心を埋め尽くす闇
「っ!リンさん!?」
あぁ…、やばい…。
あれから、ワイアットと度々話をするようになり、今日もアイリーンを交えてお茶の途中であった。
「あっ…」
やばいと思ったときはもう既に手遅れだった。
最近治まっていた副作用がいきなり出てきたのだ。
まぶたは意思とは関係なく重くなり、閉じた。体も力が入らなくなり、意識が遠のく。
「っ!リンさん!?」
ワイアットとアイリーンの驚いた声が聞こえるが、それに構っていられる程の意識はもう既に無かった。
体に力が入らなくなったことにより、体がイスから滑り落ちる。
だが、痛みはやってこなかった。
もう意識を保っていられなくなり、リンは眠りについた。
「………っ」
目が覚めると、そこはウィルとリンの部屋だった。だが、ウィルがいない。
今まで、副作用が現れると、目覚めるときには大抵傍にいたウィル。
だが今日はウィルがいない。その事に言いようの無い不安に襲われる。
リンは部屋を飛び出した。
「アラーナっ!!」
廊下でアラーナを見つける。
「リン様!お目覚めになられたのですね?」
「うん。あの、ウィルは?」
そう言うと、アラーナはあからさまに動揺した様子を見せた。
「あ、えっと、ウィルフレッド様は…」
「応接室」
声が聞こえたほうに目を向けると、そこにはウルフが険しい顔をして立っていた。
「行くのはお勧めしないよ。それでも行く?」
リンは返事もせずに駆けだした。
「ウィルっ!」
少々乱暴に扉を開ける。
「リン…」
そこにはウィルがいた。
だが、その隣には清純派の白髪の綺麗な女性が一人。
「あ、お…客…様?」
「…あぁ」
女性は必要以上にウィルの腕に引っ付いているような気がする。
「あ…の、…」
「初めまして。ユリア・フォレスターと申します、王妃」
裏のなさそうな笑顔を見せるユリア。
「商談で参りました。しばらくここに滞在させてもらいます。よろしくお願いします」
丁寧な言葉遣い。だが、その体は未だにウィルに密着させたままだった。
「そう…ですか…、では…私はこれで…」
ウィルが何か言いたそうにしていたが、無理やり扉を閉めた。
「っ…!」
涙があふれる。
ウィルはユリアさんを拒否さた様子を見せなかった。
そのまま部屋に戻ってベットに入る。
頭まですっぽりと布団を隠し、嗚咽を殺しながら泣く。
頭の中はもう何も考えられなかった。
心の中に渦巻く黒い闇。