幕間 カストロフ公爵家
ルイーゼの父親であるエルディア・カストロフ公爵は国王の側近として長年国の為に働いてきた。
妻のアルミナと結婚して1年後には長男のシェメル、長女のルイーゼが産まれた。
だがアルミナはルイーゼが産まれてすぐに流行り病にかかってしまい亡くなってしまった。
エルディアは嘆き悲しんだが大事な忘れ形見であるシェメルとルイーゼを幸せにする、と亡き妻に誓いを立て仕事に子育てに全力で取り組んだ。
勿論、再婚の話もあったがエルディアは『生涯愛するのはアルミナのみ、今は子供達が成長して幸せにさせるのが私の生きがい』と断っていた。
その生き様は『死んでも妻を愛する貴族の鏡』と支持する者達もいた。
ただ、それは少数派で多くは内心舐められていた。
エルディアは自分が舐められている事は理解していた。
しかし、気にする事は無かった。
まさか王家にまでも舐められていた、とは思ってはいなかったが……。
ルイーゼが『心の病』にかかった事を知った後、エルディアとシェメルは今後の事について話し合った。
「父上は今回の王太子妃選定が出来レースだと知っていたのですか?」
「知る訳が無いだろう、私の知らない所で事を進んでいたみたいだ。 気付いていればルイーゼをこんな下らぬ事からさっさと下がらせていた。 相当私の足を引っ張りたい輩がいるみたいだな」
「これからどうしましょうか? ……正直、王家に対する不審感を募らせています」
「それは私もだ、娘が恋愛ごっこの犠牲になったんだ。 そんな王家を誰がついていくと思うか?」
「良識のある者なら離れていくでしょうね」
「我々は静かに表舞台から消えようじゃないか、これからはルイーゼが心の安定を取り戻す為に全力を注ごう」
「私もです、大事な妹をこんな目に遭わせた王家が許せません」
2人はルイーゼの為に生きていく事を決断した。
後日、王家は『ルイーゼに王太子夫妻の補佐役をするように』と打診を出したがエルディアは『娘は長年の王妃教育により肉体的精神的疲労により療養生活に入りますので申し訳ありませんがご辞退いたします、そして勝手ですが娘に付き添いたい為に職を辞したいと思っております』と丁寧に断りの返事と辞表を出した。
ついでに医師からの診断表も出したので特に何も言われる事はなくエルディアは職を辞める事が出来た。
シェメルも王太子から『これからも支えてほしい』と言われたが『申し訳ありませんが父上について領地経営を学ばなければならないので』と後腐れ無い言葉で断った。
本音を言えば『可愛い妹を壊したお前らに誰がついていくか』と罵ってやりたいのだがそこはオブラートに包んでおいた。
こうしてカストロフ公爵家は表舞台から姿を消した。




