救出される体
「た…けてっ、うぃ…る」
その声は届かない。
「驚いた。この短い期間でよくこれほどこの世界に馴染んだな」
私の肌につめを立てるリンドグレーン。
地面に転がされているだけで、自分の体重が掛かった体は痛い。
そこにつめを立てれるとその痛さはまるで刃物を突きつけられているよう。
「あ゛ぁ゛っ!」
「まあ、そうは言っても通常の何倍も痛いはずだ。蹴ったりしたら内臓破裂の痛みなんじゃねえか?」
目隠しをされているため、いつどこに痛みがやってくるかわからない。
その上、リンドグレーンに気絶しない魔法をかけられたようだった。
意識が一瞬飛ぶが、本当に一瞬で、次の瞬間には戻される。
「っうぃ…る…っ!」
ただひたすらウィルに助けを求める。
「はっ、王に助けを求めても無駄さ。王は今頃俺の仲間と遊んでる。もしかしたら自分の運命人が消えたことにも気づいてないんじゃねえか?」
「うぃるっ…!」
わかっている。
だが体が動かず、声しか出せないリンにはウィルに助けを求めるしかなかった。
「往生際が悪いねえ」
「きゃぁぁぁぁあああ!!!」
きっと肌を強く抓られたのだろう。
だが、今のリンにはそれは肉を引きちぎられるに相当する。
「ふーん、体の方は粗方馴染んでんだ。体はなんともないけど神経がまだなんだな。普通は抓ったら皮膚が取れちゃうんだがねえ。まあ、その分痛めつけられるのが止まらないってことだな。分かるか?体は無事だが精神がズタズタになるっちゅう最悪のパターンさ」
楽しそうにいうリンドグレーン。
「あ゛っ、は…ぁ…、やっ…うぃ…るっ!ウィルっ!」
ありったけの声で叫ぶ。
「っ、何だ…!」
リンドグレーンが少し焦っているようだが、目隠しをされているためわからない。
瞬間、体が浮遊感に襲われる。
「リン…」
「っ、あ゛」
ウィルの声が耳たぶを打つ。
だが、ウィルに締め付けられ、体は悲鳴をあげる。
「またまた驚いたな。まさか王を召喚するとはな」
リンドグレーンの声が少し離れた場所から聞こえた。
「リンドグレーン…」
ウィルの地を這うような声に体が震える。
「分が悪いな。今日はここで退散させてもらおうか」
そして、リンドグレーンの気配が無くなる。
それと同時に目隠しをはずされ、ウィルの顔が見えた。
「リン…、リン…」
「うぃ…る…痛っ!…はな…て」
ウィルに抱きすくめられている体が悲鳴をあげる。
「ウィル、痛がっている。離せ。そしてそこをどけ」
ふと他者の女性の声が聞こえ、そこに目を向けると、ルシアが軍服に身を包み立っていた。
ウィルは渋々という感じでリンを離し、全裸のリンに上着をかけ、宙に浮かせた。
どこにも触れていない体は先程よりも痛みは無かったが、息苦しさは残った。
「リン、すまない」
ウィルが壊れ物に触れるような手つきでリンの頬を撫でた。
その手に助かったんだと安心した。
後で修正しますともorz