第二十二翼 消失の翼
「GC、到着ー。」
やがて大和がGCに着いたことを知らせた。あれから佑助は外をずっと眺めていたが、それらしきものは見当たらない。
「おい、大和ぉ。またレーダーの使い方間違ってないか?」
「いや、ミスはないと思うんだけどな…。」
大和はしきりに頭を掻いている。悩んでいる時の大和の癖だ。
「どれどれ…?」
守がレーダーの確認を取っている。近くに地球が見える事からGCにはそう遠くないことが分かる。…がさっきから防衛ラインが見えない。
「おい、佑助…?」
軌跡も気付いたようだ。防衛ライン…いや大気圏で戦闘が行われている様子がないのだ。防衛ラインに縮小命令でも下ったのか…。しかしその様な報告は受けていない。まぁ守の言う通り通信インフラに異常があるなら当たり前なのだが…。明らかに様子がおかしい。いくら防衛ラインが小さくなったとは言え、完全に見えないことなどないだろう…。まるで地球近くに人間が居ないような静けさだ。
「あれぇ?確かにGCのセンター近くに来ているはずだ…。レーダーまでおかしくなったかな?」
やはりここにはかつてGCが存在していた。長年GCから地球を眺めているがそこから見える景色が似ているのだ。
「GCはどこに…って防衛ラインに兵が一人も居ねぇじゃん!どーなってんの?」
守が急に焦りだした。…やはり…。
「……た…ち……じ………ほう…。」
突然壊れているはずの機体に取り付けられた通信機にノイズらしき音が飛び込んできた。
「守っ!感度上げろ!」
軌跡が声を荒げた。
「わかってまっさぁ!」
守がコックピットで機械をいじくると徐々にノイズから声帯を抽出できた。
「こちら5番隊副隊長…。現在のGCの状況報告を…っ!」
急に黙り出してから何かが走り去っていく音が聞こえた。先ほどより小さな声が聞こえる。
「今、GCはゼアールの兵により完全制圧されました…。」
また少しノイズが…。
「…割程の兵が殺され、残りの兵は…。!やっやめろぉぉおお!ぐぁあ!」
「!?こちら8番隊!聞こえるかっ?何があった?」
軌跡の必死の呼び掛けも虚しく相手には聞こえていないようだ。
「メーデー、メーデー!こちら…!ぎゃああぁああああっ!!!!!!」
激しい電撃音と共に隊員の高い悲鳴…。そこから通信は途絶えてしまった。通信の内容は最悪の事態だ。
「声帯分析…確認。第5番隊副隊長、三上総司…。あぁ…。」
大和が膝から崩れ落ちた。
「GCが制圧されただと…?くそっ!!」
守が強く機体の壁を殴った。壁のプロテクターが少しへこむ。
「しかしGCはここに存在していない…。」
大和は冷静を装っているが瞳からは大粒の涙が流れている。軌跡も黙って何も喋らない。この状況…ボスは行方不明、GCはゼアールによって制圧下にある…完全に八方塞ぎだ…。
「これから…どうすれば…。」
佑助はぼそっと言った。もう個人の判断でどうなるって状況ではない。
「…。」
守は壁に拳を預けたまま動かない。
「…だが完全にGCが破壊された訳ではないようだな。魔術による空間移動の類いと考えるのがベターか。」
軌跡はそっと話始めた。しかし誰かに聞いてもらうためではなく自分を落ち着かせるために話しているような感じ。黙っていたらおかしくなりそうだ。
「やはり、俺達とボスが抜けたのは良くなかったか…。」
大和も話始めた。大和は取り乱したりしないため安心できるが…守がいつおかしくなるか分からない…。
「イライラしていても事態に変わりはないぞ。この先、500kmに何かあるが…あれはなんだ?少しでも希望を持とう。」
軌跡はあくまで冷静を装っている。脚にはまだ震えが残っている…。
「近くに強い磁場の反応が…。」
しかし予想以上に守は落ち着いている。…と言うか取り乱す気にもなれないと言った感じか…。
「…近くに強い磁場を感知。向かいます…。」
大和も運転を開始した。今は藁にでも縋りたいところ…。
「しかしGC壊滅とは…予想外の事態だ…。」
軌跡も落ち着いてきている。やはり総隊長の息子と言う肩書きが軌跡を支えているようだ。軌跡はこれからどうする気なのだろうか?
当の佑助はと言うと平静としていた。なぜか全てが予想通りに、いや全ての道筋を知っていたような…佑助にとって違和感の何物でもなかった。
「強い磁場を発生させている物質、回収します…。」
大和は外付けアームで問題の物質を回収した。それは旧型の記憶媒体だった。
「これは…?」
俺にはこれが何か分からない…。
「…特別な再生機でないと再生できない、記憶媒体だな…。」
そう言うと守は徐に記憶媒体を機体付属の再生機にいれてしまった。
「お、おい…特別な再生機じゃなきゃ…。」
大和が食って掛かる。
「いんや。多分魔術か何かの影響を受けて完全に保護機能が失われている…。強い磁場を発生させていたのもそのせいだろう。」
守はいたって冷静だ。大和と言い合いにもならない。
「これで魔術が使われたのも確定か…。」
佑助は黙ってモニターを見つめた。
「しかし、魔術の干渉を受け付けない記憶媒体とはな…。こんな事が出来るのは…。」
軌跡が息を飲んだ…そんな音も響く程辺りは静寂に包まれている。
「…!再生されるぞ…。」
モニターに砂嵐が出現し、暫くするとモニターに一人の男が映る…。それは佑助達もよく知る人物だった。




