魔力を使うと疲れるのです
今日は何故か教室が暗かった。
「今日は魔力を注ぐ練習をやる」
そう言うランバートの手には小さなビー玉のような透明な玉。
「これに魔力を注ぐと光る。これは一般的に暗闇を照らす光として使われている。最も簡単に使える魔具だ」
先生が数個の玉をリン達の目の前に浮かばせる。
「最初は手に持ってやってみろ」
玉を手に持ってみる。
「んー、光らない…」
アイリーンも難しい顔をしている。
「私も光りません。どうやって魔力を込めればいいのか…」
「自分の魔力の泉から引き出せ。イメージするだけでいい。そのまま玉に意識を持っていくだけでいい」
リンは、自分の奥深くにある、大きな泉を少し前から感じていた。
ウィルが魔法を使うたびに減っていくことから、それが魔力の泉に違いない。
「………っ!」
目を閉じ、魔力を少しずつ吸い出すイメージをすると少し魔力が引き出せた。
そのまま手の中の玉に持っていくイメージをすると、玉に魔力が流れ込んでいくのがわかった。
「リンさん凄い!光ってます!」
目を開けると弱い光だが、玉が光っている。
「もう少し魔力を増やしてもいい。これくらい」
ランバートの手の上に浮かんでいる玉が部屋を照らす。
それを見て、少しずつ魔力の量を増やしていく。
「そうだ。そのまま」
ランバートと同じくらい強い光になる。
「あ、私も光りました!」
隣のアイリーンも、リンほどではないが玉が光った。
「いいか、魔力は使っているうちに自由自在になるだろう。経験が必要なものだ。魔力を好きなように出せるようにならないと、魔方陣も使えやしない。それどころか、魔具を使えない。魔具はお前たちにとって一番最初に使う防御となる。家にある魔具でいい。練習して、自由自在に操れるようになることが今回の課題だ」
そう言ってランバートは教室を出て行った。
「ウィル、魔具無い?」
ウィルの執務室に行くと、シルフが待ってましたと言わんばかりにこちらに寄ってきて、リンに一冊の本を渡した。
「そこにはあらかじめ魔方陣が書いてある。それに魔力を流し込む」
ウィルは書類を見たまま言った。
「そこに座って練習していろ。もうすぐ終わる」
ウィルに言われた通り、ソファーに座って本を開いてみる。
この世界の文字は大体頭の中で変換されるため、本を読むことは造作も無い。
「<緋玉の魔方陣>…」
とりあえず、魔力をな流しこんでみる。
「………」
一瞬魔方陣が光ったが、すぐに消えてしまった。
「何で…」
「魔方陣に均等に魔力を注ぐのです。一定の魔力を保ちながら魔方陣の隅々まで平らになるように流すイメージで」
シルフがコツを教えてくれる。
「……っあ」
先ほどよりも光った時間は長かったが、またすぐに消えてしまう。
「はぁ…」
練習あるのみ!と着合いをいれて再び挑戦しにかかった。
「リン、そろそろ」
「も…ちょ…」
不思議と眠気が襲ってくる。
これはいつもの副作用ではない。
「だが、初めて魔力を使うんだ。そろそろ疲れているはずだ」
「だって…、ま…だ」
最初より魔方陣が光るようになり、魔方陣から緋色の光の玉が出てきた。
だが、それも少しの間だけだった。
「………」
「…っわ!」
気がついたらベットの上だった。
どうやらウィルが転移したらしい。
「やりすぎはよくない。あまり頑張るな。俺が退屈だ」
耳元で囁かれ、深いキスをされる。
「…っん!うぃ…っはぁ…っ」
息が苦しくなってきた頃、ウィルがそっと名残惜しそうに唇を離した。
「………頼むから無茶はしないでくれ。あまり無茶をすると体を壊す…」
もう一度チュッとフレンチキスされ、まぶたの上に手を置かれる。
「寝ろ、明日副作用で一日中寝ることになったら、俺が堪える」
何でウィルが堪えるのだろう…?と思いながらも、先ほどから襲ってくる眠気には勝てなかった。
リンの声を聞いて笑顔を見ないと言いようのない喪失感に襲われる…。
なんかチューで終わるの多い気が…




