小さな嘘-4
3人が口をポカンと開け、呆然と俺を見つめていた。
「アルベルト、起きてたのか!?」
父親は慌てて俺の顔を見つめると、動揺を隠しきれない様子で話を続けた。
「あのな、アル。パパ達は今大事な大人のお話をしてるんだ。良い子だからマーガレット達と2階でおままごとしてような。」
失敗した。
自らまたとない情報収集の場をふいにしてしまった。
それにしてもシャンの件は気になるので、今後の動向は気にしていよう。
父親の肩に担がれながらそんな事を考えていると
「ベルカルト待って。アルちゃん、おばさんにもう少しお話聞かせてくれるかしら?」
「サナ!?」
父親が大きく振り返ったので、危なく肩から放り出される所であった。
「いや、ベル。アルちゃんの話、良いかもしれないわ。サンナが行ったようにルート診断で現段階で博打が濃厚と出ただけで確かに軍師や交渉人もジョブとして候補にあがっているもの。」
シャンママは真面目な顔でこちらを見つめ、母は何か考えるように顎に手を当てながら俯いていた。
「正気か?サナ。5歳児の言う事だぞ。いくら俺らの子供だからって少し買い被りすぎじゃないか?」
「いえ、貴方達の子供だからと言うことを差し引いたとしても興味のある解決策だわ。アルちゃんお願い出来るかな?」
やれやれと項垂れる父親を他所に俺は話出した。
「あのね、嘘つきは良くないこと。ママがいつも言ってるよ。“博打じゃないよ”は嘘つきだけど、“良いステータスがあってぐんしになれるかもしれないよ”は嘘じゃないでしょう?」
いや、前世で学んだ。
この手の隠蔽工作はトータルして嘘と呼ばれ、最終的に良くない局面に遭遇すれば嘘つきになる。例えばそれが今回の様に愛ある隠蔽だとしてもだ。
前世で嫌という程に味わった。
すなわちこれは、“嘘”である。
本当の事実を正面に祀り上げ、隠したい事実を隠蔽する。
決して嘘はついていないし、間違った事もいっていない。
はぐらかしているのだ。
嘘をつく時は事実も織り交ぜながら、証拠と現実味を帯びさせて話を組み立てる。これは詐欺師の常套手段である。
5歳児にしてこの手のやり口が身に付いていることに嫌気が差した。転生しているのだから当たり前だが、このこんな気持ちとあと60年程も付き合って行かなければならないのだろうか。
息をするように嘘がつけてしまう。
本当に嫌なことだ。
話を聞き終えるとシャンママはまたしても呆然とした顔をしながらこちらを見つめていた。
「アル...」
今の話を聞き、より一層顔が険しくなっていた母がいよいよ口を開いた。
しまったと思った。
今までのリアクションからして、母は恐らくこの手の話の真偽に敏感な人間、いやエルフなのだろう。
俺もかつてはその様な世界で生きていた人間。
母が敏感なように、俺は逆にそうゆう人に対して敏感である。
今の一連の流れで確実に母に何か見抜かれてしまった。
そう詐欺師としての直感がゾワっと物語った。
「あぁ、可愛いアル!天才かもしれないわ!?」
親バカである。