奪われた唇
ふわふわとした意識がゆっくりとはっきりしていき、目を開けた。
「リン…」
目を開けたそこにはウィルが心配そうに私の顔を覗き込んでいました。
「うぃ…る?」
舌がうまくまわりません。意識もしっかりしてません。体も動かしづらいです。
「ど…して…」
ここに寝ているのだろうと、一番最後の記憶を掘り起こす。
「あ…」
リンドグレーンに攫われた事と、強烈な痛みと疲れを思い出す。
体が震える。
今まであんなに痛い体験はしたことがない。
震える体をそっとウィルが包んでくれる。
「気分はどうだ?」
ウィルの後ろからルシアの声が聞こえた。
「あ…、特に…。体が…動かしにくい…です」
「それでもまだマシな方だ。これからしばらく私が経過観察と体調管理をさせてもらう。何か変化があったら私に伝えろ」
ルシアはそれだけ言うと部屋を出て行った。
「ウィル…。助けてくれて…ありがとう」
「…俺はお礼を言われる筋合いはない。俺はリンに謝らなければならない。クラークの策にまんまと嵌められて、リンに辛い思いをさせた」
ウィルは私が寝ている間に随分と変わったようだ。
前よりしゃべるようになった。
「ウィルの…せいじゃ…ない。私が…もっと…っ!?」
その先はウィルの唇のせいで言えなかった。
「それでも俺のせいだ。リンを守れなかった」
ウィルはリンを包んでいる腕を一層強くした。
「リン…」
「うぃ…っ」
それからウィルに口付けの嵐でほとんど会話という会話をしなかったが、リンの不安を取り除くには十分すぎるほどだった。
いつの間にか眠っていたらしい。
外はまだ夜更けと言う感じだった。
あれから私から全く離れなくなり、過保護と化したウィルは一緒に眠っている。
そっとベットから抜け出し、鏡の前に立つ。
「本当に…戻ったんだ…」
そこには長い黒髪で金色の瞳の少女の姿。
瞳はこの世界に来たことで、黒から金に変わった。
「リン…」
ベットからウィルの声が聞こえてベットのほうを見ると、ウィルが上半身を起こしてこちらを見ていた。
「起こしちゃった?」
ベットに近づき腰掛ける。
「きゃっ…ん」
そのまま腕を引かれてキスされる。
「俺から離れるな」
腰を引き寄せられ、抱きしめられる。
「ウィルっ…、近っ…」
今度は深い口付け。
「ん……ふっ…はぁ」
「寝ろ」
静かな声で言われ、頭を撫でられると眠気が襲ってきた。
眠気に逆らわず意識を落とす。
また唇にウィルの唇を感じた。
あ、ファーストキスさらっと奪われた。
チューしすぎじゃね?