努力が無駄になった日
世の中報われない事がある。
この日、私はそんな現実を突きつけられる事になった。
「ルイーゼ・カストロフ、並びにエウレア・ドバシニーニ、表をあげよ」
此処はミンセル城の謁見の間、国王様の言葉に私は頭を上げた。
「これまで長きに渡り王太子妃候補として研鑽をしてきた、今夜その結果を発表する」
この日は王太子であるクラーゼ・ミンセル様の妃を決める『王太子妃裁定の儀』。
ちょうど10年前、年頃の貴族令嬢が集められ王太子妃になる為の試験を受ける事になった。
そこに身分とかはなく実力が問われ多くの令嬢達が涙を飲んだ。
そして最終的に残ったのは公爵令嬢である私ルイーゼ・カストロフともう1人子爵令嬢のエウレア・ドバシニーニだ。
私とエウレアはお互いに切磋琢磨しながら頑張ってきた。
身分的には私の方が有利と言うのも耳にしているけど選ぶのはクラーゼ様だ。
(努力はしてきたのだから後悔は無いわ)
内心、ちょっとは期待していた。
「ではクラーゼ、お前の口から発表せよ」
「はい父上、私の王太子妃に相応しいのは……
エウレア・ドバシニーニです」
……一瞬、頭が真っ白になった。
(えっ、私じゃないの?)
発表された瞬間、どよめきと拍手が起こった。
クラーゼ様はエウレア嬢の元にいき跪き手を取った。
「君の努力している姿を見て私は心を動かされた、是非私と共に歩んでこの国を更なる発展させてほしい」
「クラーゼ様、ありがとうございます。喜んでお受けいたします」
「2人の素晴らしい人生の門出に祝福を!」
国王様の言葉に更なる歓声と拍手が巻き起こった。
……私1人の気持ちは置いていかれたままだった。
その後の事は記憶が無く気付いたら自宅の自室にいた。
後でお父様に聞いたら顔面蒼白でヨロヨロと立ち上がったが倒れそうになり慌てて抱き止めてそのまま私は実家に帰る事になった、という。
私にとって人生初の挫折であり私の人生が大きく変わる日だった。




