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療養生活の始まり

 私達家族は王都から馬車に乗って1週間かけて領地に戻ってきた。


 10年ぶりに戻ってきた領地は記憶と変わっていなかった。


「ルイーゼ、これからの事なんだがよく遊びに行っていた別荘を覚えているかい?」


「えぇ、近くに湖があってよく魚釣りをしていました」


「お医者様と相談してその別荘で過ごしてもらう事になった。 私やシェメルも出来る限りは一緒に過ごそうと思っているがメイドを1人つけておく、それから週に1回はお医者様の診察を受ける事になっている、それ以外は好きなように過ごして構わない」


「とにかくのんびりする事が一番の薬なんだ。 人の目を気にしなくて良いから」


「わかりましたわ」


 お父様とお兄様の気遣いには本当に感謝している。


 そして私は別荘へとやって来た。


 そこには既にメイドが待っていた。


「は、はじめまして、ルイーゼお嬢様のメイドをさせていただきますミッシェルと申します」


「はじめまして、ルイーゼよ」


「彼女はうちが懇意にしている商会の娘で行儀見習いとして我が家で預かる事になったんだ。 仲良くやってくれ」


「ルイーゼお嬢様の事は聞いております、私に出来る事がありましたらなんでも言ってください」


 正直ちょっと不安も感じていたけどミッシェルの感情を隠さない感じは好感を持てる。


 部屋に入って窓を開けると爽やかな風が入ってくる。


 王都の風とは違う、嫌な感じがしない風だ。


 部屋の中はシンプルでベッドと椅子と机のみ、余計な装飾品や鏡は置いていない。


 お医者様曰く心の病というのは常に変化しやすく衝動的な感情に流されやすいらしい。


 今日が気分良くても明日にはどうしょうもなく落ち込む、そんな事があるそうだ。


 だから、常に自分に正直になる事が治療の一歩だそうだ。


(それが私にできるかしら……)


 常に人の目を気にして生きてきた私は『自分自身』がどんな人間だったかはわかっていない。


 私は自分自身を取り戻す事が出来るのだろうか……。    

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