50、まさかこんな事になるとはね。
庭で家庭菜園を始めた。家庭菜園という名の実験と検証だが。と、大袈裟に表現してみたが、蝋仙花と楽西瓜の二種類だけだ。楽西瓜はどれくらいの繁殖力なのかという事を、蝋仙花は根の方はともかく上部の方も植えたら育つのかという事を調べたいと思ったからだ。ハクが興味を持ってくれたらしく手伝ってくれる事になった。まぁ手伝うと言っても、俺も植えて軽く水を撒くだけなので、毎日一緒に観察するだけなのだが。それでも夏休みの宿題を親子でやっているみたいで、ちょっと楽しい。
楽西瓜は、まさしくその名の通り二日で中玉位の実をつけた。驚くべき成長速度で些か恐怖を覚える程だった。実を一つだけ残し収穫しもう一日放置してみた。すると、新たな実はついてはいなかったがその実は超大玉になって、破裂寸前の様に見え背筋が凍った。ハクと顔を見合わせ、急いで収穫した。これでどうして森が西瓜だらけにならないのかと疑問になったが、ハクの解説によるとどうやら成長に必要な養分を大量に消費するらしく、同じ土地では養分を枯渇してしまうらしく育ち難いらしい。なるほど、だから森が西瓜まみれにならないのか・・・。で、数撃ちゃ当たる方式で急速型の繁殖形態を進化先に選んだのか。そして他の植物と必要な養分が違うので、森を枯らす事も無いようだ。自然とは良くできているな。この楽西瓜、確かに恐ろしいまでの繁殖力だが、非常食としては、ましてや旅のお供の携帯食としてはかなり優秀だ。今回収穫した分の楽西瓜の種を持っていけば充分だろう。・・・ちなみに、超大玉は中玉より美味しくなかった。不味くは無かったが。
蝋仙花の方はまず根の方だけを植え育つのを待った。四日程で初めて蝋仙花を発見した時の大きさまで成長した。それを今度は中間辺りで切り取り、今度はその上部もその隣に植えてみた。すると上部の方は十日程で元の大きさになった。そこで今度は蝋仙花を三分割して植えてみると、中間の輪切りになった部分は五日経っても成長の兆しを見せなかった。どうやら根か最上部があれば再成長をする、そして根がある方が早く成長する事が解った。大地に根ざすのに時間が掛かるらしい。
株が十になった所で株を増やすのを止め、一度に育てるのは十と決めた。放っておいたらどれ位まで育つのだろうと思い、十一本目の株を少し離れた所へ植えてみた。結果は・・・普段収穫している状態より二割増し程まで成長した所で止まった。どうやらこれ以上は大きくならないらしい。そしてそこまで育てる必要性は無さそうに感じる。つまり収穫時期の変更はしなくて良さそうだと判断した。だがここまで来たらせっかくだから花が咲くまで見届けてみる事にしてみた。すると小さな赤い花が、それこそ蝋燭に灯る炎の様な花が咲いた。花が咲くと蝋燭が溶ける様に少しづつ縮んでいった。ゆっくりと。成長する速度と同じ時間を掛けて。そしてその蝋燭が全て燃え尽きると、ようやく種子が姿を表した。ここまでして、四つ・・・か。ハクの話では、この花はちょっとした刺激ですぐに散ってしまうらしい。という事は近くを魔物が通過したり、ちょっと風が吹いたりするだけで散ってしまうという事だ。そうなるとまたそこから元の大きさになるまで背を伸ばすようだ。なるほど、これでは数は簡単には増えそうもない。だからこそ再成長という特性を身に着けたのだろう。自然とは良くできている。
家庭菜園は概ね良好だ。
本日は久し振りにヤクモとの行動である。スーアン達眼鏡蛇一家は家族水入らずで三日程お出掛けしている。元の自宅を中心に過ごすそうだ。旅に出てしまうと、こういう機会は無いだろうと思うので今の内にというスーアンの申し出を、是非そうするべきだと受け入れた。なので本日は正真正銘、俺とヤクモだけである。
目的は茸狩りである。先日俺が作った金槌が、どうやらロックの心を大きく掴んだようで、珍しく「それが欲しい。」とはっきり口にした。同じもので良いかと聞いたら、もっと大きいのが良いとのご注文を頂いた。何に使うつもりなのかは不明だが、おそらく戦闘にでは無さそうだったので、作る事にした。きっと何か思う所があるのだろう、直感的な何かが。だがそうなると素材が足りないという事になったので、茸狩りである。当のロックは錬金術ではなく、何か別の技能をトウオウと一緒に試すのだそうでお留守番するのだそうだ。金槌を貸して欲しいと言うので、一応お約束で「壊すなよぉ。」と言って貸した。
家からの歩き慣れた道のりも相まって懐かしいものが淡く鼻先を掠める。
「こうやって歩いてると、出会った頃を思い出すな。」
「そうですね・・・。なんだか遠い昔の様ですね。」
俺もそんな気がするよ。
「出会った頃はまだ二足歩行じゃ無かったな。」
「えぇ・・・そうですね。」
「初めてヤクモに出くわした時は焦ったなぁ。勝てる気がしなかったよ。」
「御冗談を・・・。私には主殿がとても奇妙なものに見えました。」
「だろうなあ。」
言葉は通じるし、狐の匂いはするし、角は生えてるし、兎だし。
「そして過信して油断していました。」
「そんな事はないだろう。充分に警戒していたさ。そのおかげで俺は助かったんだが。」
「そう・・・ですね。あの時も、似たような事を仰っていました。」
ヤクモは噛みしめるようにそう言って、その時分に視線を向けた。
「いや本当にヤクモが賢くて助かった。」
「返す言葉に困りますね。」
「正直あの時、能力だけならヤクモの方が上だったさ。でも俺が奇妙な存在だったから、必要以上に警戒してた。」
「・・・そうかもしれませんね。そして私はあの時、主殿の情報を殆ど知らなかった。」
「そうだ。だから短期決戦を選んだんだ。あの時点では俺のできる事はあれで全部だったからな。危なかったぜ。」
全く敵わないな、という風にヤクモは首を振った。
「今やったら、近づければ俺の勝ち。近づけなかったらヤクモの勝ちって感じかな。」
「それはどうでしょう・・・。主殿は道具を使われますよね。それを考えると私の方が不利だと思われますが。」
道具か・・・確かにな。計百本を超える俺の角だけでも脅威だろうな。っていうか冷静だな、ヤクモは。
「そうかもなぁ・・・。」
本音を言えば道具を使って戦うのはあまり望ましくはない。使える武器は己の身体だけというのが俺の理想だが、生き抜く為にはそうも言っていられない事も多々あった。両方の拳を何度か結んで開いて眺める。俺の場合は、この手があったればこその道具なのだが。
「ま、もし今俺がヤクモと戦うとして、道具は使わないだろうな。」
「何故です。」
ヤクモからすれば当然の疑問だろうな、持てる限りの手段を講じないのは。
「あまりに無粋だからさ。」
「命懸けの戦いであってもですか・・・。」
「そうだな、相手がヤクモなら。」
そんな事には絶対にならないと知っていてのもしもの話。
「・・・そうですね。主殿ならきっとそうなさるでしょうね。」
そんな事には絶対にならないと分かっていてのもしもの話。
足元に咲く小さな花が時折視界の橋を通り過ぎる。今日もいい天気だ。目的地に向かう景色に思い出が重なって映る。
「モモカに会ったのは、俺が二足歩行になった後だったな。」
「えぇ、そうでしたね。・・・天井に穴を穿った後でした。」
普段は皆の前ではあまり出さない、悪戯な笑顔でそう言った。
「・・・やめろよ。それは・・・思い出すと・・・。」
必ず笑っちゃうんだよなぁ。俺の笑い声に釣られてヤクモも笑い出す。いつ何時思い出しても、同じ様に笑ってしまう。鉄板だな。一頻り笑い終わって、涙を指で拭いながら話を戻す。
「それはそうと、初めてモモカと出会った時は焦ったよ。気配がヤクモとそっくりだったから、完全にヤクモが戻って来たんだと思ってたんだよなぁ・・・。今なら気配だけでも判別できるけどな。」
「いや、あの時は私も後から合流しましたが、今思い返しても少し冷や汗が出てくる気がします。」
ヤクモは大袈裟だなぁ・・・とは言い切れない。一目でヤクモの妹だと確信はできたが、どう対処したものかと非常に困ったな。
「あぁ、ヤクモの妹だっていうのはすぐに分かったのは良いんだけど、初対面で俺の話を信じてくれそうもないし、まともに戦う訳にもいかないし・・・。」
「ふふっ。モモカが相手ならそんな事もなかったのではありませんか。」
簡単に言ってくれるぜ。
「そんな訳あるか。あの時の俺だぞ。二足歩行になっただけくらいだったんだぞ。それで相手はヤクモの妹だぞ。確かにヤクモよりは能力全体をみたら若干低めだったかもしれないが、能力によってはヤクモより優れているものもあっただろう。」
「そう言われれば・・・そうかもしれませんね。ですが、それなら特に問題はないのでは。」
またしても簡単に言ってくれる。
「あのなぁ・・・。ヤクモに近い力を持っている相手と戦うならまだ何とかなるかもしれないが、傷つけないようにしながら逃げ回るのはかなり厳しい。それも無闇に逃げ回る訳にもいかないし。」
「なるほど・・・その・・・ご迷惑をお掛けしました。」
「いやぁ、あの時は俺がヤクモを煽ったみたいなところもあったからな。」
「決してそのような事は・・・。主殿に言っていただけなければ、モモカが私を探し回るという可能性に気がつけませんでした。おかげで無事に再開する事ができました。」
「俺はつい最悪の場合を想定しちゃうからなぁ・・・。」
基本的に悲観的なんだよな。悲観的というよりは最悪の場合に備える癖が、兎になる前から染み付いているらしい。最悪にならないように行動しているつもりだが、それでも起きてしまうのが「予期せぬ出来事」というやつだからな。
「それでも、あの時は俺の方が先に出会えて良かったな。まぁ結果論だけどな。」
完全に油断していたけどな。どの口が事態は最悪を想定しているなどと・・・思ってみたりする。『是、肯定します。』だから、反省してるの。『是・・・是、肯定します。』おい・・・。はい、何時もありがとうございます。『恐れ入ります。』
「全くです。主殿が先にモモカと合流してくれたおかげで助かりました。」
「・・・今思うと、あの群青狼共はモモカを追っていたのか、始めから俺を狙っていたのかは不明だけどな。」
「おそらくモモカを追ってきていたのでしょう。そして主殿を発見したのだと思われます。あの辺りは群青狼の多い地域ではありますから。」
これはヤクモの推測が正しいだろうな。
「確かにな。スーアン達と出会った時にもいたもんな。」
モモカがヤクモと同じく臣下になった後、ヤクモ達の家に向かう途中で出会ったんだよな。この時には何故だか知らなかったが、無謀にも俺に襲い掛かってきたスーアンに、俺も無謀にもコブラツイストを掛けようとしていたんだよな。
「そうでしたね。・・・主殿、あれはいったい何をなさっていたのでしょうか。」
うっ・・・答え難い。あまりに力の差があり過ぎたんで、この大自然にあるまじき行為をしていたとは。正直な話、少し締め上げて放り投げようと思ってたんだよな。
「んん・・・。少し締め上げれば諦めて帰ってくれるかと思って・・・。」
俺自身が締め上げられているみたいな声で、それこそ苦しい言い訳をしてみた。
「やはり・・・その様な事だと思っていました。主殿はお優しいですね。」
そう言われると、少し具合が悪い。単に俺がこの自然の中で生き抜くには少し甘いだけなのだと思うが。
「・・・それにしても、まさか捕縛眼鏡蛇の親子が臣下になるとは思わなかったよ。」
「それは・・・どうでしょう。」
「そういえば・・・ヤクモもモモカもあの状況を見るなり、何やら確信していたよなぁ。」
「えぇまぁ・・・私達兄妹も身に覚えがありましたから。」
そりゃあそうだ、俺にも同じ様な記憶はございました。そしてヤクモはあの時と同じ顔をしている。
「だけどスーアン達のおかげで、この森の行動範囲が広がった気がするな。」
「そうですね。私達に無い知識も得る事ができましたしね。」
「そうだな。だがなにより・・・賑やかになったな。」
それが何よりも嬉しいと感じている。勿論、ヤクモとモモカが仲間になった時にも感じたが、やはり子供がいるとより家族になったという実感が強くなった。
「えぇ・・・ですが子供達がいる事で、モモカが楽しそうなのが、私は嬉しいです。」
そうなんだよな・・・。実はスーアン達と言うよりジュウザ達子供がいた事がモモカにとって大きかったようだ。
「生まれてからずっと妹だったから、お姉さんになったみたいで嬉しかったんじゃないか、きっと。」
「そうかもしれませんね・・・いや、きっとそうなんだと思います。」
ヤクモはそう言って少し遠くを見た。何か思う事があるご様子。
「どうした。」
「いえ・・・ただ私はモモカにとって良い兄ではなかったのではないかと思いまして。」
「なんでだよ。」
思いもよらぬ発言に思わず綺麗な突っ込みを入れてしまった。
「私が兄として頼りなかったから・・・あの子等の為に時分がと思ったのではないかと・・・。」
なるほどそうきたか。ヤクモ・・・残念、たぶんそれはない。そんなものはモモカを見ていれば分かる事だ。
「そんな訳あるか。ヤクモが良い兄貴だったから、自分もそうなりたと思ったんだと俺は思うぞ。ヤクモに憧れてるのさ。」
「そうでしょうか・・・。」
いつになく弱気だな。どうしたものか。
「気にし過ぎだよ。俺からみれば、ヤクモの方が俺より群れの長にふさわしい脂質を持っていると思うぞ。」
本心だ。きっと俺より厳しくこの自然と向き合って皆を導く事ができるんじゃないかと思っている。
「御冗談を・・・。ありがとうございます、主殿。そのお言葉だけで。」
納得したかは不明だが、どうやら持ち直した様だ。
「まぁでも面白いもんだよな、ロックがうちに来たら、今度はミナがお姉ちゃんになるんだもんな。」
「そうですね。全く面白いものです。ミナも兄達に憧れていたのでしょうか。」
「そうだろうなぁ。生まれてからずぅっと末っ子だからなぁ。」
「そういうものでしょうか・・・。」
「そういうもんさ、きっと。ずっと兄ちゃんのヤクモには理解しにくいかもしれないなぁ。・・・ヤクモは弟になってみたいとおもったりはしないのか。」
「・・・考えた事もなかったかもしれませんね。しかしそう言われると、それも良いかもしれないなと思います。」
どうやら少しモモカやミナの気持ちも理解できたのかもしれないな。まぁあくまで、モモカやミナの気持ちは「だろう。」と推察でしかないが。概ね間違っていないとも思うが。どちらにしても良い兄達に恵まれていたからだと思う。
「こう見ると、ジュウザって意外とちゃんとお兄ちゃんなんだよなぁ。俺達と一緒にいると一番子供っぽいのにな。」
「えぇ・・・面白いものですよね。ジュウザはしっかり下の子達の事を見ています。たいしたものです。私も見習うべきところがあると感じる時もあるくらいです。」
随分とヤクモの中でジュウザは高評価のようだ。そしてヤクモこそ良く見ている。やっぱり俺より君主向きなんじゃないかと思う。その後ジュウザが聴いていたら身悶えして、大いに調子に乗ってしまいそうな褒めが続いた。ジュウザよ、こういうのは陰で言われる方が良いんだぞ。勿論、サイヤハクが良く補佐していることも俺達は分かっているから大丈夫だぞ。
この俺が弟子を取ることになるとは思ってもいなかったが、実際そうなってみると俺にとっても自分を見直す良い機会を得られたと感じている。誰かに「教える」というのは、今一度学び直すという事に近い。むしろ誰かにきちんと教えられて、初めてちゃんと「学んだ」と言えるのではないかと思う。ロックにも感謝を。
「しっかし、流石の俺もノインに会った時は驚いたぜ。正直、翠玉馴鹿に出会った時よりもな。」
「それは意外ですね。翠玉馴鹿の時には主殿は死にかけていましたが。」
あ、急にヤクモの目が細くなった。しつこく言い聞かせないとまた俺が同じ様な無茶をすると思ったいるのだろう。でもなぁ・・・あの時はとてもじゃないけど逃げ切れないと判断しただけ、微々たるものだがその方が確率が高いと判断しただけなんだけどなぁ。
「悪かったよぅ・・・。あの時散々モモカ達に説教されたから、もう勘弁してくれ。」
そう言うと、ヤクモは笑い声を上げた。
「それにしてもノイン殿には・・・敵意の様なものを感じなかったので、主殿がそう感じていたのは意外です。」
それはそうなんだが・・・。ロックは「天使」だからなんとなく解るが、ヤクモもそう感じていたとは。ノインが「聖」なるものだとするなら、ヤクモはどちらかというと「妖」とか「霊」みたいな感じかと思っていたけど。尻尾っも沢山あるし。おそらくこれは俺の前世からの先入観というやつなのだろう。そう、ここは俺の常識の通用しない部分の多いファンタジーだ。
「いやぁだって、相手は聖獣・麒麟だぞ。俺だって震え上がるってもんだ。」
「とてもそうは見えませんでしたが。」
ヤクモにはそう見えていたのか。内心、世界の摂理を乱す者とみなされるんじゃあないかと警戒していた。結果は、麒麟は調停者というよりは観測者といった風が色濃い感じだった。だが。
「よもや、聖獣の麒麟が臣下になるとは思はなかったよ。それもノインの方から申し出があるとは。」
「いえいえ、主殿なら当然だと。」
うおっ。ここできたか。ヤクモの中で俺の評価はどうなっているのか、心配になって来る。まぁ・・・ヤクモに限った事ではないが。これだけが少し居心地が悪い。冷静に俺の事を見極めているのは、それこそノインとトウオウぐらいだろうな。
ノインと出会った事が、この先の俺達の行く道を大きく左右する事になった。元々何時か森の外に出てみようとは思っていたが、この森以外の世界を見てみたいというぐらいの気持ちだった。この森の時と同じ様に少しずつ行動範囲を増やすつもりだった。あくまで今の我が家を拠点にして行動するつもりだった。ノインの話を聞くまでは。
「ノインを連れて帰ったら、上からフタバが落ちてきたんだよな。」
「そうでしたね・・・。いつ頃からあの木の上に住み着いていたのでしょうか。」
「ヤクモに出会う前からだな。もしかしたら俺より前かもしれないぞ。」
「もしそうなら・・・フタバには少し申し訳ない事をしてしまったかもしれないですね。」
「そうだなぁ。でも大丈夫じゃないかな。毎日楽しそうにしてるし。」
「確かに。皆に可愛がられていますしね。一番若いからでしょうか。」
「うぅん・・・それはどうかなあ。若さで言ったら、俺が一番若いんだが。」
ヤクモの目が大きく開かれた。
「毎度の事とはいえ、何時もその事を忘れてしまいます。主殿はまるで私達より長く生きてきたかの様な・・・風格を感じますので・・・。」
鋭い・・・というか、俺の振る舞いが甘いというか。ヤクモの感じ方は間違ってもいない。何時か話せるかなぁ・・・。騙しているみたいで申し訳ない気もするが、ヤクモ達と俺との関係に全く関係ない事だとも思う。だが・・・俺に風格があるとは思えないが。
「ヤクモは何時も大袈裟だなぁ。」
と、今回も笑って誤魔化す。これが成功しているかも怪しいが。
「私はそうは思いませんが。」
ヤクモもそう言って、真意の判りにくい笑顔で応戦した。だいぶ俺のあしらい方が上手くなったものだ。・・・いや、始めから上手くあしらわれていたような気がするなぁ。
麒麟が臣下に加わっただけでも、フタバが気を失って墜落してくる程驚いたが、その後にまさか魔王が家族に加わるとは思わなかった。
「ノインの時も驚いたが、トウオウの時もかなり焦ったな。」
「えぇ、全くです。何もせずに尾行されていたのが、余計に不気味でしたね。」
そうなんだよなぁ・・・。一目で魔族であろうと判断できる風体だったから、無視を決め込んだんだけどな。
「なぁ。ずぅっとついて来るんだもんなぁ・・・焦ったぜ。」
「ですが、よもやただの興味本位だったとは・・・それも更に驚きでしたが。」
「だな。だけど今のトウオウを見てると納得だけどな。」
「本当に。トウオウ殿は何時も楽しそうですね。」
確かに。だけどなぁ、トウオウの場合顔が常に笑ってるから何とも言えないが。何を考えているかは分かりづらくはある。最近何となく読めるようにはなってきたが、それでも良くわからん奴だよ、あの魔王様は。
「そうだな。何時も楽しそうに笑ってるもんな。うちで一番良く笑う奴だな。」
しょっちゅう墜落して、文字通り笑い転げている。
この良く笑う南瓜の魔王様と出会った事が、もう少し正確に言うなら、聖獣の麒麟と南瓜の魔王が揃った事によりもたらされた情報が俺の・・・俺達の向かう先が大きく変わる事になった。
どうやらこの世界には今現在、期限があるようだ。それを打開する方法が、もしかしたらあるかもしれないとの事だ。
不思議な夢も見た。何処かへ俺を導くような。
これだけ揃えば、偶然や気の所為という事はないだろうな。
つまり俺がこれからしようとしている事は・・・世界を掬う事と・・・。
まさかこんな事になるとはね。
まだ、そうと決まったわけでもないが、きっと近からず遠からずといった感じだろう。
ま、あまり気を張り過ぎず頑張るとしよう。
さぁ、そろそろ今日の目的地だ。
「ヤクモ、茸いっぱい採って帰るぞ。」
「はい。」




