表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

パイプ

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/03/10

 

 ある日。

 通学路にパイプが落ちていた。

 小さなパイプだ。

 だけど、長い。

 道を塞ぐようにして伸びている。

 これじゃ、前に進めない。

 そう思った私はパイプをどかした。

 誰も何も言わなかった。

 まるで気づいていないように。


 翌日もパイプはやっぱり落ちていた。

 その翌日も。

 そのまた翌日も。

 パイプは落ちているのではなく置かれているのだ。

 違う。

 設置されているのだ。

 そう気づいた私はいつの間にかパイプをどかすのを止めていた。

 通学が多少厄介になった。

 だけど、上を乗り越えればそれで済んだ。

 今までは。


 あくる日、パイプは二本に増えていた。

 私はどうにかそれをよじ登った。

 不思議と他の人がどうしているかは気にならなかった。

 と言うより、パイプを乗り越えるのに必死でそれどころではなかったのだ。


 日を置く毎にパイプの数は増えていく。

 道を塞ぐようにして。

 私は遅刻するようになった。

 遅刻するのが嫌だから、私は学校を時々休むようになった。

 パイプはそんな私をあざ笑うように数がどんどんと増えていく。

 いつの間にか乗り越えられなくなる数になっていた。


 だから、私は別の道を歩いた。

 だけど、その道もパイプは塞ぐようになった。

 パイプはどんどん増えていく。

 私はいつの間にか学校へ行くのを止めていた。

 どうすれば良いのか分からないから。


「あっ」


 ある日。

 私は自宅の玄関にもパイプがあるのを見つけた。

 どうなるか、その時点で分かった。

 分かってしまった。


 やがて、予想通りにパイプは私の部屋を塞いだ。

 当然のように部屋の中にも設置されるようになっていった。


 今、私の部屋はパイプまみれだ。

 上下左右に伸びている。

 最近ではベッドの上にもある。


 寝心地が悪い。

 身動きも取れない。

 寝返りさえも打てない。


「どうなるんだろう」


 私は呟いた。



 ――これは。

 私が最もうつ病に苦しんでいた頃の話だ。

お読みいただきありがとうございました。

うつ病ってどんなものかな? というのが少しでも伝われば幸いです。


彼女は紆余曲折の末に立ち直り、今は無事に働いています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
パイプ、厄介ですね。 姿を変え形を変え、消えた振りして邪魔してくるし、気づきにくいよう、ちょっとずつとか。 頑張りすぎると気づいた時にはめっちゃ重くなってるから、戦力的撤退一択なナマケモノ決め込んで…
xから読ませていただきました。 立ち直ったとのことでよかったです。 感心しながら読ませていただきました。 状況をこのような形で文章にできる 素晴らしいですね。 評価入れさせていただきました。 私もカ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ