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1フレームに映る君、  作者: 村田鉄則
解決編

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9/12

再上映会後、役者が揃う

 深夜、僕たちの下宿での推理合戦は終わりを迎えた。

 河合も僕もいつの間にか寝ていたらしい。目が覚めるとローテーブルが見えた。

 河合は僕の横にいて。肩に寄り添って寝ていた。偶然この形になったのだろうが恥ずかしい。僕は彼女を振り払うと、立ち上がって、シャワーを浴びに行った。

 結局犯人は三紀さんだったのだろうか。一体何のために…僕の上映会が行われると知っていたなら、出待ちでもして、こっそり直接僕に会えばいいものを…

 そんなことを考えながら、服を脱ぎ、シャワーを浴び始める。そのとき、温かい湯を浴びて血流が良くなったのか、僕の頭にイナズマが走った。

 そうか…そういうことだったんだ!

 …彼は僕の作品の上映時に来ていた!

昨日、上映会で最後まで残っていた男は、(はま)大津(おおつ)(みこと)…という妙な名前だった。

 浜大津は滋賀県南部にある地名である。

 山本さんの出身地もそこ辺りだったはずだ。

 そして、彼が行っているという近江学院大学なんて聞いたことも無かった。

 シャワーを浴び終わり、すぐにタオルで水分をふき取り、ジャージに着替え…

 僕はパソコンに向かった。

 まずは、近江学院大学を調べる。近い名前の大学は出てきたが、調べても、検索結果にその大学は出て来なかった。

 今度は三紀の「紀」という漢字を調べる。この漢字には名前で使う際は「こと」という読み方もあった。つまりは、「三紀」の「三」を「み」と訓読みし「紀」を「こと」と名前独自の読み方をすれば、「みこと」となる。わざわざ任意の名前記入欄で偽名を書いたのは、三紀と自分が別人であることを示したかったのだろう。

 それなら、名字を浜大津にしたのは、何故だ?よくわからない。彼女との絆を表すためか?それとも、僕に自分自身が山本さんの兄だと少し匂わせるためか?

 もしかしたら、彼がわざわざ自由記入欄で山本さんの写真の存在を明かしたのは、僕が観客を見るのに夢中で上映会の最中にその演出に気付かなかったことが原因なのかもしれない。

僕の作品の今日の上映開始時間は15:00である。今から動画ファイルを編集ソフトから書き出せば、僕のクソザコスペックPCでも間に合うが…

 僕はあえてそれをしなかった。犯人が望むことを行う、それがこの事件の答えのような気がしたのだ。



 上映会二日目、朝、上映会の準備をする時間に僕は上映会を行う教室に向かった。

 後ろには、河合がついてきている。河合にはすでに僕が気付いた真相を話している。

「一夜を同じ部屋で明かした仲になったんですね、私たち!」

 河合は歩きながら、いつもみたく冗談を笑みを浮かべて言ってくるが、目元には陰りが見えた。空元気というやつだろう。無理に明るく振舞い、僕を元気づけようとしているのかもしれない。

「まあ、そうなるか…」

 僕は冗談に対してツッコミを入れる気力も無くなっていた。昨日の処女作の上映から色々なことがあり過ぎた。しかも、今日これから犯人と対峙いや対話することになるかもしれないのだ。疲れや怠さがドっと押し寄せてくる。

 教室に入ると北野やその他の一、二回生たちが既に準備を始めていた。

 (くだん)のDVD-Rを北野に渡すと…

「あれ、これって昨日のままじゃないですか?いいんですか?」

 と北野が不思議がって言ってきた。

「いや、これでいいんだよ」

 僕は諭すようにそう言った。

 僕も手伝って準備が一通り終わると、

「おはよう!」

 図ったかのように遅れてきた沢村会長がちょうど来た。昨日から今日の深夜にかけて聞いた一条先輩の話の内容から、僕は少し彼の顔面を殴りたい衝動に駆られたが…ひ弱な僕が適う(かなう)相手ではないのでやめておいた。

そして、何事もなかったかのように上映会が始まった。

 時間が過ぎるのは早いもので、やがて…僕の作品の上映時間前となった。上映時間前のまだ教室の明るい時間帯に僕は、前方真ん中の席に座った。スマホを触っている風を装い内カメラ機能で後部座席を眺めていると、教室の後方からあの浜大津命、いや山本三紀さんが入ってきて教室中央の真ん中の席に座った。

 そして、何故か彼の直後、一条先輩がそっと教室の後方ドアを開けて、一番後ろの席のドア側に座っているのも見えた。

 僕の映画の再上映が始まる。

 28:10、あのサブリミナル演出が起きた直後、僕は三紀さんの方を振り向いた。

 すると、三紀さんも僕の方を見つめていて目と目が合った。少しゾッとした。その顔は満足気に笑っていた。

 二日目の上映会が終わった。教室の電気が点く。

 三紀さんは焦りつつも少し満足げに見えるような表情を浮かべ教室から立ち去ろうとした。

 その時…

「ちょっと待ってくれ!」

 大声を出し、彼を止めたのは一条先輩だった。一条先輩がこんなに大きな声で話すのを聞くのは初めてだった。

「一条?何でここに?お前はこのサークルの幽霊部員だったんじゃ…」

 三紀さんが頭に疑問符を浮かべながら、そう聞いた。キョロキョロと僕の席の方も見ている。

「お前なんだろ!伊丹君の動画に勝手な演出を加えたのは?」

「何を言ってるんだ?」

 三紀さんは前に立ちふさがる一条先輩を振り払い、その場から立ち去ろうとした。

「三紀、お前は真実を知らないといけない!俺も隠していたこと全部話す!」

「だから、何を…」

 三紀さんは本名を呼ばれ動揺したのか、目が泳ぎに泳ぎまくっている。

 僕は席から立ち上がり、三紀さんに近づき、真剣な眼差しを浮かべてゆっくりとこう呟いた。

「僕達はもう知ってるんです。あなたがやったことを…」

 その時、河合が教室前方のドアから…沢村会長とともに入ってきた…

「お前たち何やってんだ?また帰るの遅くなるだろうが!」

 沢村会長は入ってくるなり怒声をあげた…

 沢村会長の顔を見るとすぐに三紀さんは俯いて…(うれ)いに沈んだ顔をした。

 教室を照らす蛍光灯はキラキラと明るく、教室全体は光に包まれているにも関わらず…陰鬱な雰囲気が教室には漂い、窒息するぐらい空気が張り詰めているように感じた。

この重い、奇妙な雰囲気に包まれ始めた状態の教室で僕がまず言葉を発した。

「河合、前と後ろの両側のドアの鍵を閉めてきてくれ…」

 河合は走って、言われた通り二つのドアの鍵を閉めた。

 河合、僕、沢村会長、一条先輩、そして…三紀さん…

 今回の事件に関わった役者が全員揃った。

 自死し不在の山本さんを除き…

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