遺伝された独占欲
本日二度目の貞操危機を伴うベッツウィーンです。
『うぃ、ウィル』
これまた先ほどと同じ体制の私たち。
ウィルの唇が、毛並みをなぞる。
『あ、あの…』
「リン…。お前が他人と話しているのを見ると腹が煮えくり返りそうだ」
あの、相手は女性であなたの親族の方ですが?
しかも少しお茶会をしただけではありませんか。
「お前の変身術を今すぐ解いて…」
そこでウィルは押し黙る。
その先の言葉は聞かないでおこう。
『ウィル…、あの…』
そろそろ開放してくれませんかね?という意思をこめる。
開放どころか抱きしめられ、現在今朝と同じ状況。
「もう少し、このまま…」
かすれた声で言われ、心臓が爆発寸前。
誰か助けてくださいっ!
もうどれくらいこうしているのだろうか?
しかし、会話もなく流れる時が嫌ではない。
だが、ドキドキしすぎて眠気すらやってこない。
ダラダラしていると、いきなりウィルが起き上がり、部屋の机に向った。
『…ウィル?』
ウィルが手にしたものは“首輪”。
『え゛っ!?』
あれ?何故か体が動かないぞ?
「動かないように魔法をかけた。逃げると思ってな」
魔法って…。
そういえばアラーナも魔力云々言ってたような気がする…。
『い、いや、だってっ!』
ウィルはとうとうリンの前まで来てしまい、手に持つ首輪をリンの首に付けた。
「これで俺の物だ」
「リンちゃぁぁぁああん!!!」
首輪を付けたことに満足したドSのウィルから開放されたので、アラーナに中庭に連れて行ってもらおうとしたら、アラーナ越しに衝撃が声と共にやってきた。
こんなことするのはサラさんしかいない。
「?あれ?この首輪…。…そういうことか。ウィル君はちゃんとウィリアムの血を引き継いでいるのね」
え、ウィリアムさんも首輪を!?
サラはリンの瞬く目から意図を読み取ったようで、苦笑する。
「私も異世界から来たのよ。私最初は小型犬で、お転婆な上に城が広くてしょっちゅう迷子だったから、居場所がわかる魔法をかけた首輪を付けさせられたわ」
サラさん異世界から来たんですか。仲間ですね。
その前に、私一応大人しいと思うのですが…。
「リン様は広い心と無防備持っておいでです。きっとウィル様が心配されたのでしょう」
え、アラーナ今さらっと傷つくような言葉を言いませんでした!?
私無防備じゃないヨ。
アラーナが言うには、この首輪は付けている者の危険をいち早く伝えることができるらしい。
「私もなんど首輪に助けられたことか…。穴に落ち、溝に落ち、池に落ち、迷子になり、連れ去られそうになったり…。まあ、その度にウィリアムが颯爽と駆けつけて来てくれたんだけど。」
サラさんの周りにハートが飛んでいる幻覚が見えます。
「あ、そうだ。本来の姿に戻ると新しいのもらえるから楽しみにしててね」
………楽しみになんてできません。
自分で凄いこと想像しちゃってチキン肌です。
お母さん、ウィルがそっちのSだったらどうしよう。
遺伝バンザーイ!
ドSバンザーイ!