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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
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第十五翼 記憶の翼

佑助は昔からそんなに目立つ子ではなかった。普通の家庭に生まれ、ごく一般的な生活をおくるただの少年。裕福な家庭とは言えなかったが別に貧乏と言う程ひもじい思いもしたことがない。やはりそれなりの家庭環境の中で育った。

父親は宇宙警察に勤務し、正義感が強くどんな悪事も許さなかった。佑助に所謂親からの束縛はなかったが、どんな小さないたずらもすることが出来なかった。佑助もそれに反抗することもなかった。生まれたときから正義に溢れた環境に居たため、悪事を働く気にすらならない。

母親は専業主婦であり、佑助を常に見守る優しい母だった。佑助が一人息子と言うこともあったが、母は佑助に無償の愛を捧げた。佑助もそれに答えるように誰にもでも分け隔てなく優しい子に育った。

佑助が産まれた頃は第三次世界大戦の真っ盛りだった。ある国がゼアール星と手を組んで地球を牛耳ろうとしていると言う噂が流れたのだ。結果論であるがそれはゼアールの綿密な情報操作によるデマ情報だった。日本もアメリカなどの列強と手を組んで、ゼアールと交遊関係があると噂されたイギリスに宣戦布告した。当時、戦争に反対する政党もあったがゼアール星の正体が全く解明していなかったため人々はそんな未知の存在に恐怖し排除しようとした。そのため日本も戦場となった。そのため日本人の大半はアメリカに疎開し暮らしていた。アメリカは全く戦争に影響されなかったため人々は戦前と変わらない生活をおくっていた。

佑助の父親はイギリスが本当にゼアールと協定を結んでいるのか、真偽を確かめていた。当時、宇宙警察はACPと呼ばれるただの宇宙研究機関であったため、GCの様な立派な施設はなく、日本に小さな天体観察施設が在るのみだった。ゼアールの存在は既に確認されていたが人々はその存在を否定し続けた。まるで恐怖から逃げるように…。ACPは世界政府と呼ばれる連合国側の最高機関にゼアールの力について危惧すべき力だと主張し続けた。しかし世界政府は断固として耳を貸さなかったのだ。

佑助の父親は世界政府に戦争を止めゼアールへの対策を練るべきだと、世界が一丸とならなければならないと言う考えを胸に日本に残り、ゼアールについて研究し続けた。

佑助はそんな父親を憧れ尊敬していた。父親には数年に一回しか会えなかったがアメリカで母と二人で生活をおくりながら、ACPに入る努力をしていった。

佑助が中学に入学する頃には戦争は終わっていた。人々は母国に帰り家族との再開を果たした。日本は幸いにもあまり戦場とならずにすんだ。しかし長い戦争の中心地となったヨーロッパは壊滅し、人が住める環境ではなくなった。

世界もやっと平和になり人々が世界の復興を願い始めた頃、悪夢が訪れた。


40XX年7月7日

その日は唐突にやって来た。七夕であったため人々は世界の復興を願っていた。佑助も世界がいつまでも平和であるようにと短冊に願う。しかしそれは叶わなかった。突然、ゼアール星が地球に侵略し始めたのだ。ゼアール兵は人々を見殺しにしていった。あまりに突然であったため、ACPも世界政府も対策が練れずに人口は衰退の一途をたどったのだった。人々は絶望に打ちひしがれ死んでいった。今ある既存の兵器が全く効かないのだ。しかも第三次世界大戦終結直後だったため、戦力差が目に見えていた。世界は混乱の渦に巻き込まれていた…ゼアールは初めからこれが狙いだったのだ。人間同士に殺し合いをけしかけ弱ったところを侵略する…。佑助の父親の見解は正しかった。


お陰で世界の人口は四割まで減少した。もう後がない…。そう考えたACPは極秘裏でイージス星と呼ばれる人工星を作り始めたのだった。

ゼアールは地球人を全て駆逐すると思われていた。しかしある日を期にゼアール兵は撤退していった。が地球に残った爪痕は大きく、地球はもはや人の住める星ではなくなった。世界政府の信用はなくなり、ACPに飲み込まれる形で合併した。

佑助はここで身体の半分を無くすことなる。…それだけでなかった。両親が死んだのだ。一緒に逃げていた友達も死んだ。佑助は一人機械人間になる事を決意した…ゼアールに復讐するために―――。

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