小さな嘘-2
何だかんだで仲の良いシャンとマーガレットは、マーガレットの部屋でおままごとをするらしく
「アルはうちの旦那さん役だよ!」
「アルは今日は私の王子様役なんです!」
まさかの異世界ハーレム展開に顔が引きつるのを感じたが、
「二人共ごめんね、俺ちょっと眠くなっちゃったよ。」
2人との交流も捨て難いところだが、何とかミッション遂行の為にお誘いを断ることに成功した。
「起きたら必ず上に上がってくるんだよ!!」
シャンはそう言い残すと、プラスチック製の様な食器を持ちマーガレットと2階へ上がっていった。
カランカラン。
「あら、サナかしら。アル、パパ起こしてからお昼寝してね。あんまり寝過ぎたら夜寝られなくなっちゃうからね!」
母は玄関へとせかせかと歩いていった。
妹を抱いて気持良さそうに昼寝する父をよく見てみると、筋骨隆々な体格の割には意外と身長の方はないのだなと感じた。
「パパ、パパ!」
「アル、もうパパ全然眠れないよ。どうしたっていうんだい?」
「お客さんきたよ!ママがパパ起こしておけって。」
「誰がきたって?」
「えーっと...」
《シャングリラの母の事は“シャンママ”と愛称します》
頭の中でテレパシーのような形で声が聞こえてきた。
驚き周りを見渡したが、思い当たる節もあったので
「んとね、シャンママ!」
と思い切って答えてみた。
「あぁ、サナはもう来たのか。アル、お部屋でお昼寝するか?お眠さんなんだろう?」
どうやら大事な話がある事はこれで確定したかな。
3人で真面目に話したいといったところであろう。
でもここで引き下がる訳にもいかず、
「パパと一緒に寝たいなあ。」
「しょうがないなあ。」
そう言うと父は俺を抱えたままソファーへ腰掛けた。
シャンママはというと、落ち着かない様子で顔を若干引きつらせながらテーブルへと着いていた。
しばらくするとトレーにお茶と茶菓子を乗せて母が現れた。母もただならぬ顔つきで心配そうにシャンママに言葉をかけた。
「あぁ、サナ。とりあえず詳しく聞かせてくれるかしら?落ち着いて。あなたのお好きなハーブティーだから。」
シャンママはすすり泣くように話し始めた。
「ありがとう。昨日のシャンの検診でね...」
そこから30分ほどに渡りシャンママの話が続き、父と母は黙って頷きながら話を聞いていた。
どうやら1年に1回、国から派遣された医師の検診があるようで健康状態は勿論のこと、能力やスキルについての検診が行われるらしい。
その場で“覚醒”したシャンはステータスの検診が行われ、成人した際に天命を受けるジョブが絞られたのだがその第一候補に上がったジョブがあまり良くなかったのだ。
「...それでね、このまま成長を続けるとシャンのジョブは“博打”みたいなの。」
そう言うとシャンママは両手に顔を埋めテーブルに崩れ落ちた。
「サナ、まだシャンは7歳じゃない。あの子が、博打として生きて行く未来が確定したわけじゃない。そのルートであれば“冒険者”“学徒”“聖騎士”まだまだ立派なジョブに分岐する可能性は充分にあるわ」
シャンママの肩を撫でながら諭すように話しかける。
「それに万が一“博打”だったとしても、道さえ踏み外さなければ軍師や交渉人として国の仕事に就くことだって出来るわ!この歳で覚醒しているんだもの、“第三特異点”クラスの博打であれば充分一流の交渉人としてやっていける。」
なんとか前向きに話そうとする母だが、シャンママの顔はまだ晴れず何とかしようとお茶のお代わりをすすめるのだが、どれも上手くいかないようだ。
ここでずっと黙っていた父がようやく口を開いた。
「検診の結果はもうアーサーに伝えてあるのか?」