不思議な出会い
リンが入った異世界クラスは、10人のクラスであった。
「あんまり人がいないですね」
アイリーンが周りを見渡しながら言う。
教室の机に一人ずつぽつぽつと座っている。
固まって座っているのはリンとアイリーンだけだ。
「あ、教授?」
薄めの本を持って教室に入ってきた青い髪の男。
この世界の人は老いないため、生徒と教師の区別がつかない。
「俺はこのクラスの担当教授のランバート・ハーシェルだ。お前らにはまず基礎から防御魔法から学んでもらう。この世界は異世界人にとって危ないことが多いからな」
その言葉で、リンの頭にリンドグレーンのことが浮かんだ。
「ある程度この世界について運命人に聞いているだろう。今日は、もう少し詳しくこの世界について学んでもらう。まずはこの世界での身分制度について」
先生の下から球体が浮かんできて、三角に変形した。
まるで食物連鎖の図みたいだ。
「下から平民、貴族、王族となっている。この世界は、主に五大王国から成っているが、どの国にも奴隷はいない。今から5万3000年ほど前に廃止された。異世界人の身分は、相方の身分と統一される」
「そういえばリンさん、この学年、フォンテーンの王族の運命人も通っているんだそうです。この学園では身分を明かすことが極端に少ないですから、どこで王族の方と接触しているかわからないってことですよね。今までで無礼を働いていないといいのですが…」
すみません、アイリーンさん。
その人あなたの隣にいたりします。
というか無礼なんて滅相も無い!
「次に、魔法についてだ。元の世界で魔法がなかった者もいるだろうが、相方に魔力があれば魔法は使える。あとは魔獣。本来、召喚獣として扱われることもあるが、野生の魔獣はなんでも食うから気をつけろ」
え!?魔獣なんて一度もあったことがないんですけど!
「魔獣を恐れるな。異世界人は大抵召喚獣を持つ。この学園でも持ってもらうことになっている。恐れていたらいつまでたっても召喚獣が見つからない。まあ、召喚獣と言っても色々ある。ある奴は人間を召喚獣としていたからな。要するに生きているならばなんでも召喚獣になれる。召喚獣というのは名だけだ」
この学園では召喚獣は強制なのか…。
どうせなら愛着が湧くような姿がいい。
リンは気持ち悪い魔獣を想像し、顔をしかめた。
「お前たちは、反異世界団体から身を守らなくてはならない。反異世界団体は、大体が異世界人によって害をもたらされたやつらが集まっている。捕まったら生きて帰ってこれる確立は絶望的だ」
クラスには緊張の糸が張り詰め、リンは鳥肌が立った。
リンドグレーンは正直トラウマで、名前も聞きたくない。
「…空気が暗くなったな。授業初日はここまで。課題を出そう。一ヶ月以内に召喚獣を見つけること」
そう言ってランバートは教室を出て行った。
「てことで召喚獣を探してるんだよね…」
ウィルの城に戻り、執務中のウィルに相談する。
「………そのうちいい奴が見つかるだろう」
ウィルにしては投げやりである。
「…気長に待つか…」
そう言って目を閉じた。
「ん?」
暇すぎたので、只今中庭を散歩中です。
「ひ!ひっ、ょ!」
普段お目にすることはまずない獣と出会いました。
「豹!?」
しかも黒いです。
じっとこちらを見ており、だんだん近づいてきます。
だれかヘルプ!食われる!
とうとう目の前まで来て、食べられる痛みに覚悟していると、足になにかさわさわと感触が。
「うぉ!」
なんと黒豹が足に擦り寄っているではありませんか!
こうやって見るとなんか…。
「かわいい…」
するとこっちを見る黒豹。
瞳は青く、まるで…。
「ウィルみたい…」
それは中庭での不思議な出会いでした。
夜遅くなって申し訳ないです!