波乱の予感
「僕と付き合ってくれませんか?」
「……………え?」
それは、リンが武道の実習授業から戻ってきたときのことだった。
「リン・シノミヤさんだよね?」
ウィルに劣らないイケメンが話しかけてきました。
「え……はい?」
「少しお話いいですか?」
ぱっと手を取られて、有無を言わさず連れて行かれた。
「僕は一般クラスのワイアット・フォレスター。君はリン・シノミヤさんだよね?」
連れてこられたのは中庭。
只今向き合って話中。
「…えっと…はい」
「僕と付き合ってくれませんか?」
「……………え?」
今何と?
「君が異世界クラスにいるってことは、運命人がいることは分かってる。でも、僕は君に一目惚れをしてしまったらしい。どうしても気持ちを伝えたくて…。よかったら僕と恋人になってくれないかな?」
どうしてそうなったっ!?
この人、今運命人がいることは分かってるって言ったよね!?
浮気しろって言うのですか!?
「この世界では、運命人がいても他に恋人ができることだってあるんだよ。ほら、君の世界でも最初の恋人が運命の人って決まったわけじゃないだろう?それどころか、すれ違って運命の人と結婚しないって事もあるんだって?この世界では基本運命人と結婚することになってるけど、違う人と添い遂げたり、結婚するまで他の人と付き合って経験を積むなんて普通のことなんだ」
………この世界の価値観が全く持ってわかりません。
「それで、よかったら僕と付き合ってくれないかなって思って」
「で、でも、私あなたのこと何も知らないし…」
ワイアットはその言葉を聞いて、ニッと笑った。
「じゃあ、友達から始めよう」
何となく謀られた気がした。
「そんなことが…。やはりこの世界の価値観はよくわかりませんね」
アイリーンは、リンの話を聞いて苦笑した。
「ウィルフレッド王には?」
「こんなこと言ったらどうなるか…」
なんとなく、後が大変になる予感…。
「リン…」
後ろからウィルの声が聞こえてびくっとなったのが自分でもわかった。
「………帰るぞ」
「あ、うん…」
話聞かれてないよね?と心配したが、普通の顔をしていたので聞いてはいないらしい。
ウィルに抱きしめられて、一瞬で部屋に帰った。
「…………で?」
「…え?」
抱きしめられたまま、ウィルの眉間に皺が寄っていく様を見た。
「…そのワイアットとかいう男はどうした」
いつもより声のトーンが低い。
頭の中で警報が鳴っている。
「あ…え…えっと…、お、お友達に…」
「………」
あぁぁぁあ、ウィルが不機嫌になっていく…。
ウィルの顔を上目遣いに恐る恐る覗く。
「んぅ!?」
………噛み付かれた。
「なるべく近寄るな」
そう言ってウィルは執務に向っていった。
お、おおお、怒ってらっしゃる…!!!
遅くなって申し訳ないです!
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