転移先の不幸
朝起きると、ウィルの腕に包まれていた。
「起きたか…」
ふっと笑い、リンにキスするウィル。
二人とも裸で、お互いの熱が直に伝わり、リンは顔を赤く染める。
「お…はよ」
「ああ」
ウィルはもう一度キスすると、上半身を起こし、布団から出て仕事の仕度を始めた。
ふとこちらを見る。
「辛くないか?」
下半身が少し痛いが、立てないほどではない。
「大丈夫」
「そうか、よかった。…次は立てなくなるまで愛してやる」
耳元で囁いて洗面所に消えるウィル。
顔を真っ赤にしながら布団に埋まるが、アラーナが来るかもしれないと思い、床に放り出されている服をすばやく着る。
「おはようございます」
タイミングよくノックをして入ってきたアラーナ。
アラーナは、顔が真っ赤のリンに微笑み、朝食の準備を始めた。
今日から学園も再開する。
今日の授業は文字を学ぶ。
いくら、言葉が通じると言っても、読み書きができなくては不便であるからだ。
「リンちゃん、昨晩何かいいことでもありました?」
昨晩で、アイリーンのリンの呼び方がリンさんからリンちゃんに昇格した。
顔がにやけていたのだろうか、アイリーンが微笑みながら聞いてきた。
「え?あ、うん」
昨日のことをまた思い出し、顔が赤くなると同時に、勝手ににやける。
「幸せそうでなによりです」
そう言ってにっこり笑うアイリーン。
きっとこの二人の周りには、ピンクのオーラが発せられているだろう。
右手の指輪を見て、再び微笑んだ。
魔方陣相手にヌンヌンと魔力を注ぐアイリーン。
だが、うまくいかないようで、アイリーンは脱力した。
「難しいです。リンちゃんはできました?」
「今転移の魔方陣をやってるんだ」
魔方陣は、各々のペースで練習することになっている。
あれから、リンは大分力を扱えるようになり、魔方陣を使うのならば、ほとんどの防御魔法はマスターしたことになる。
「すごいです…。私なんてまだ盾の魔方陣で…。魔方陣無しの魔法なんてずっとずっと後です…」
魔方陣を扱えるようになったら、魔法陣なしで魔法を使えるようにならなければならない。
「向き不向きがあるからね。もしかしたらアイリーンは魔方陣なしのほうが向いてるのかもしれないでしょ?」
「そう…かな…」
二人は再び魔方陣に魔力を注ぎ始める。
リンの魔方陣は転移の魔方陣なので、足からの魔力の放出が必要となる。
「転移する場所は学園の中庭」
中庭に行って、戻ってくることを繰り返し行う練習。
これが中々難しい。
魔力を魔方陣に注ぎ、リンは光に包まれた。
「あれ?」
着いた先は中庭…ではなかった。
「あ゛ぁ?」
不良の溜まり場屋上。