パイプ
ある日。
通学路にパイプが落ちていた。
小さなパイプだ。
だけど、長い。
道を塞ぐようにして伸びている。
これじゃ、前に進めない。
そう思った私はパイプをどかした。
誰も何も言わなかった。
まるで気づいていないように。
翌日もパイプはやっぱり落ちていた。
その翌日も。
そのまた翌日も。
パイプは落ちているのではなく置かれているのだ。
違う。
設置されているのだ。
そう気づいた私はいつの間にかパイプをどかすのを止めていた。
通学が多少厄介になった。
だけど、上を乗り越えればそれで済んだ。
今までは。
あくる日、パイプは二本に増えていた。
私はどうにかそれをよじ登った。
不思議と他の人がどうしているかは気にならなかった。
と言うより、パイプを乗り越えるのに必死でそれどころではなかったのだ。
日を置く毎にパイプの数は増えていく。
道を塞ぐようにして。
私は遅刻するようになった。
遅刻するのが嫌だから、私は学校を時々休むようになった。
パイプはそんな私をあざ笑うように数がどんどんと増えていく。
いつの間にか乗り越えられなくなる数になっていた。
だから、私は別の道を歩いた。
だけど、その道もパイプは塞ぐようになった。
パイプはどんどん増えていく。
私はいつの間にか学校へ行くのを止めていた。
どうすれば良いのか分からないから。
「あっ」
ある日。
私は自宅の玄関にもパイプがあるのを見つけた。
どうなるか、その時点で分かった。
分かってしまった。
やがて、予想通りにパイプは私の部屋を塞いだ。
当然のように部屋の中にも設置されるようになっていった。
今、私の部屋はパイプまみれだ。
上下左右に伸びている。
最近ではベッドの上にもある。
寝心地が悪い。
身動きも取れない。
寝返りさえも打てない。
「どうなるんだろう」
私は呟いた。
――これは。
私が最もうつ病に苦しんでいた頃の話だ。
お読みいただきありがとうございました。
うつ病ってどんなものかな? というのが少しでも伝われば幸いです。
彼女は紆余曲折の末に立ち直り、今は無事に働いています。




