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私は当て馬だった

 あれから1週間が経過した。


 あの日から私は暇になってしまった。


 10年も城と自宅を往復して忙しい日々を送っていたのが一気に無くなってしまったのだ。


 もし、王太子妃に選ばれていたら結婚式の準備やら国政に関する様々な事に関する教育が始まり今まで以上に忙しくなっただろう。


「暇ねぇ……」


 考える事は何故自分が選ばれなかったか、という事。


 確かにエウレア嬢との差は僅差だったし実力に関しては私もエウレア嬢を認めている、だから結果に文句は無い。


 ただ、心の中にしっくりこない物があった。


(クラーゼ様は何を基準にエウレア嬢を選んだのかしら?)


 候補に選ばれてからは私はクラーゼ様とも交流していた。


 週に一回のお茶会だって特にミスはしていない。


 しかし、冷静に考えてみれば私とのお茶会をクラーゼ様が楽しんでいたかどうか、と言うとそうではない様に見える時があった。


 それに上の空というか心此処にあらず、みたいな表情をする時もあった。


 その時はクラーゼ様もお疲れなんだろうな、と思っていた。


 でも、もしかしてこの時に既にエウレア嬢に決めていた、となれば?


 いやいや、と私は頭を振った。


 もし、そうだとしたら私の今までの努力は無意味で全くの無駄になってしまう。


 払拭しようとしても一度浮かんだ暗い考えは心に引きずったままだ。


 いっその事、明らかにしたほうが良い。


 でも、エウレア嬢に聞いたとして彼女が素直に話してくれるかどうかはわからない。


 クラーゼ様に関しても婚約者候補でもない私と話す機会なんて無い。


 モヤモヤしたまま日々が過ぎていったが、ある日突然答えは私の前に現れた。


 答えを出してくれたのは兄でありクラーゼ様とも旧知の中であるシェメル兄様だった。


「ルイーゼ、実は城内でとある話を聞いたんだ」


「とある話、ですか?」


「あぁ、もしかしたらルイーゼにとってキツい事になるかもしれない」


 私はゴクリと固唾を呑んだ。


「実はクラーゼ殿下とエウレア嬢は昔からの恋仲だったらしい」


「恋仲……」


「しかも国王夫妻も認定している」


「えっ……、それではなんで選定なんて……」


「国内貴族を納得させる為だよ、つまりは今回の王太子妃選定は結果ありきの出来レースに過ぎなかったんだ」


 いくら相思相愛だったとしてもエウレア嬢は子爵令嬢、やはり身分の差を原因にとやかく言う輩がいる、それならば優秀さをアピールさせればいい、そこで今回の王太子妃選定を思い立った、というのが真相だそうだ。


「正直、ふざけた話だと思う、クラーゼ殿下とエウレア嬢をくっつける為に家が犠牲になった、という事だ……」


 兄の話は入っては来るけど私の心は真っ白になった。


 あぁ、私は当て馬だったんだ……。


 そんな現実が私の心に重くのしかかった。




 

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