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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
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第十翼 休息の翼

あのゼアールの空間魔術攻撃があって以来、GC内の混乱と言ったら異常も良いとこだった。あれがあってから魔術の存在が世間に知れ渡る事になった。それ専用の専門機関までできたが、防衛ラインへの攻撃に魔術が加わったことによりこちらの形勢は圧倒的に不利になった。これにより他の惑星から兵が召集されEARTH軍の戦力は全て防衛ラインに集まることとなる。そのため暗殺部隊には特別指令として急な休息が下ったのだ。そのためと言うのも全ての指揮監が総隊長に移ったためだ。あのゴードンとか言う奴の声を聞いてから総隊長に少しずつ焦りの色が見え出していた。総隊長はGC内で一番の心配症であったためあまり重要視されていないようだが、明らかに様子がおかしい。まるで何かに追われているような…。ゼアールの要件に関しては7番隊の生え抜き兵達が奇襲をかけることとなった。罠だと考えるのが当たり前だからだ。そんなあからさまな罠など仕掛けて何をしようと…?佑助には全く読めない。


守は確か今日退院だったような…。しかしこの混乱の中ではお見舞いになど行けるわけがない。しかも佑助が今居るのは、GC内で最も建設にかかった…遊園地にきている…。いや、遊園地と言う言い方は(いささ)か幼稚である。だがこの施設の正式名称は…

「いや~ユウとスペースバニーランド(SpaceBunnyLand)来るの久しぶりだね!楽しみ!!」

…恥ずかしすぎる…。何とも耳の長いうさぎさんがお迎えしてくれた。この遊園地のマスコットキャラクターらしい。そのうさぎを見つけるなり舞ははしゃいで飛び付いた。

「ねーねー、ユウ!!ちょっとモッチーと私、写真、取って!」

モッチーというのがこのうさぎの名前らしい。舞はテンションが上がりすぎて上手く言葉も話せていない。俺はテキトーに手元の小型射影機で写真を撮った。しかし舞は不満そうだ。この射影機は機密文章を映すため敵にバレないように小型化しているがその分画質は荒かった。

「ちょっとユウ!!さっき渡したデジカメで撮ってよ!!なんでそんなダサダサカメラで撮るのよ!!」

…全く面倒な話だ。佑助はこれもまた舞が選んで佑助に与えた独特のセンスのショルダーバッグからデジカメを取り出した。デジカメの扱いなんてチョロいもんだ。普段敵地の中で機械をいじくっている佑助に取って生まれて初めて使うデジカメも瞬時に使い方を理解しプロカメラマンさながらの写真を撮った。映った彼女は満面の笑みだ。

「さっすがユウ!!使い方なんも教えてないのにこんな写真撮れるなんて!!やる時はやる男ねぇ♪さっ!!行きましょ!!」

全く、怒ったり誉めたり忙しい奴だ。しかしなんで久し振りのデートが遊園地なんだ…。俺は訓練所かなんかで新型の銃試用デートとかが良かったのに。そもそもこんな混乱の中、のんきに遊園地なんかではしゃいで…バカみたいだ。総隊長も何考えてんだか…。


――二時間前――

「はぁ?こんな時に休息ぅ!?」

「おい、総隊長の前であるぞ。場をわきまえろ。」

あのゼアール魔術攻撃から三日たった今日、SuperNovaのメンバーは総隊長室に呼ばれていた。守を注意したのは総隊長秘書兼SPのθ(シータ)。なぜ本名を名乗らないか不明。その横の質素なデスクに座っているのが総隊長。少し痩せたか?

「へぃへぃーわっかりましたよぅ…」

守の挑発的な態度。毎回のことだ。その守はというと会議室が別世界に飛ばされている間に目を覚ましたらしい。今はフツーに歩いている。それは軌跡も同じこと。あんな大怪我を負っていたのに三日で完治とは…。さすが大和。その大和を見ると少し得意げだ。

「…しかし、休息の命令とは?」

軌跡が聞いた。やはり気になる。

「いやさ、三日前にあんなことあって以来さ君達にはほぼ寝ずに働いてもらってたし…だからその休息。このまま働き続けたら君達、倒れちゃうよ?」

あまりの総隊長の平凡な解答にこっちが困ってしまう。

「それは有り難いのですが…父上。今、この混乱の中で休息と言うものはいかがなものかと…」

軌跡の言葉に守が割って入る。

「そーだぜ、じぃ…じゃない、総隊長。今俺達が居なくなるのはGCにとっても防衛ラインにとってもメリットはないぜ?」

総隊長は笑って見せた。

「その件に関しては問題ないぞ。他の補充要員が1番隊から今日配属されたし、逆に疲れからお前らに死なれては本末転倒というやつだ。」

「しかし…っ!!」

軌跡はどうしても食い下がらないらしい。それを総隊長は掌で制した。

「…大和。例の報告を。」

そうすると今まで隅っこでじっとしていた大和が前に出てきた。

「はい…三日前から新設された魔術研究機関通称プロジェクトMですが、正直なところ研究は全くと言っていい程進んでおりません。先日のゼアールの魔術解析も始めておりますがいつ終わるやら…。」

おまけにふぅ…と小さな溜め息。

「大和…。」

口を漏らしたのは守だ。

「私は素直に休息が必要と一人の研究者として提言したまでですが。」

総隊長もうなずいている。

「…っとまぁそういう訳だ。いくら今日退院と言っても守は病み上がりだし、軌跡には雑用ばかりやらせていたからちょっとは身体も動かしたいだろうし、佑助に関しては本当に不眠みたいだし、大和もこう言ってる。」

メンバー全員が唸った。佑助に異論はなかった。あくまで総隊長の命令は絶対。

「…ちぇ、久し振りに大暴れ出来ると思ったんだがなー。しゃーねー狙撃場にでも行くか…それぐらい良いよな、総隊長?」

相変わらず総隊長に対してラフな質問。

「私は休息の取り方までとやかく言うつもりはないよ。」

「だよなぁ、じゃーまた明日。」

守はそう言って部屋から出ていった。

「…私は素直に休眠を取らせてもらいますね。ではこれで。」

次に大和も。よく見るとすでにナイトキャップを被っていた。休む気満々か…。

「佑助、お前も休むと良い。あの働きっぷりからは疲れも想像できないがな。」

軌跡は俺に笑いかけてきた。なるほど…出て行けと…。佑助は前に出た。

「了解しました、総隊長。恐縮ではありますが休息を取らせてもらいます。」

くるりと振り向き扉に向かった。部屋から出るとき、

「もし、戦闘記録が残っていたら減給だからねぇ」

総隊長の声が聞こえた。考えはまるわかりか…。

「了解しました。」

そのまま、総隊長室をあとにした。



…しかしなぜ舞とスペースバニーランドなんかに来ることになったのかあまり憶えていない…。確か部屋に戻るとこまでは記憶があるのだ。だがそこから先が思い出せない…。俺も狙撃場に行こうとして…ダメだ。やはり思い出せない。思いだそうとすると頭がぼーっとするのだ。意識があったと確実に分かるのは舞と遊園地の入り口で手を繋いで並んでいた所から…。

全く何が起こってるんだか。しかしここまで来て舞に行くの止めるなんてきりだすのは不可能だった。だってあんな眼をされては…男と言うのはつくづく不憫な生き物だ。


「…い、おーい!!ユウスケ!!大丈夫かぁ~?舞の言葉で我に返った。ここは…?

「どうした?コーヒーカップでそんなに目ぇ回った?私、回し過ぎちゃったからなぁ…。本当に大丈夫!?リバースとかしない?」

舞は心配しているようだ…。

「んあ、大丈夫。ちょっと考え事をな。」

舞は怪しそうな顔をしている。疑っているのか…?

「もしかして…仕事の話とか?」

「いや、そんなんじゃないよ。」

「仕事の事とか取り敢えずは全部忘れなよ!!ってか今日は忘れて遊びまくるー!!って入り口んところで叫んでたじゃん?」

全くそんな覚えはない…。

「そうだっけか…?」

どうやら記憶が飛んでいる頃にやったらしい。俺が叫んだ?

「ユウってこんなに叫ぶんだぁってビックリしたよ?」

「はぁ…。」

そんな事ありえない。常日頃から自分の気配は消しているはずなのだから。暗殺ばかり仕事にしていたための職業病だが別に困ってはいなかった。もともと人前に出る事が苦手だったから。しかしその俺が叫んだ?あんな人混みの中で?やはり記憶にない。

「覚えてないの?」

舞はまた心配そうな目で見てきた。

「んあ、まぁな…。心配すんな、 ただの過労からだよ。…それより飯でも食わねえか?俺、腹減ってて。」

これ以上舞に心配をかけるわけにはいかない。俺は一刻も早くこの場から離れたかった。

「そう…?ならいいや!じゃあユウ、あそこのベンチに座ってて。私がお昼ご飯買ってくるよ。」

「いや、悪いよ俺が買ってくる。」

「ユウはなんか休んだ方がいいよ。ほら、早並ばないと!!」

舞にお使いに行かせるのはちょっと後ろめたかったが、ここは任せる事にした。

「じゃあこれだけ。」

佑助は舞に昼飯を買うには充分過ぎる程のお金を渡し、指定されたベンチについた。

周りを見渡すと宇宙で戦争中でもここには多くの人がいた。ここからイージス星は光速パイプで繋がっているためいつでも来ることができる。最も、GC本部内には入ることは出来ないが。

全くのんきなものだ。自分も人の事は言えないのだが。親子連れからカップルはたまた修学旅行生らしき集団の姿もあった。元々あまりイージス星にはゼアールの情報は伝えていないためあまり危機感を感じていないのかもしれない。ただ地球が危険と知らされ、ただ言われるがままにイージス星に避難したような。イージス星に行ったことはないが人工星とは言えほぼ地球と同じよな衛星らしい。そこには人類が望む平和な日々はあるのか。なんにせよこの平和も我々が守っていかなくてはならないのだ。なんて士気感に燃えている間に舞が昼飯を買ってきた。


その後も俺達は普通のカップルの様にデートをこなして行った。

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