奪われた半身
全てを奪われた気がして目の前が真っ白になった。
「ウィル、クラークがリンドグレーンと繋がっていたらしい。今私の部隊が応戦している」
突然のルシアからの報告。
ルシアは、女で王族であるが、国の第一騎士団団長でもある。
既に先代の王と王妃達は戦いに参加しているだろう。
「俺も応戦する」
そう言って部屋を出た。
「っ!?リン!」
突然、リンにつけた首輪が城の敷地の外に出るのを感じた。
そして居場所が掴めなくなった。
「ルシア、リンが攫われた可能性がある」
そう言うと、ルシアは敵と応戦しながらこちらを見た。
声は冷静だが、内心凄く焦っていた。
「そうか…。嵌められたな。さっさと片付けよう」
ルシアはより一層魔法を強く大きくした。
「どうだ…」
粗方片付けたところで、リンを探す。
「まだだ…。どこだ、リン」
必死で首輪の気配を探すが、妨害工作をされているらしく中々掴めない。
<ウィルっ!>
リンの声にハッとした瞬間、自分の下に魔方陣が現れた。
「ウィル!」
「リンだ!」
すぐさま魔方陣を止めようとしたルシアにそう叫ぶと、ルシアも魔方陣の上に乗った。
瞬間景色が変わり、足元に横たわった女の姿が目に入った。
すぐにリンだとわかった。
「リン…」
横抱きにし、抱きしめる。
「っ、あ゛」
リンが苦悶の声を上げた。
無理やり元の姿に戻されたのだろうリンの体は今、少しの衝撃で大変な痛みを伴うだろう。
それがわかっていても離すことはできなかった。
「またまた驚いたな。まさか王を召喚するとはな」
少し離れた場所に退避しているリンドグレーンの姿が目に映った。
「リンドグレーン…」
怒りが湧き上がってきて、声が低くなる。
「分が悪いな。今日はここで退散させてもらおうか」
リンドグレーンはどこかに転移したらしい。
だが、それを追うつもりはない。
今はリンが先である。
目隠しをはずすと、この世界に来たときに変わったであろう虚ろな金色の瞳が見えた。
「リン…、リン…」
「うぃ…る…痛っ!…はな…て」
抱きすくめると、リンは痛そうに身を捩る。
「ウィル、痛がっている。離せ。そしてそこをどけ」
ルシアから声がかかり、ハッと我に返って裸のリンに上着をかけて宙に浮かせた。
すると、リンは痛みを感じなくなったのか、歪めていた顔を少し穏やかにするが、息苦しそうにしていた。
「リン、すまない」
こうなったのも全て自分のせいである。
クラークの策にまんまと嵌められたのだ。
リンの頬を震えた手で撫でると、リンは意識を手放した。
青白い肌を見てもう目を覚まさないのではないかと思ってしまった。
ウィル視点でした