表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様に召喚されました  作者: くいな
王城生活
2/33

不安と強引な優しさ

連れてこられた部屋の内装はとても豪華で、本当に西洋貴族の家ではないかと思った。


「お名前をお聞かせ願いたいのですが…。生憎私では猫の言葉を理解することはできませんので、お名前がわかるまで姫様と呼ばせていただきます」


そう言ってニッコリ笑うアラーナ。


「まず、姫様がこの世界にやってきた経緯とこの世界のことを説明いたします」


混乱する私を置いてどんどん話が進んでいく。

あぁ、夢なら早く覚めてくれ。


「姫様はこのフォンテーン王国の王、ウィルフレッド・シルビス・フォンテーン様の運命の人としてウィルフレッド様に召喚されたのでございます」


アラーナが言うには、この世界は20歳になると運命人と呼ばれる運命の人を召喚し、結婚するのだそうだ。運命人は、同じ世界の人が多いのだが、稀に異界から召喚されることがあるらしい。私も異界から召喚された人の一人らしい。


それにしても…、西洋貴族みたいとは思ったが、まさか王様とは…。


「使用した魔方陣には言語の共有と運命人との魔力の共有、そして異界から召喚されてまだ体が世界に馴染んでない運命人のために馴染みやすい体に変換させる術が組み込まれているのです。姫様は異界からの召喚で体がこの世界に馴染んでいらっしゃらないので、体に負担が掛かりにくい動物に体が変換されているのです」


動物は、人間の姿より体力を使わず、尚且つ馴染むのが早い。そういうモノなのだそうだ。


それからもこの世界について教え込まれた。


例えば、この世界では瞳の色が女は金色、男は水色に変わるそうだ。髪の色赤だったり、青だったり、白だったり様々だが、これだけは共通らしい。


そして、この世界には魔術と言うものがあるらしい。持っている魔力によって多少寿命が変わるらしい。

ちなみにこの世界にいる人、召喚された人も含めて平均寿命は5000年から10000年という長寿すぎる長寿。容姿は20代から老けることはないらしく、まさに都合のいい世界である。


美形西洋貴族はウィルフレッドというらしく、この国の王なのだそうだ。若くして即位し、歴代のどの王よりも優秀と言われているらしい。


そんな凄い人に運命の人とされて召喚された私。それは必然的に、王様に嫁ぐことを表している。


どうしようお母さん、夢じゃなかったら私王様のお嫁さんだよ…。






日の沈みかけた頃、アラーナは疲れているだろうと一人にしてくれた。窓辺の椅子に飛び乗り、外を眺める。


城はとてつもなく広く、とても高い。自分が猫だと言うことを除いても、本当にでかいのはわかる。


『きれい…』


外はひたすら城下町が広がっており、灯り始めた街灯と家の明かりが何とも言えない景色を作り出している。


相変わらず猫の鳴き声しかでないが、我慢するしかない。聞けば元の姿に戻るのは最低でも三ヶ月かかるらしい。


帰ることは皆無。一度来たら一生ここで過ごすしかないと言われた。


必死で涙を堪える。


町を眺め、もう会うことの無い家族を思い浮かべた。






どれくらいそうしていたのだろうか、いつの間にか日はすっかり沈んでしまい、夜特有の肌寒さが体温を奪っていく。


「寝ないのか?」


いきなり声が後ろから聞こえてきて、びくっと体が跳ねた。


後ろに振り返って見えたのは、黒髪に碧眼で超絶美形。ウィルフレッドであった。

思い耽りすぎて、彼が部屋に入ってきたのに気づかなかったらしい。


「風邪をひくぞ」


そう言って窓を閉められる。

ウィルフレッドはそのままこちらを向き、しゃがんで私と目線を合わせる。


「泣いて…いるのか…?」


勢い良く振り返った拍子に涙がこぼれたようだ。


『あ、あれ?』


こぼれたことに気づかなかった。前足で急いで自分の涙を拭う。


『っわぁ!?』


いきなり脇の下に手を挿し込まれ、浮遊感に襲われたと思ったら、いつの間にかウィルフレッドとベットに寝転んでいた。


「お前、名は…?」


ウィルフレッドが私の目元のこぼれそうな涙を拭う。


そういえば名乗ってなかった。

私は猫の言葉しかしゃべれないから無理だと思ったが、アラーナが運命の人には通じると言っていたのを思い出す。


『四之宮凛…です』


「…ウィルフレッド。ウィルでいい」


そう言って、私の体を撫で始める。

その手のひらの温もりが気持ちよくて、だんだん眠気が襲ってくる。


「寝ていい」


寝ていいと言われると、もう意識にしがみつく理性は無くなる。私は意識を闇に落とした。






起きたときには自分の部屋の天井が見えることを祈って…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ