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地獄


俺は銃声が聞こえ耳鳴りに包まれると

視界が真っ暗になり


自分が犯した罪の記憶

愛する家族との記憶の中にいた。


夢ではない。

自分は死んで、記憶の中を旅しているとすぐに気付いた。

随分と長い間旅をした。

同時に自分がどう仕様もない塵屑である事を再確認し死んでしまいたくなった。


「まあもう死んでんだけど。」


真っ暗な中で声が出た。

視界もなく、実態もない。


そうか、

ここで自分の犯した罪と向き合い続けるのが俺の罰なのだろうか。




「たわけが。起きよ。」


ん?


「起きよ愚かな人の子よ。」


いよいよ意味がわからない。


「いい加減目を開けんか外道者が!!」


俺は恐る恐る目を開ると、

そこは幼い頃から墓参りのお寺でよく見た

地獄絵図の様な所でもなく

鬼の形相で見下す閻魔様もおらず

1人の女性が腹を立てた様子で俺を覗き込んでいた。


「あ、あんたは?」


聞かずにはいられなかった。

辺りは自然豊かな森で光に包まれ、

女性のすぐ後ろに見える滝には虹が架かっている。

何より女神様を絵に描いたような

とても美しい女性がそこに居たからである。

とても地獄に来たとは思えなかった。


「わしは地獄の案内人が1人、そうだけ名乗っておこうかの。」


1人ということは何人かいるうちの1人なのであろう。

しかし、やはりここから地獄へ派遣される事が決定されている事も瞬時に理解できた。


「俺は塵屑みたいな人間だった。ひと思いにどの地獄でも飛ばしてくれ。」


覚悟は出来ていた。

散々人を不幸にしてきた俺は、むしろその道へ進みたかった。


「愚か者が。お主の贖罪はもう決まっておるわ。」


退屈そうに案内人は話す。


「お主の行って来たことは人々を不幸にし、人生を破滅させた人間すらおる。その罪万死に値する。まあもう一度、死んでおるんだがのう。」


豊満な身体を密着させ、不敵な笑みを魅せる。


冗談ではない。身体もない。

先程死んだばかりでそんな気分になれるものか。

密着などできるものか。


「聞きたいか?」


目をキラキラさせながら案内人は話した。


「良いからさっさと教えてくれ。」


そんな気分になれるものかと

言い聞かせるにも限界がある程美しい案内人とやらであることは言うまでもない。

俺は不躾に答えた。


「つれないのう。ではお主の贖罪についてじゃが...異世界にて詐欺師として人を騙しもう一度人生を全うしてもらう。」


「は...?」


耳を疑った。


「だから、人を騙しペテン師としての人生を送ってもらう。異論は認められない。それがお主の地獄じゃ。」


それは地獄だ。

あんな事もう2度としない。

詐欺のような真似も、喧嘩ももう2度と。

それを人生をかけてやれと?

たまったもんじゃない。


「そんなのじゃなく普通の悪党が送られる地獄に送ってくれ。冗談にしては出来がわりーぞ。」


俺は答えた。


「まあ最後まで聞け人間。思想と感情を持つ人間にとって地獄とは人により違う。お主にはペテン師としてもう一度人生を歩んでもらう。それがお主への最高の罰じゃ。

じゃが同時に、第三者により家族を守る為の行動としてそうするしかなかった被害者でもあるという報告も受けておる。そしてお主の家族への愛は真実の愛である事も確認済みじゃ。」



「しかしながら、守る為の行動として方法を間違えたと言い許される事ではない。よって行き先は地獄じゃ。だがチャンスをやろう。お主がどうしてもこの地獄を生き抜かなければいけないチャンスを。」


案内人のニヤニヤと話が止まらない。

情報量が多く実態の無い頭がすでにパンク寸前である。


ここから小一時間ほど案内人の話しが終わると

意外と気持は落ち着き、頭もスッキリしていた。

この美しい環境のせいであろうか。


長い話であったが、案内人の話をまとめるとこうだ。

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