ピンチの時の召喚獣
やばいです!マジやばいです!
ダラダラと冷や汗が流れる。
「こ、こんにちはぁ」
とりあえずニッコリ笑ってみる。
「てめぇ誰だ…」
ひぃ!お怒りでございます!
「間違えて転移してしまいまして…」
口を無理やり引き上げながら答える。
「…てことはてめぇ…異世界人か…」
男の声のトーンが低くなった。
異世界人だったら何か悪いのでしょうか…!?
男の手が伸びてくる。
「ひっ!」
思わず目を瞑った。
「………ぐあぁぁぁああ!!?」
男の図太い悲鳴に目を開ける。
「豹くん!?」
そこにはリンの召喚獣の黒豹がいた。
黒豹は強かった。
自ら魔方陣を出し、攻撃してくる男達を薙ぎ払っていく。
「わっ!」
粗方片付いたのをボーと見ていたリンに飛びついてきたと思ったら、次の瞬間には中庭に場所が変わっていた。
「え?」
突然のことに目を瞬かせていると、頬にざらりとした感触。
見ると、黒豹が怪我はないかと言う風に心配そうな雰囲気を漂わせてリンの頬を舐めていた。
「あ、ありがとう、豹くん」
そう言うと、黒豹はリンの腕に首を通して擦り寄ってきた。
「そういえば…名前決めてなかった」
いい加減豹くんと呼ぶのは可哀想だろう。
「黒とか…、ブラックとか…普通だな…」
考えるが、出てくるのは黒系の名前ばかり。
「シュヴァルツ…でどうでしょう?」
結局意味は黒だが、カッコいい感じなので気に入ってくれたようだ。シュヴァルツは、リンに擦り寄ってきた。
「シュヴァルツ、今日はありがとう」
そう言うと、もう一回ペロリとリンの頬を一舐めし、消えた。
「そろそろ戻らないと教授が心配する…と言うより怒られる…」
教室に転移しようとして男子トイレに転移してしまったのは内緒だ。
「やっと帰ってきたか。あまりに遅いから今から探すところだった」
今度は無事に教室に転移したら、何やらランバートの周りにクラスメートが集まっていた。
「学園でリンドグレーンの目撃情報があった。セキュリティー万全なこの学園にどうやって入ったかはわかっていないが、とにかく今日は解散だ。身柄受取人には既に連絡してある」
リンドグレーンの名に身が震えた。
「リンちゃん大丈夫ですか?」
リンの青い顔を見て、アイリーンが声をかける。
「大丈夫」
言いながらも、リンは早くこの学園から離れたかった。
ウィル、ウィル、早く来て…!
ウィル様が出ていない…だと…!