第二翼 劇薬の翼
大和は劇薬などの危険物を専門に研究している。いつもコートの中に危険物を隠し持っている胡散臭い奴だ。
あまり仲も良くなく話す気もならない。しかし腕は確かで今までの暗殺において重要な役割を十二分に果たしてきた。
実戦訓練でも佑助の記録を遥かに超えている。バカには出来ない。
姿は何週間も手入れをしていなそうな汚れた顔。無精髭を生やし、白衣は継ぎ接ぎだらけでボロボロ。暗殺部隊なんて高い配給の方なんだから買い替えれば良いのに…なんて会う度に思ってしまう。
片手には試験管。中にはいかにも危険そうな紫の液体が入っている。
大和は暫く佑助の顔を見つめると急に喋りだした。
「やぁ、ユウ。例の頼まれていた薬出来たよ。いままで作った薬のなかでも指折りの猛毒になったぁ。」
枯れた、しわくちゃな声。
「それはどうも。案外早かったな。」
佑助は礼を言い怪しそうな薬を受け取った。すると大和は佑助に近づき少し小声で
「そのクスリ…ちょいと法…破ってるからあんまり人前で使わないようにね。」
と忠告してきた。
「殺すか殺されるかって状況でルールなんて守ってられるかよ。」
素っ気なく返してまたレールに乗って部屋に帰ろうとした。
すると通信で召集がかかった。このコール…指令棟からのようだ。コールが聞こえたのか、また大和が近づき話しかけてきた。
「指令棟から?間違ってもボスなんかに…」
佑助は溜め息をついて
「分かってるよー。」
と心ない返事をして指令棟に向かった。
佑助は巨大な扉の前に来た。扉の端にはパーソナルレベル4の兵士が立っている。こいつらはSuperNovaでも苦戦を免れないくせ者だ。相手にはしたくない。端に居る無愛想な兵士に話し掛けた。
「第5番隊隊長、広瀬佑助だ。ボスに呼ばれてやって来た。」
門番はまた顔色一つ変えずに質問する。
「では部隊長手帳を見せて貰えますか。」
はぁと小さい溜め息をついて佑助は胸ポケットから小さな手帳をだした。
手帳には顔写真、名前などが載っており、個人の証明にも使われている。
しかも部隊長の手帳は特別仕様で裏にSuperNovaのマークと部隊長証が彫られているのだ。
「これは失礼しました。では3ドア開きます。」
すると目の前の巨大な扉は音を立ててゆっくりと開いた。