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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
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第十四翼 鮮血の翼

依然として軌跡と大和の戦闘は続いていた。軌跡が手を抜いてるのかと思われたが画面の向こうの軌跡はそうは見えなかった。互いに手加減している様子はない。少しでも気を抜いたらすぐにでも殺されてしまうだろう。佑助は横目で鬼教官を見たが何を考えているのか読み取ることはできない。分かることと言えば右肩に大きな傷痕があることぐらいか。守の瞳は真剣そのものだ。この後にある佑助との模擬演習に緊張してるのか、気が立っている。佑助に緊張の色は全くない。あるとすれば鬼教官への畏怖の念。

少し佑助がモニターから目を反らした時だった。モニタールームに低いブザーの音が響き渡った。戦闘が終了したのだ。鬼教官がマイクに向かって叫ぶ。

「模擬戦闘、終了。…勝者、藤咲!」

やはりか…。モニターを見ると大和が仰向けに倒れて、軌跡が横に立って大和の顎に向かって長剣を突き出していた。その剣先に一滴の血が付着している。よく見ると大和の顎に小さな傷が出来ていて傷から少し血が垂れている…。

大和は呆然と倒れていた。軌跡はそっと血を振り払って、腰の鞘に剣を納めた。そして大和にてを差し出す。大和はふっと笑って軌跡の手をとった。軌跡も笑顔だ。

二人がモニタールームにやって来た。鬼教官は立ち上がり二人を見つめている。

「…及第点だな。…次、羽鳥対、広瀬!」

佑助と守は席から立ち上がり戦闘室に向かった。後ろから軌跡と大和の応援が聞こえた。

もし今までの戦闘データから勝敗予想するならこの戦いの勝率は五分五分だ。守は佑助より二年先輩であるが、佑助も最年少でSuperNovaにスカウトされた実力者だ。守は実戦向けの戦闘兵であるため少し佑助が有利かもしれない。しかし守は昔、7番隊にあるエリート兵のみを集めた強襲チームリーダーをしていたと言う経歴の持ち主だ。油断は出来ない。佑助と守はスタンバイポジションについた。

「手加減はなしだぞ。全力でこい!」

守が叫んだ。もちろん、自分もその気である。それに少し軌跡と模擬演習をしてみたいという気もする。ここは本気でやらなければ守にも失礼だろう…。鬼越の声が聞こえる。

「想定フィールドは砂漠だ。」

声と同時に周りの景色が砂漠になった。足元には砂があり、頭の上には疑似太陽が存在している。本物の砂漠宛らだ。額からは汗が溢れてくる。早く決着をつけなければ脱水症状か熱射病になる…。

「では、はじめっ!!」

合図と共に姿を消した。正確には迷彩スーツを着ているだけで身を隠した訳ではない。これで簡単には姿を見られる事はない…。しかし同時に守の姿も見えなくなった。…どこから仕掛けてくるのか分からない。…全方向に気を使わなければならない。

守は強襲兵であったためか、バイソンと呼ばれる巨大な拳銃を基本的に武器として使っている。そのためどんな距離からでも攻撃される危険性がある。発見されない事がなにより大切だ。しかし守の姿は見当たらない…。

とその時だった。佑助の足元には弾丸が飛んできたのだ。佑助は慌てて近くの岩に身を隠した。流石、エリート兵。姿は見えなくても気配で相手の場所を確認する事が出来るのだろう。佑助も相手の殺気を感じる事が出来るが、相手は暗殺兵。殺気を消すことなんて造作もない。少なくとも近くに気配はない…。ここは相手の出方をうかがうしかない。

灼熱の砂漠に静寂が訪れる。天井に浮かぶ太陽が二人の体力は徐々に削っていく。暫くすると徐々に砂漠に竜巻が出現しだしだため周りの視界が悪くなった。しめた!これはチャンスだ。佑助は素早く音爆玉と呼ばれる特殊な高周波を発する玉を周りに埋めた。すると人間には聞こえない高周波が発せらる。佑助は何か複雑な機械を取り出し操作しだした。佑助は途端に走り出し、暫く移動してからいきなりたちどまると砂丘に手榴弾を投げ込んだ。間もなく爆発して砂が辺りに飛び散る。火薬の匂い…。

またどこからか弾丸が飛んできたが今度は小型ナイフで弾を真っ二つにしてしまった。佑助は背中に背負ったスナイパーライフルを構えるとすぐに標準を合わせ引き金を引いた。その途端にブザーが鳴り響く。鬼越の声が聞こえる。

「模擬戦闘、終了。勝者、広瀬!」

周りの砂漠が消えていく…。いつの間にか全身汗まみれだ。300m先に倒れた守の姿が見える。佑助は直ぐに駆け寄った。

「大丈夫か?」

守の右頬から血が流れている。予定通り、弾丸はかすめただけのようだ。守は笑っている。

「やっぱ…作戦か…」

佑助は頷いた。

「あんなに気配消さないなんていくら何でもおかしいなって思ったんだけどな…。」

手を差し出した。守は手をとって立ち上がり頬の血を拭った。

「へへっ…戦場だったらお陀仏だな。…負けんなよ!」

守は佑助の背中を叩いてモニタールームへ向かった。それと同じく軌跡がこちらに向かってくる。凛々しい顔立ちだ。佑助も額の汗を拭った。

「広瀬対、藤咲。勝った方が俺とタイマンだ。」

天井から暗い声が聞こえる。軌跡は佑助の肩を叩いた。

「肩の力抜きな。…いざって時、身体動かねぇぞ。」

しかし目は真剣そのものだ。殺気も十分。

守のためにも負ける気はない。佑助はスタンバイポジションについた。

「想定フィールドは…高層ビル郡だ。」

とたんに高層ビルが出現した。佑助の足元にも出現して高度をあげた。ざっと地上50m程の高さだ。

「では…はじめっ!!」

佑助の戦いが始まった。



…うっ…ここはどこだ…?

佑助が目を覚ますと目の前には天井があった。どうやら自分の部屋の様だ。横を見ると大和の姿があった。にっこりと笑っている。

「や…まと?なぜ俺は…」

「喋るな。まだ安静にした方がいい。」

俺はなぜ自分のベットなんかで寝ている?…思い出せない。大和はゆっくりと語りだした。

「一時的に記憶が飛んでいるだけだ。暫くすりゃあ戻る。」

記憶が飛んでいる…?なぜだ?

「お前は軌跡と模擬演習をやったんだ。…良いところまでいったんだがな…。まぁ相手が軌跡じゃあ部が悪い。鬼越教官も満足げだったし充分じゃないか?」

俺と軌跡が?全く記憶にない。そういえば最近記憶がよく飛ぶことがあるがそのせいか…。

「安心しろ。軌跡も首へは峰打ちしかしていない。頬の傷もすぐ消えるさ。」

佑助はそっと左頬を触った。ガーゼがしてある。痛みは…ない。

「明日、午前10時から部隊長会議だ。…さてユウも目を覚ましたし俺はおいとまするかな。」

大和は立ち上がり、佑助の部屋から出た。

一時的に記憶が…ねぇ。ふと枕の横に目をやると映像再生端末が置いてある。なんだ…これは?

「なんだ!?貴様らっ!!」

突然、外から大和の声が聞こえた。何か慌てているようだ。侵入者か!?

「大和!!どうした!?」

大和からの返事はない。佑助はベットから立ち上がり手元に置いてある拳銃を構えた。まだすこし頭に鈍痛が残っている。額から冷や汗が垂れ…徐々に扉に近づいていく。その時だった。

「動くな。」

突然背後に人の気配がしたが、すぐに佑助の意識は飛んでしまった。

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