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33、なんでもない日

 ・ロック進化する。

 トウオウに出会うちょっと前の話。ロックが「レベルが全部になったから進化する。見てて欲しい。」と頼まれたので快諾した。その日はスーアン達眼鏡蛇一家は揃って元のご自宅に帰り、改築計画をハクを中心に具体化するとの事で出かけていった。念の為ヤクモとノインが護衛としてついて行った。その日フタバはスーアンの日だったようです。という事で俺とモモカが見守りをすることになった。

「ロック、好きな種族を選んでいいからな。」

 小さく頷いて進化を開始しようとしたロックが首を傾げた。

「・・・ロック、どうした。」

「師匠・・・僕、一個しか無い。天使熊エンジェル・ベア。」

 なんですと。そんな事もあるのか・・・。それってロックが希少種族って事なんじゃ・・・。まぁ、ちょぉぉぉっと変わってるかなくらいは思ってたけども。

「そっか。じゃあ、進化するか、しないかを決めるしかないな。どうする。」

「・・・進化する。」

 少し考えてからそう答えた。ちゃんと自分で決断した、いい顔をしている。ロックの事だから言葉にこそしないが、ジュウザやハクの事を見ていて自分も、と思ったのだろう。俺に弟子入する時に、強くなると決めていたからな。ロックは男の子だもんな。

「そうか、わかった。」


 ロックは頷いて、進化の儀式を始めた。ま、少し光る程度の事だけどな。光が収束して消える。ロックは一通り手や足、お腹などをも回し、見守っていた俺とモモカの方を見た。

「師匠、僕、なにか変わった?」

 自分じゃ分からないらしい。俺はモモカの方を見る。視線を合わせお互いに首を傾げる。えぇそうです、俺達にも分かりません。色が変わった訳でも、体格が大きくなった訳でも無く、耳の形や爪の形が変化した訳でも無そうだ。

「うぅん、ちょっとわからんな。なぁロック、くるっと回ってみてくれないか。」

 もしかしたら正面から見ただけでは判らない箇所に変化があるかもしれない。一応全身を見せてもらおう。ロックは「うん。わかった。」と言って一回転した。・・・確かに一回転した。でもなロック、それは前転って言うんだぞ。両手を地に付いて頭から転がった。正面に戻ったが、元通りに立ち上がる事が出来ず両足を広げて座った体勢になる。熊のぬいぐるみみたいだ。可愛らしい。モモカもその一連に身悶えをしながら笑いを堪えている。俺は我慢できずに笑ってしまった。俺が笑った事でロックがふくれっ面になった。そんなの追い打ちだぜ、ロックさん。

「ごめん、ごめん。こういう風に回って欲しかったんだ。」

 そう言って一回回って見せた。それを見てロックは「そ、そうかぁ・・・。」と言って恥ずかしそうに両手で顔を覆った。更に追い打ち。遂にモモカも堪え切れなくなり吹き出した。

 その後、俺とモモカでロックをなだめてあらためて回って全身を見せて貰った。あった。背中に。肩甲骨の間の毛が白く小さな三角形に。左右に一つづつ。そう天使の羽根のように。

 ロックは新たに取得可能になった技能を確認したり、上昇した身体能力を確かめる為に広くなった庭を走り回っていた。当然師匠の俺も付き合う。楽しそうで何より。モモカはそれを美しい歌声を響かせながら眺めていた。


 ・釣竿

 ロックが天使熊に進化した後、モモカとロックと一緒に南の森付近に出かけた。ノインに出会う前に行った、果物の群生地の他に同じ様な場所があるかもしれないと探索に出た。結果から言えば、見つからなかった。その途中一度だけ毒岩猪の団体さんに遭遇した。進化したロックの腕試しとなった。自分の力を確かめるように、そして油断せず対応していた。二頭を相手に問題なく立ち回り強烈な殴打と爪撃で撃破した。師匠の教えをちゃんと守っている、良い弟子だ。モモカが一頭をいとも簡単に氷漬けにした・・・合掌。俺が一頭を白兎流格闘術・パイルドライバーで仕留める。計四頭全て倒した。毎度の事だが謀らずも今晩の食料を確保した。


 その後木の実が収穫できる場所があったので皆で収穫した。その場所には今まで未発見だった植物を幾つか発見した。薬草としても食料としてもあまり適さないものだった。だがその中の一つ、木に絡みついて咲く朝顔。これが俺にとっては素晴らしいものだった。その名も紅綱朝顔べにつなあさがお。蔓が非常に丈夫で絡みついている木に食い込んでいる。私欲で悪戯に採取するのは憚られるが・・・と思ったが、隣の木に巻き付いているものは花自体は枯れている様だった。そちらならば罪悪感が大幅に減るので・・・と、お得意の言い訳をして蔓を引き剥がしに掛かる。本当に枯れているのかと疑いたくなる程丈夫な蔓だった。引き剥がそうとして掴んでいる俺の指に食い込んで、逆に俺の指の方が千切れるんじゃないかと思った。・・・始めからこうすれば良かった。アイテムボックスから小刀を取り出し、それを使って一箇所切断する。その切断した先を三周程手に巻き付け引っ張る。蔓を引きながら木の周りを何周かして根っこのところまで剥がす事が出来た。あれぇ、根っこから始めればよかったんじゃ・・・。

 根を引き抜き、切り落とす。何とか確保できた。

「イッスン様、一体何を・・・。」

 土塗れになってご満悦になっている俺に困惑した声でそう聞いた。そりゃそうだよなぁ・・・突然奇っ怪な行動をしてりゃそうなるよな。

「あはは、すまん。ずっと探してた素材が見つかったかもしれないと思ったら、つい興奮して・・・。」

 土塗れの手で頭の後ろを掻きながら答える。

「はあ・・・それは・・・よかった、ですね?」

「ああっ、これで念願の釣竿ができるかもしれないんだ。」

 俺は余程嬉しそうにしていたんだろう。子供みたいに笑う俺を見てモモカは嬉しそうに微笑んで「そうですか。」と言った。この時ロックは、我関せずでそこら中の植物を観察していた。通常運転。それはそれで凄いな。


 まあこの紅綱朝顔の蔓が釣り糸になった。青銅竹で竿を、魔物の骨で針を、これで何時か作ろうと思っていた釣竿が完成した。


 ・転職

 盗賊のLvが満了になったので、転職する事にした。100に到達する間に幾つか技能を取得した。罠感知、罠解除、消音行動。鍵開けを含め使い道が無い技能が多かった。ワイルドライフで罠は・・・罠を使うような魔物が俺達以外にいるとは考え難い。只、能力値の伸びに関してはその恩恵は大きかったと思う。消音行動と消音歩行のLvを共に10になると隠密という技能に統合進化した。これはかなりでかい。盗賊になった意味はあった。だが俺は今日盗賊から足を洗う。

 次は何にしようかと・・・あまり悩まなかった。次の職業は「武道家」。合気の・・・一度死して尚俺の中に残る合気の力を最大限に引き出すにはこれが最善と考えたからだ。


 ヤクモは法闘士から魔闘士に転職した。魔界獣から魔法の技能を取得可能になり選択可能になった職業。似たような職業だがその両方を極めようとするのは実にヤクモらしい選択だと思う。技能の選び方も攻守、近接、法術、魔法と満遍なく取得している様だ。詳しくは分からないが。いわゆる万能型。器用貧乏になりがちだがヤクモの場合はその平均点が高いように思う。つまり優秀な家臣ということだ。背中を預けるに不足なし。むしろ俺には勿体ない気がするよ。


 モモカは歌手うたいてに転職。どうしても歌に興味がありこの職業にしたらしい。歌にどの様な効果があるかは今の所何も分からないが、モモカが自分で考えた結果出した答えだ。俺に何の文句もない。只、モモカがアイドル化しているような気がするのだけが気になるといえば気になる。・・・聖女系アイドルか、なんてな。歌か・・・。元々歌は神聖なものだったとも言うから思ったより良い選択なのかもしれない。楽しみに見守ろう。・・・光る棒、作れないかな。あの馴鹿の角でも振るかな。


 スーアンは俺達の中で一番多くの職を経験している。法術士のLvが50を超えると属性に特化した法術士に転職できるようだ。始めは得意の土法術士から。風法術士、火法術士、水法術士と転職。しかもその全てをLv100まで上げきっている。何故こんな事が可能なのかと言うと、どうやら法術士系統で獲得経験値的なものに補正が掛かるようなのだ。土法術士の時に比べ水法術士は半分程の時間で上限になったそうだ。現在氷法術士、これももう少しで100に到達しそうだと言っていた。水を完遂している事も大きな補正を得る要因になっていそうだ。スーアン曰く、一応全系統を網羅してみようと思っているとのこと。使える法術が増えていくのと、順番に一つづつ項目を完了していくのが楽しいのだそうだ。その感覚は良く解る。気持ちいいよな、そういうの。今度、法術・魔法用の杖でも作ってあげようかな。・・・どうやって使うのかもちょっと知りたいかも。考えておこう。


 ジュウザは戦士から闘士に転職した。らしいっちゃらしいが俺にも戦士と闘士の差が良く判らない。別になっているんだからそれなりに意味があるのだろう・・・きっと。まぁ俺も武道家だもんな、格闘家との違いを聞かれても明確に説明するのは難しい。只、初期段階で武道家は項目に含まれていなかった。暫くしたら、話を聞いてみよう。・・・ちゃんと話せるか、現段階ではかなり怪しい。ちゃんと教えてくれようとはしてくれると思うが。ま、それも一興。ジュウザの感性で説明してくれたら、意外と新しい気付きがあるかもしれないしな。


 サイは・・・もはや分からん。気が付いたら測量士になっていた。そんな職業があった事さえ俺は知らなかった。おそらくサイの事だ、それも含め誰も選びそうに無い職業を選んだ可能性が高い。そんな事は無いか・・・。サイにはサイにしか分からない思惑があるんだろう。何かしらサイの中で理由があるんだろう。もしかしたら天才なのかもしれない。少なくともジュウザと比べると、そんなに単純に物事を考えている様には見えない。この先どんな職業を選ぶのか、それをもう少し見守ろう。そうしたら何か答えが見つかるかもしれない。全く理解できないかもしれないが。


 ハクは鑑定士に転職。これは納得の選択だ。むしろ鑑定士からにしたか、といった感じだ。まずは知る事、調べる事に特化する事を選択した。なるほどと感心する。実に堅実で計画性がある様に感じる。俺の場合はその時点での最善手はと考える。だがハクの場合は目標を達成する為に一つづつ丁寧に積み上げる印象だ。どちらが良いとか正しいとかは思わないが。ハクの様な考え方、生き方ができるのは俺から見ると羨ましく思える。そして尊敬もする。ハクの目指す先が今は何なのかわからないが、それが達成できることを心から願う。そしてその結果を楽しみに待とう。


 ミナは剣士になった。自分の取得した技能に合わせる形での選択だ。自分の力をどうしたら最大限活かす事ができるかを考えた結果の答えだ。ミナの事だ、冷静に自分の事を見つめ、今何ができて何が必要かを考えたのだろう。普段から自分と対話を繰り返しているのかもしれない。凄い事だと思う。・・・ミナに聞いた訳では無いので実際は全く違うかもしれないが。俺から見るとそう見えるという事だ。俺からはミナは哲学する剣士に見えるという事だ。今度、剣は無理かもしれないが、槍でも作って見るかな。道具を渡して良いものかと考えないでも無いが。トウオウが加わってその意識が少し薄れた。


 ロックは爪拳士なる格闘が主体の職業になっていた。これも知らないやつだ。どうやらトウオウ曰くロックの種族、いわゆる天使熊系の種族は希少種らしいからな。選択できる職業も特殊又は希少なものな可能性が高い。どちらにしても俺のこの手じゃ拳士はともかく爪は無理がありそうだが。だがロックは自分の長所を良く理解できているな。本当に優秀な弟子だ。


 フタバはまだ転職の機会は訪れていないようだ。現在は学者。頭の良さそうな響きだが、いわゆる学者先生的な事では無いようだ。読んで字の如く、学ぶ者ということらしい。知の探求者・・・というのは少し大袈裟か。フタバは何でも知りたいお年頃といった感じだな。此方もトウオウ曰く、森の叡智らしいからな。流石梟。俺の前世の世界でも梟は森の賢者だもんな。今はその途中・・・いや、駆け出しといった所だろう。それでも俺より50日程お姉ちゃんなんだけど。俺は何時まで経っても末っ子君主だ。今の所これが覆る事は無い。


 ノイン・・・キリノインは聖獣。聖獣って職業なのか・・・などとつまらないことは言わない。釈然としない部分もあるが、この世界のこの機能の中に、この制度の中に俺達を含め存在する以上、そういうものだと割り切るしか無い。むしろノインに転職する機会はあるのだろうか。


 トウオウは魔王。以下、ノインと同文。


 ・洋燈の魔王様の角灯

 トウオウは多分に文明の香りがする。魔法使いの被っている様なとんがり帽子、外套、胴体は洋燈、そして右手に角灯。気になったので話を聞いてみた。身体は産まれた時からこうだったそうだ。という事は600年程前にはこの世界に洋燈が存在していたと考えるのが妥当だろう。魔族と言ってもトウオウは精霊や妖精に近い存在らしいから、おそらく前世で言う所の付喪神に近い存在なんじゃないかと俺は考えている。あくまで俺の推察だが近からずも遠からずだと思う。

 帽子と外套は始めから着用していたらしい。なので自分でも身体の一部だと感じているらしい。外套はともかく帽子は俺の知っている帽子と変わらないので、着脱は可能だが産まれた時から被っているので外していると落ち着かないらしい。

 角灯だけは魔界のとある場所で見つけたんだと話してくれた。魔界では魔族や魔界獣問わず手当たり次第に狙われるので逃げ回っていたのだそうだ。ある時そこそこ強い魔族にしつこく追い回された時に、滅びた国の城に逃げ込んだのだそうだ。魔族にも国やら城やらあるんだと思ったが、今回それはちょっと横に置いておいた。その魔族は城ごと吹き飛ばす様な事はせず、追い詰める事を・・・というより正面から相手と対峙する事を信条としている類の者だったようだ。その逃げ込んだ城の中にあった、おそらく倉庫と思われる場所に無造作に置かれていたそうだ。一目見て気に入ったそうだ。親近感があったのか、呼ばれた様な気がしたのか、トウオウ自身にも良く判らないと言っていた。気が付いたら手に持っていたらしい。

 この角灯、只の角灯では無く魔道具なのだそうだ。実は魔法杖マジック・ワンド・・・どちらかというと魔法槌マジック・メイスなのだと。魔法を使う時にも使用するが、打撃武器としても強力なのだそうだ。変形するらしい・・・変形、だと?ふ、ふん、俺は基本は無手が信条だ。羨ましくなど・・・羨ましく、な・・・ど・・・。いいなぁ・・・俺もそういう物の一つでいいから、欲しいなぁ。たぶん魔界にいかないと無いだろうな。

 あ、その魔族は最後は諦めて何処かへ去ったらしい。


 ・ヤクモの進化

 ヤクモが三尾狐に進化した。迷わず三尾狐を選択していた。この選択肢が現れた時点で、そういう事かと理解したらしい。これが何処まで・・・自分の尾の数が増えるのかという答えを俺に尋ねなかった。まぁ聞かれたとしても、たぶんそうだろうという曖昧な推察しか答えられないが。絶対の自身を持って答えてはやれないのに、この道を進むように促してしまった罪悪感に似たような感覚は未だ消えない。ヤクモ自身は微塵も後悔はしていない様に見えるが。

 三本目の尾に持たせた属性は風。なぜ自分の現在取得していない属性ではなく得意な属性である風を選択したのかと尋ねてみた。風は得意分野ではあるが、自分の中ではまだちゃんと扱えていないと感じているからだと。それなのに扱う属性を増やすのは良くないと判断したのだそうだ。何処までも自分に厳しいやつだ。二本目の雷は主殿への憧れという、少しでも近づきたいという子供みたいな理由で、選んでしまったと照れくさそうに話していた。前にも聞いたが、あらためて言われると更に気恥ずかしい。それはともかく、もう少し不真面目・・・とまでは言わないが、楽しむ様な余裕があってもいいような気がする。これがヤクモの美点でもあるのだが。それでもジュウザの十分の一位の好奇心といい加減さがあってもいい気がするが。

 だが次の進化からは未取得の属性も含め選択する事になる。その時を楽しみに待とう、この愛すべき俺が最も信を置いている臣下の選び取る未来を。


 ・新技能

 得意技能・超能力の中から何か取得しようと考えていたが、それを遂に決めた。思念伝達に関しては必須と考え取得した。だからそれ以外の中からという事になる。俺が選択したのは浮遊レビテーション。ノインとトウオウと絆を結んだ事が取得可能になった理由だと思われる。この項目を発見した瞬間、迷う事無く取得を決断した。空を飛ぶのは浪漫だ。俺が兎だとかそういうのは関係ない、浪漫の方が勝る。俺は魔物で、ここはファンタジー世界。兎が飛んで何が悪い。南瓜だって飛んでいる。

 取得してすぐに庭に出て実験を開始した。子蛇三兄弟とモモカが見守る中、早速使用してみる。ロックはお庭でお昼寝中。浮いた。確かに浮いたが、地面から卓球の球一個分位だけ。・・・そうなるか。これじゃ未来から来た猫型ロボットよりは浮いているといった程度だ。一応想定の範囲内だ。決して負け惜しみでは無い。Lvの差でどんな違いが出るかも確認する為にLv1だけ取得した状態だからだ。だからこれでいい。それよりもまずはこのまま動けるのか、移動できるのかという事を知りたい。

 現在これ以上上昇する事はできない。水平移動は・・・できない。歩行は・・・できた。これはかなり大きい。技能を発動し続ける必要はあるが。そして移動しても地上からの高さは変わらない。次だ。一度解除して一休み。見守っていた小蛇達は楽しそうにしている。何よりである。期待していたより浮いていないと思ってはいるだろうがぁ。待っていたまえ、それはもう少し後だ。

 もう一度同じ様に浮く。今度はこのまま真上に跳び上がってみる。問題無く跳び上がる事ができた。技能を発動したまま降下する。先程の発射地点と同じ高さに着地する。感覚としては地上から決められた高さに見えない板が敷かれている様な感じか。これでもう一つ分かった事がある。技能の発動する高度は関係ないらしい。高い位置で技能を使ってもその高さに留まる事はできない。充分な成果が得られた。解除する。

 今度はLvを2にしてみる。どれ位差が出るのか楽しみだ。・・・狐火の時みたいにあまり差が出なかったらどうしよう。それでも別にいいか。間違いなく空中に浮けているのだから。浮いてみる。おおっ、今度は足の先がモモカの目線の辺りまで上昇した。良かった。先程の数倍の高さまで。さてここで問題になるのは、Lv1の時の高さとLv2の高さの間にも調節できるか、という事だ。上昇する時に瞬間移動みたいに現在の技能のLvの高さに移動する訳ではない。たぶん速度の調整はできると思うが、その途中で留まる事が可能なのか。もしくは一番高い位置から降下して、途中で止まる事ができるのか。解除する。

 サイの言った通り超能力系の技能はかなり燃費が悪い。一旦座り一休みしながら細石水苺を食べる。観覧中のお客様達にもドロップナッツを配る。ロックがナッツの香りに誘われて釣れた。ジュウザとサイを肩に乗せてハクやミナ、そしてモモカに感想と意見を伺う。

 肩のジュウザとサイに降りてもらい、もう一度浮遊実験を始める。腕を組んだまま上昇を開始する。ふふふ、まるで戦闘民族にでもなった気分だ。意図的に速度を調整しながらゆっくり浮かび上がる。モモカの胸の辺りで止まってみる。できた。すぐに解除して、もう一度最初から同じ手順を繰り返す。今度はそこから同じ速度でゆっくり降下してみる。これも成功。三回目は途中で留まり、そこから階段を登る様な動作で前に移動しながら最上段まで三段位だが登ってみる。できた・・・それにちょっと楽しい。そこから階段の上り下りを何回か繰り返してみる。三十代後半辺りからは階段運動はあまり好きじゃなかったんだけど、今は気にならない。若さって偉大だな。実験は終了する。

 これで知りたい事は大体分かった。空中を飛行するように移動する事はできない。少し残念だが。それはもしかしたらそのうち新しい技能が取得できるかもしれないしな。併用して使えばそれっぽい事ができる技能もあるかもしれないし。地上からの現在の技能のLvで到達できる高度まで浮遊できるようだ。つまり俺の現在の立ち位置に任意で俺しか立てない足場があるような印象か。充分だ。そこから俺の跳躍力分も高く跳び上がる事ができるしな。むしろ空中に踏ん張れる、蹴り飛ばせる足場が確保できるのはかなり大きい。これなら流星跳弾もより三次元的に使用できるかもしれない。・・・まぁ練習は必要だろうが。でも俺は満足だ。Lv6まで取得。スキルポイントが久々に枯渇寸前まで無くなった。

 新技能の実験は終了したので、子供達と稽古と遊びを兼ねて庭で追いかけっこをした。


 ・何でもない日

 ロックの爪撃を躱しながら思う。楽しいなと。ミナの拳や蹴りを受けながら思う。子らの成長とは嬉しいものだなと。ジュウザやハクを摑まえてぶん投げる。地面に落ちて腹が捩れるほど笑う顔を見て、俺も笑顔になる。それを見て呆れ顔のハク。そんな様子を離れた所で見ながら笑うヤクモやモモカやスーアンを見て思う。俺は幸せだと。ノインの角にとまり昼寝をしているフタバも、ジュウザ達を投げる仕事に笑いながら俺に加勢するトウオウ。こんな何でもない日常が俺は愛おしい。何時までもこんな日が続けばと思う。だがどうやらこのままではそういう訳にもいかないらしい。ならば俺はこの「何でもない日」を守る為にやれる事をやってみよう。その原因を探り、必要なら戦ってやる。今この世界に彼等家族以上に大切なものなど俺には無いのだから。


 ・銀胡桃

 すっかり忘れていた・・・。スーアン達が来た頃くらいから色々あって。広くなった家の端っこに置いてあるのを発見した。まぁ、俺がそこに置いたんだが・・・。久し振りに拾い上げる。何だか少し懐かしさすら感じる。手の中にあるそれを見つめる。あれから俺はそこそこ強くなったはずだ、今なら割れるかもしれない。久々にやってみるか。力を込めて銀胡桃を握り込む。・・・割れない。どうなってんだこの胡桃。どうやったら開くんだ。もしかして只の銀の塊なんじゃ・・・。違うよなぁ、植物鑑定できるんだもんな。

 どうしたものかと両手で捏ねくり回す。すると突然、カチリと音がして銀胡桃が開いた。

「え?」

『技能・鍵開けのLvが上昇しました。』Lv9

「嘘だぁ・・・。」



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