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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第一章 隠されし力 前編
25/43

第二十四翼 希望の翼

『暗殺部隊の諸君…』

そこに映っていたのは他でもないGC総司令隊長だった。

『この映像が君達の眼に入るようになった時私はGCにはいないだろう…』

映像の中の総隊長は淡々とメッセージを伝えてくる。一同は戸惑いを隠せない。

『さて、この様な状況になってしまった以上君達にこれからのEARTH軍を背負って貰わなくてはならない…不安であろうがきっと君達ならゼアールの魔の手から人類を救うことが出来うる…』

突然、守が怒声を上げた。

「じゃあ、ボスは最初からこうなることを分かっててゼアールと戦ったのか!?」

「落ち着け、守。父上も考えがあっての行動だ…。」

軌跡も守を(なだ)めているが握った拳が震えている…やはり軌跡もこの判断には納得いかないようだ。

「意味わかんねぇよ…。」

『…アイツが復活したということは、この宇宙に狂気が広がっていると言うことだ。いろんな星々でもすでに狂気感染が始まっている頃かもしれない…。』

「アイツ…とはユウが言ってた黒い龍の事か…?」

『君達は兵隊の中でもエリート中のエリート…狂気の影響を強くは受けない。しかし普通の人間に取って狂気はあまりに簡単に感染するもの。』

佑助はあまりに総隊長が簡単に秘密を晒してくるので呆気にとられていた。しかもこのボスに何か違和感を感じる…。

『ゴードンがあのような状態である限りゼアールも簡単には動けないだろう。暫くの間、君達には終末の獣の討伐を目的として行動してもらいたい…。しかし今の君達ではそれをなしえるのは不可能に等しい。…今こそ奴等の協力が必要となってくる…。』

総隊長の面持ちが今までになく真剣だ。

『GCは表向きには8番隊までしか存在しないことになっているが…9番隊と言うものが存在するのだ…。』

「有名な話だな…。幻の9番隊伝説。」

佑助もその伝説に関しては知っていた。しかしそれも都市伝説の範囲の話であり明確な確証は持っていなかった。

『世界政府も知らない極秘のプロジェクトだ。今のEARTH軍は昔ACPと呼ばれていたが…その頃にあったある部署の隊員たちの集まり。…そいつらの力を借りる。詳しくは地球に行ってくれ。…では健闘を祈る。』

ビデオは唐突に消えてしまった。すると大和がコックピットで何かいじくりだした。

「ビデオデータに地球のナビデータが付属されている…。…向かいますか?」

軌跡も守も黙って何も言わない。やはりこのビデオの内容を鵜呑みにするのは危険と判断したのだろう。

「…明らかにあの男は父上でなかった。迷彩スーツか何かによる変装。かなり高度に作られていたが…。」

あの程度の変装技術であればEARTHだって持ち合わせていた。

「…同感だ。どうする、軌跡?」

守はいつにもまして冷静だ。

「罠…という線も否めないな。」

「しかし…この状況…もしこれが9番隊員によって作られたものなら…思ってもみない助っ人だと思いますが。」

大和は向かうべきだと言うわけか…確かにこの状況において味方はかなり助かる。

暫く沈黙が続き…

「…行こう…地球に。」

軌跡は小さく同意を求めた。佑助以外は頷く。

「佑助は…やはり。」

「はい。それは隊長が決めることであり、隊長が決めたことであれば自分は反論する気はありません…。」

大和はゆっくり舵をきった…青き惑星、地球に向かって…。



佑助たちは9番隊が潜伏していると思われる地球にやって来ていた。日本と呼ばれていた島の上に居るようだが…。全く人の気配がない。イージス星への避難は全て終了しており人類はこの地から消えてしまった。ゼアールの奇襲によって大地は枯れ果て、植物の育つ環境も破壊されてしまったのだ。EARTHに地球再生の計画があったがこの様な状況下で地球に人が住めるようになるのはいつになるか分かったものでない。

全壊した高層ビルや折れ曲がった電波塔、途切れているレールは今もそのまま残っている。あまりにゼアールが残した爪痕は大きい。この人を受け付けない環境の中でよく9番隊の奴等は暮らせるものだ。

「どこから攻撃されるか分からん…油断は禁物だぞ。」

軌跡は常に回りに気を配っている。しかしこんなに広い日本というナビデータも適当なものだ。これでは隊員を見つけるだけでも一苦労…本当に居るのか?

辺りを暫く散策していると何処からかピーッと言う高い警告音が聞こえてきた。

「地雷か!避けろっ!!」

佑助はヒラリと近くにあったビルに飛び乗った。この程度の地雷…その瞬間爆発と共に辺りに爆風が舞い上がった。

「(ちっ!予想以上の爆発…これでは辺りが見えない…。)」

佑助は不意に後ろに人の気配を感じた。瞬時に振り向き受け身をとる。しかしまた後ろに気配があった。

「(これは…っ!)」

佑助は背中に強い打撃をくらい地上50mから地面に叩きつけられた。

「ぐぁがっ!!」

思わず吐血した…鼻血も出ている。

「(どこだっ!?)」

佑助が地面から立ち上がると頭上には100を越える手榴弾が舞っていた。

「(この数…撃ち落とせないか…。)」

佑助は鼻血を腕で拭いその場に立ち尽くした。そのまま手榴弾は地面で爆発し、辺りの塵や埃と共に爆風が舞う…。

「(そこかっ!!)」

佑助は爆風から瞬時に出て地面を蹴り半壊のビル郡の中に跳び移った。気配のする方に小型ナイフを投げるするとナイフを弾く金属音…。やはりそこに…。

「!!!!????」

佑助が隙を見せた一瞬に気配が目の前まで移動していた。佑助はギリギリで斬撃を腰の脇差しで受け止めた…凄い剣幕だ。

そこに居たのは目だし帽を被った、全身重装備のゲリラ兵だった。一本のサバイバルナイフで佑助と渡り合っている。

「…。」

佑助は靴の先に仕組まれた毒針を刺そうと右足を上げたがゲリラ兵は一瞬で姿を消してしまった。冷や汗が止まらない…気配が…替わった…?

「甘いな…。」

いつの間にか佑助の首元にナイフの刃があった。後ろから体を拘束されている…背中に装備の凹凸があたる…。

「この程度なのか?…GCの暗殺部隊とは…。」声からして相手は女…しかし…束縛力はそんなにない。首元のナイフさえ何とか出来れば…。

「それは…どうかな!?」

佑助は前に向かって拘束をほどいた。次の瞬間姿を消す。

「なにっ!?」

女は手元のナイフを見た。そこにあったナイフは柄だけの物となっていた。刃が…溶けている…。

佑助はさっきの女との戦闘があったビルの屋上から200m程離れたビル内からスナイパーライフルを構えていた。

「(必ず…仕留める…。)」

佑助は息を飲んで銃の引き金を引いた。


「(体が動かない!?)」

女の身体は完全に動かなくなっていた。佑助が予め仕込んでいたワイヤーが身体中に絡まっているのだ。女が足掻けば足掻くほど絡まっていく。

「(ふっ…中々やるじゃねーか…。)」

すると女の耳の無線に通信が入った。

『こちら二名確保。そちらは?』

「あぁ…ちょいと苦戦中だけどもう終わるわ。」

『では援軍はいらんな?…先に本部に向かってるぞ。』

「了解。」

「(このままでは…仕方無い…。)」


やったか!?

佑助はスコープで女を見たがそこに人の姿はなかった。

「(なぜだっ!?確かにワイヤーは…)」

「まぁ踏ん張った方だ。楽にしてやろう。」

「(!?…ガードが間に…)」

佑助が後ろの気配に気づいた頃には目の前が霞んでいた――。

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