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1フレームに映る君、  作者: 村田鉄則
1.上映会での事件

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2/12

アンケート回答者

 僕はサブリミナル演出を映画に入れた覚えはなかった。映像を動画編集ソフトからMP4で書き出した後に編集のミスがないか、リップシンクの誤りが無いか、などなどを何度か映画を通しで見て確認し最終的にDVD-Rに焼いたのだから、編集ミスがあったというわけでもない。

 僕は、(くだん)のアンケート回答者に直接、話を詳しく聞こうと思った。

 僕の作品が上映された後に出ていった数人は全員女性であったが、幸いなことにアンケート回答者は性別欄において男に丸をしており、まだ、上映会実施中の教室の中にいるはずである。

 上映が終わり、教室に響く音が()む度に一人、また一人と人がそこから出てきた。

 僕は受付からチラチラとその様子を眺めては、出てくる客の性別を確認し、男性なら話しかけることを繰り返した。しかし、一向に僕が探しているアンケート回答者は出てこなかった。途方に暮れていると、教室の電気が点いた。いつの間にか上映会自体が終わりを告げていたのだ。

 僕は透かさず教室に入り、男性を探した。果たして、すぐに見つかった。観客は三人しか残っておらず、教室の真ん中あたりにペアで座っている女性と教室の前方窓際に男性が一人いるだけだったのだ。

 男性が帰ろうと席を立ち始めていたので、僕は走って、息を荒らげながら、男性の肩に触れた。

「ちょっと、すいません!」

 僕の鬼気迫る様子や大声に驚いたのだろう。

 男性やペアの女性、北野、教室にいる自分以外の皆一同がぎょっとした表情を浮かべて僕の方を見た。


 上映会後、誰も居なくなった大教室で、僕はアンケート回答者と一対一となり、件のアンケート内容に関する詳しい話を聞くことにした。

「は…初めまして。僕は伊丹(いたみ)五月(さつき)と言います。この上映会を開いている五条大学映画研究部に所属しています。二回生で学部は文学部です」

 僕は初めて会う人と話す緊張からオドオドしながらそう言った。

「そうなんですか。僕は滋賀県にある近江学院大学の三回生の“はまおおつみこと”って言います。学部は教育学部です。教師を目指しています」

 名前の記入欄(任意)には確か”浜大津命”と書かれていた。変わった名前だ。

 浜大津さんも緊張しているらしく、表情が固い。僕の方をちらりと一瞥し、こう続けた。

「…それで僕は何で引き留められたんでしょうか?」

 そういえば、なんで浜大津さんを引き留めたかまだ言ってなかった。緊張でどもりながらも返事を返す。

「あ…あなた『殺し屋と死を望む少女』って映画を今日ここで観ましたよね?」

 少し不安な表情を浮かべながら浜大津さんは首肯(しゅこう)した。

「じ…実は僕、あの映画の監督で…あ…あの後アンケートがあったじゃないですか…」

「ああ!なるほど!!あのアンケートのことで引き留めたんですね!」

 浜大津さんの口角はいつのまにか、上がっており、自分の現在の状況に納得がいった様子だった。

「そ…そうです。僕の映画で謎の少女が出てきたってアンケートにあなたは書いたじゃないですか?それに関して詳しくお話を聞きたかったんです」

「話します!実は僕あれに気付いてから、ずっと頭の中がモヤモヤしてて誰かに話したかったんです。あの映画の終盤、真相が明らかになる直前で、少女が殺し屋と別れるところがあるじゃないですか。僕が謎の少女を見たのはあのシーンなんです。あのシーンの最後のカットで少女は駅に向かって泣きながら歩いていきますよね。あそこで長い黒髪で目が大きく真珠のように輝いていて、鼻筋の通ったブレザー服を着た少女が映ったんです」

「なるほど…」

 僕はその証言を聞きながら、メモをした。浜大津さんには他にもちょっとした質問をした後にすぐに帰ってもらった。

 僕の映画に黒髪ロングの少女など出演していない。ヒロインを演じている河合萌は茶髪のショートヘアであるし、他の女性キャラも茶髪の子が多く黒髪の子がいてもボブカットである。僕はこめかみを抑えながら、頭をフル回転させて謎の少女のことを考えた。

 すると…ある女性のことが脳裏に浮かんだ…

 まさか…そんな…こと…

 動悸で胸が張り詰めてきた。まさか…彼女なのか?

リップシンク

 映画に登場する人物の口の動きとセリフを合わせること

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