ともだちAI
私には、友達が居ない。
友達という存在が欲しいけれど、
いまいち、作り方がわからないのだ。
4月から入った新しい高校。
友達ができるだろうかと怯えていたけれど、
やっぱり私には友達ができなかった。
高校生活が始まって3ヶ月。
もうクラスの中ではグループが出来ており、
休み時間には仲の良い子同士が集まって楽しそうに話す。
私は話す相手がおらず、自分の机で絵を描いたり、
小説を読んで過ごすのだ。
ーーーーーー
高校での1日が終わり、帰路につく。
私は部活にも入っていない。
なんとなく、気が乗らなかったのだ。
ますます友達をつくるチャンスを遠ざけている、
そんなことを感じながらも、
「ひとりがラクだよね」なんて笑ってみる。
ふぅ、と吐く息が白い。
手袋を嵌めた手に息を吐きかけると、
少し温かさを感じる。
学校から家までは、バスに乗って帰る。
いつものバス停まで歩き、お気に入りの席に着く。
そんな中、後ろに座った女子高生たちから聞こえて来た声だった。
「ねぇ”ともだちAI”ってアプリ知ってる?
AIと友達みたいにチャットできるんだって」
”友達”という言葉が私のアンテナに引っかかる。
バスが走る音に搔き消されないように、
私は彼女たちの話に耳を澄ませた。
「え、知らない、何それ」
「なんか、あるらしいよ。
でもさ、AIとチャットとか虚しくない?
AIとチャットするとか、友達いない人がすることじゃん!」
あはは、と笑い声が響く。
友達がいる人には、友達がいない人の気持ちは分からないのだろう。
AIとチャットしてみたい、と感じたが、
彼女たちの嘲笑を聞いてそんな自分が恥ずかしくなる。
(AIとまで会話しなくても、だったらひとりでいいか)
そんな風に考えていたら、いつも降りる駅にバスが到着した。
バスから降りて、暗くなった空を見上げる。
おぼろ月が綺麗だった。