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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
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第九翼 魔術の翼

「…にちは、GCの守護者のみなさん…。驚かせてすみません。ちょいと電波をお借りしてます。すぐにお返しいたしますので暫くの辛抱を…」

不気味な暗い声が空間を支配する。

「だっ誰だっ!?貴様は!!」

一人静まり返っている会議室内で怒声を響かせているのは、すぐに冷静さを無くすと有名な6番隊竹田隊長だ。電波をジャックしているだけなはずだから、相手から返事など…

「…あぁ、申し遅れました。私、ゼアール連邦軍代表ゴードンと申します。以後お見知りおきを…」

!!…返事があった…。と言うことはただの電波妨害によるジャックではないようだ…。新手の転移技術か?ゴードンど名乗った声の主は続けた。

「…もう皆さまお気づきでしょうが、これは電波妨害ではありません。強いて言うなら…そう!!旧時代的に言う『魔術』と呼べる類いのものでしょうか?」

その言葉を聞いて会議室内にどよめきが起こった。

「んなバカな話があるかっ!!」

まだ竹田隊長の混乱は続く…。

「ただのイタズラだ!!たくっ最近のイタズラは手が込んでいるから困る…。」

どうやら竹田隊長はあくまでも魔術を否定するようだ。だが周りはそうでもない。

「会議は終了だ!!」

と言って勝手に会議室から出て行こうとする。会議室内もかなり混乱している。

「ちょっと…状況確認も出来ていない中、個人行動は避けたほうが…」

と言う2番隊副隊長の警告も無視して竹田隊長が会議室の扉を開けた時、

「うわぁぁああ!!なっなんだこれはっ!?」

隊長の悲鳴にも近い声が聞こえた。会議室がまた静まり返る。

「どうしたんだ、竹田隊長…全く…」

腰を抜かしてその場に座っている竹田隊長を起こそうとした1番隊隊長小野氏も扉の向こうを見たとたん悲鳴をあげた。

「なんだと言うんだ二人して!!」

それまで黙りを決めていた総隊長がついに口を開いた。すると小野隊長が顔面蒼白で答えた。

「扉の向こうがっ…おかしなことに…」

総隊長が自ら扉を開けて向こうの世界を見た。すると意外な反応が返ってきた。

「…ついに、魔術を完成させたのか…」

するとモニターから返事が返ってくる。

「…さすがEARTH軍の総隊長…。話をすぐ理解してもらえ助かる。」

それぞれの隊長が各々扉の向こうの世界を凝視していく。扉の向こうにはそこにあるはずのGCの廊下は存在していなかった。紫と血のような朱、それに暗黒そのものの様な黒の絵の具が混ざった世界。まどろみの様…丸でこの会議室が別世界に迷い込んだような。その世界を支配しているのは殺意と恐怖、それに狂気…。宇宙の絶望を集めた世界…。

そんな変わり果てた世界に悲鳴を上げる者もいるが意外にみんなすんなり理解した。

佑助自身にもそんなに驚きはなかった。なぜなら前々から我がEARTH軍も魔術に関しては研究を重ねていたからだ。だがそれは最新の技術でもまだ解明に至っていなかった。魔術の存在が確認された程度のもの。ましては軍事起用など有り得なかった。しかしゼアールの技術がここまで進んでいたとは…。

「やはり…私の研究は間違っていなかった…。」

…確かに大和は早くから魔術の力について独自の研究を行っていた。確か…治療技術に利用しようとかなんとか言っていた。しかしさっきの竹田隊長の様な人もいて思うように研究が進まなかったのだ。得体の知れないもの力に頼ることに抵抗があるのは分からなくもないが…。

「やっと皆さんに理解してもらえたようですね。まぁこのような時空を歪める魔術に関しては制御が余り上手くいってないため長いこと発動できないのが玉にキズですがねぇ。」

自分達の研究を敵に晒すなどゴードンと言う奴はかなりの自信家のようだ。それともこちらへの挑発か…。…何にしろこの世界から抜け出さない限りどうしようもない。竹田隊長は隣の席で怯えている。この人、肝心な時に全く役にたたないな…。

「安心してください。いきなり皆さんを皆殺し…なんて野暮なことはしませんから。」

くっ…部下と連絡がとれなくなってから暫く経つ。もしこの間にゼアールが攻めてきたら…ここで黙って敵の言うことを聞いている状態が居た堪れない。

「…要件はなんだ…。」

総隊長がモニターに語りかけた。

「要件だなんて。ただちょっとした約束をね…。」

7番隊副隊長と1番隊隊長小野氏が扉の前で武器を構えている。敵が強襲をかけてきたらとのことだろう。しかし魔術を使われたらこちらに勝利はない。最も付け焼き刃であることはこの会議内の隊長全てが分かりきっているだろうが。

「ふふっ…どうやら先程、特別暗殺部隊の方々にずいぶんお世話になったようで…。私もそのお礼がしたくなりましてね?今から言う場所に必ず来てください。あなたたちの時間で一週間後…。D-352星でお会いしましょう。ちょっとしたショーを見せますよ…。ではまた…。」

その瞬間、モニターの電源が切れた。同時に会議室内を支配していたまどろみが消えてしまった。武器を構えていた2人が扉を開けたがそこはいつものGC内。どうやら空間魔術は解けたようだった。

その後、総隊長直々に各部隊に命令がくだった。総隊長が命令するなんてそうない。全隊長が一斉に会議室から出ていった。佑助に下された命令は防衛ラインの完全防衛。佑助は副隊長と話をつけ自分自身も参加することになった。

佑助の心配はムダとなった。防衛ラインに被害はなく、むしろ彼方の軍が弱っているように感じていたらしい。佑助はそれに違和感を感じられずにはいられなかった。この世界…何かがおかしい。しかしそんなことより今は防衛ラインの防衛…。これが第一だ。佑助はその考えをすぐに捨ててしまった。


―世界の歯車はもう動き始めていたのだ―

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