大切なものを賭けた決闘
「私、ウィルフレッド様をお慕いしております」
ユリアはそう自分に言い放った。
「…」
リンと和解した筈なのにあまり接触しなくなってもうすぐ一週間が経とうとしていた。
しばらく沈黙が続く。
「たとえ…」
沈黙を破ったのはユリアだった。
「たとえ、リンさんがいようとも、私はこの気持ちに嘘をつくことはできません。私はあなた様をお慕いしておりますっ!」
ユリアの声は震えていた。
「………すまない」
どんなに想ってもらっても、リンを裏切ってまで答えるつもりは微塵もない。
「俺はリン以外見れない。それに、お前のその気持ちは偽りだろう?」
彼女が自分を好意の目で見ていることは薄々感づいてはいたが、その目は自分を通して他の誰かを見ているように見えた。
「っ!?」
彼女は驚いた様子を見せた。
「………はぁ、完敗ですね。事情をお話しする前に私と一緒に来ていただけませんか?」
どこに?と問いただす時間はなく、足元で一瞬見えた魔法陣からどこかに連れて行かれることはわかったが、相手に悪意はなさそうだと判断し、その魔方陣に身をゆだねた。
「っわ!ウィル!?」
ワイアットにちょうど会った瞬間、ウィルが目の前に立っていた。
「…学園か」
リンをちゃっかり抱き込みながら辺りを見回した。
どうやら自分の意思で来たようではなかった。そこでウィルの後ろにいるユリアさんに気がつく。
「ユリア…」
ワイアットはそれほど驚いた様子もなく苦笑した。そしてリンの片腕を掴み、ウィルに向き合って真剣な面持ちで言った。
「ウィルフレッド国王陛下ですよね?リンさんが王妃であなたが運命人であることを承知であなたにリンさんを賭けて魔法での決闘を申し込みます」
「け、決闘!?」
「…いいだろう」
ウィルの返答と同時に一瞬にして風景が変わった。
「あそこでは目立つし、学園が崩壊しちゃうからね」
そこは神殿のような所であり、何かに囲まれて守られているようだった。
「強豪の決闘場。神子が結界を常に張っている場所。強いものにしか結界がくぐれない。僕も陛下もくぐれたってことはそれなりに強いってことだね」
その言葉はウィルに向けられた言葉ではなかった。
「クリスティーナっ!?」
ワイアットの視線の先、一つの柱の影に普段の格好ではなく神聖な格好をした神子としてのクリスティーナがそこに立っていた。
「王達が結界をくぐった気配がしたから。結界、強めに来た」
そう言ったクリスティーナの足元に魔方陣が現れ、空間を囲んでいた何かが一層張り詰めた気配がした。
「クリスティーナさん、リンさんとユリアにも結界を頼みます」
ワイアットの言葉にクリスティーナは頷き、リンとユリアは薄い膜のようなものに囲まれた。
「…これで存分に戦える」
ウィルの目は本気だった。
まさかの四角関係の一日。