕生日おめでとう♪はい、これプレゼント!!」
舞は恥ずかしそうに小包を渡してきた。佑助は少し照れ臭そうに受け取る。
小包を開けると、真っ赤なマフラーが入っていた。
「宇宙って年中寒いでしょ?だからマフラー編んでみたの!どう?悪くない出来でしょ!?」
早速マフラーを首にかけた。
「暖かい…サンキュー」舞は笑顔のまま続ける。
「よかったぁ…それ編んでたら遅くなっちゃって。じゃあ部屋帰ってパーティ始めよ!」
佑助の言葉に満足して廊下を歩き出す舞にそっと話し掛けた。
「いや、パーティはお預けになった…」
舞はすっと振り返った。困惑している。
「えっ?どういうこと?」
「予定が変更になった。三時間後にここを発つ。だからパーティは帰ってきてからだな。」
佑助は視線を舞から逸らして言った。
「変更になったって…今日はオフになったんじゃないの!?折角のユウの誕生日だって言うのに…何で急に?」
舞は食い下がらない。
「キセキの安否確認のためだ。…ゼアールに強襲をかける…」
舞の眼がみるみる見開いていく。
「!!!???ゼアールって…ユウ!!もう危険な事はしないって約束したじゃん!!可笑しいよ…今頃になって急に…」
その場にへたり込んでしまった。
「今度は本当に死んじゃうかも知れないのに…ねぇ?ユウ…考え直そうよ?」
佑助は何も言うことが出来なかった。そっと舞の横を通り過ぎて、背を向けて
「I love you.」
そう一言いって立ち去った。
舞は泣いていた。彼が自分の手元から離れてしまうようで。あの時もそうだった。佑助が暗殺部隊に所属になるときもあんな風にかっこつけていなくなった。今回もそうだ。自分を置いて何処かへ行ってしまう。彼女に出来ることはただ無事に帰ってくるように祈る事だけだった。
4月21日AM0:45
いつの間にか日をまたいでいた。佑助は宇宙の中にいる。宇宙船に乗っているのは全員で三人。一人は大和。口を開けて爆睡している。もう一人は黒いフードを被ったコックピットに寄り掛かって寝ている巨漢。
ふと舞に貰ったマフラーが眼に入った。綺麗な編み目はまるで売り物のようだ。
端を見るとユウスケと小さく黄色い糸で縫われている。ふっと小さく笑って佑助は眠りにおちた。