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30、あの日、僕は。

 これは少し昔の話。僕が、師匠と出会った頃の話。僕の忘れられない、一番嬉しかった日の話。


 僕は自分の事をお父さんとお母さんとお兄ちゃんと同じ小妖熊だと思っていた。なぜなら僕の思い出の最初からお父さんとお母さんとお兄ちゃんがいたからだ。でも僕はお母さんから産まれて無かった。ある日、お兄ちゃんが森の中で倒れている僕を見つけたらしい。小妖熊にはよくある事らしい。家族で行動し、家族で獲物を獲る。その時に失敗してやられてしまう事もある。そういう時に運良く・・・運が良いのかは解らないけど、生き残る事がある。そういうのをはぐれ小妖熊って言う。そんなはぐれ小妖熊を他の小妖熊が見かけると、自分の家族に入れてあげる決まり・・・師匠やハクに教えてもらった言葉だと、習性というのがあるみたいだ。僕はそんなはぐれ小妖熊だった。この頃の僕はそう思っていた。


 お父さん達と僕がちょっと違うなと思い始めた。僕はお父さん達みたいに戦えなかった。お父さん達みたいに戦いたいと思えなかった。戦うのが怖かった。そしてその獲物の肉を食べたいと思わなかった。木の実や草や果物しか食べたいと思わなかった。そんな僕を家族は「変わった子だ。」と笑って、優しくしてくれた。時々僕の為に果物狩りに連れて行ってくれた。僕はお父さんとお母さんとお兄ちゃんが大好きだった。


 ある日、僕たちは獲物を探す為に森の中を歩いていた。その時に、首が二つある犬みたいな、狼みたいな黒い魔物に出会ってしまった。出会った時の怖い感じと、あいつの目は今でも覚えている。そして今ならあいつが魔界獣で、オルトロスっていう奴だと分かるけど、この頃の僕には分からなかった。でもそいつが凄く強い事はすぐに分かった。

 お父さん達、小妖熊は戦うのが好きだ。相手が強そうな程、戦おうとする決ま・・・習性がある。戦う事が好きじゃない僕でも分かった、お父さん達でも勝てない事が。それでも戦うのが小妖熊の・・・本能というやつらしい。お父さんは僕に「隠れていろ。」と言って、お母さんとお兄ちゃんと一緒に飛び掛かって行った。僕は近くの藪の中に、震えながら隠れた。藪の隙間から外を見る。一番最初にお母さんがやられた。その次にお兄ちゃん。最後にお父さんがやられた。その魔界獣は、まるでお父さんが僕と遊んでくれている時みたいにお父さん達を殺した・・・。僕は怖くて怖くて、声も出なかった。涙でぐしゃぐしゃになって良く見えなかったけど、その魔界獣の目は忘れない。隠れている僕に絶対気が付いていた。その僕の方を見てあいつは、確かに笑ったんだ・・・。

 あいつはお父さん達を殺して満足したのか、藪の中で声を出す事もできないでいた僕に興味が無かったのか、分からないけど、僕を見逃した。僕はお父さんとお母さんとお兄ちゃんの近くで、涙が出なくなるまで、声が出なくなるまで、謝りながら泣いた。


 そこにどれくらいいたかは分からないけど、気が付いたら・・・たぶん次の日の朝だった。目を覚ますと、お父さん達の身体は魔界獣に殺された時のままそこにあった。また思い出して泣きそうになったけど、お父さん達が他の魔物に食べられちゃうのは嫌だと思った。だから悲しかったけど、一生懸命穴を掘って皆を埋めた。気が付いたら、手が傷だらけになって真っ赤になってた。お父さんを埋めながら、思った。僕が弱いからいけないんだ。お母さんを埋めながら、思った。強くなりたい。お兄ちゃんを埋めながら、思った。僕があいつをやっつけてやる。

 その日からの暫くの事はよく覚えてない。思い出そうとしても、頭に黒い煙が掛かっているみたいでよく思い出せない。思い出せる事は、僕より弱い魔物だったと思うけど、襲ってきたそいつを前とは違い、戦ってやっつけた事。それと、あの魔界獣を見つけて、僕が「殺してやる。」と思っていた事だ。今、その気持ちを思い出すと、凄く気持ちが悪い。この時の僕はきっと師匠に怒られるやつだったと思う。


 そんな悪い僕のまま、あの魔界獣を探すために森中を歩き回った。何日も何日も。途中で木の実や草を食べながら。魔物と戦いながら。夜になったら、藪や木の近くや穴の中に隠れて寝ながら。この時はまだ肉は食べていなかったけど。肉を食べるようになったのは、師匠に弟子入してから。師匠が「奪った命を無駄にしたくない。」と言ったのを聞いて、よく分からないけど僕もその方が良いと思って肉食の技能を取って、肉を食べるようになった。


 あれから何日経ったかは分からないけど、僕は遂にあいつを見つけた。間違いなくあの時の、家族を遊ぶみたいにして殺した、あの魔界獣だとすぐに分かった。・・・だけどその魔界獣は、死んでいた。頭の一つが身体から離れてたり、脚が失くなってたりしていた。

 その魔界獣を見て、僕は何も考えられなくなった・・・。何も考えないまま、そこに立っていた。僕が殺そうと思っていたやつが、他の誰かに殺されていた。きっと他の魔物に、こいつより強い何者かに殺された。それがどういう事か、この時の僕には分からなかった。だから僕はこの後何をして良いのか分からなくなった。やる事が無くなってしまった。そしたら全部が・・・嫌になった。歩く事も、食べる事も、生きる事も。なんだか良く分からなくて、何もしたくなくなちゃったんだ。


 その日から何日たっただろう。その日からずっと何もしたくないまま、何をしたら良いか分からないまま、ただ森の中をゆっくりと歩き続けた。お腹が減ったら何かを食べて、眠くなったら寝て。今思い出すと、食べる事と寝る事はやってた。生きる事はちゃんと続けていたんだなとキリノインに話した時に言われた。言われて、本当だと思った。

 そんなある日、僕は出会ったんだ。角の生えた白い兎に。


 その日も僕はただ森を歩き回っていた。何も考えてもいなかったから、自分が雹鳥に狙われていたのも気が付いていなかった。突然藪から何かが飛び出して来るような音がして、僕の前に何かが現れた。その音に驚いて顔を上げると、眼の前に白いものが立ってた。そしてその向こうに、こっちに向かって真っ直ぐ飛んで来る雹鳥が見えた。何が起きているのかよく分からなかった。眼の前の白い何かから、一匹の蛇が飛び出した・・・みたいに見えた。その蛇を見ると、その白い何かに向かって頷いていた。

「悪いな、これはただの好き嫌いだ。」

 白い何かが僕にそう言った。驚いてそっちを向くと、突然土が煙みたいになって、強い風が前から吹いた。目を閉じた。

「白兎流格闘術・風刃居合脚。」

 という声が前から聞こえた。けどよく見えなかった。風が前から、顔と身体を通り抜けてすぐに止んだので、怖かったけどゆっくり目を開けた。目を開けて前を見ると、そこには二本の足で立つ角の生えた白い兎がそこにいた。その右・・・左の空中に一ぴ・・・一羽の雹鳥が固まったみたいになってた。そのすぐ後にその雹鳥の首だけが先に地面に落ちた。僕の左で「すげぇ。」って声がした。僕もそう思った。その次のやつも凄すぎて何が起きたかよく分からなかった。

「白兎流格闘術・反天掌。」

 とその兎が言った事は分かったけど、気が付いたら雹鳥がもう一羽、上に飛ばされていた。

「すげぇだろ。俺の主なんだ。」

 左の小さい蛇が言った。僕は口を開けたままそっちを向いて頷いた。雹鳥が僕達から少し離れた、白い兎に氷の塊をたくさん飛ばして来た。その兎はその氷が何処に飛んでくるのか分かっているみたいに避けている。

「お前、良かったな。主は凄く強いから、もう大丈夫だ。・・・いいなぁ、俺も戦いたいなぁ。」

 また左にいる蛇が僕に話し掛けてきた。なんか、身体を、くねくねしながら。なんで戦いたいんだろう・・・それに蛇なのにどうやってあの雹鳥と戦おうとしているんだろうと思った。

「主、俺もやる。」

 突然、僕の左にいた蛇が大きな声を出した。驚いた。どうやって。白い兎もその蛇に聞いた。

「あれやって。ぐるぐる回すやつ。」

 ぐるぐる回すやつ。何の事だろう。その小さな蛇がそう言うと、白い兎はその蛇を自分の方に呼んだ。今から何をするのか分からなかったけど、なんだか少し楽しそうな気がした。白い兎は蛇と一緒に飛び上がった。もう少しで雹鳥と同じ位の高さまで飛んだ。兎ってあんなふうに木を登るんだと思った。あれは垂直歩行っていう技能だって教えてもらったけど、この時は凄いなと思った。

 雹鳥の近くまで行った兎は、あの小さな蛇の尻尾を掴んで本当にぐるぐる回して、雹鳥に向かって投げた・・・。なんとかハンマーって聞こえた。飛んでった蛇は雹鳥にくっついた。それから、噛みついた。それから、雹鳥と一緒に落っこちてきた。凄く大きな声を出して騒ぎながら。なんであの蛇は雹鳥を離さないんだろう・・・。地面に落ちるちょっと前に、兎が蛇の尻尾を掴んだ。

 空に残っている雹鳥に向かって兎が走り出した。もう一回木を登って。さっきより近くまで行ったけど、やっぱり少し届かない。どうするんだろう。そう思った時だった。兎の角から雷が出た。その雷が雹鳥に当った。雷に当った雹鳥は黒くなって地面に落っこちた。地面に戻ってきた兎はすぐにもう一回飛び上がった。それから、み、右足を前蹴りみたいに突き出して地面とはさむみたいに雹鳥の上に落ちてきた。・・・これで、全部やっつけた。凄い。僕と同じで空を飛べないのに。


 さっきあの蛇がやっつけた雹鳥を持ち上げて、こっちに近づいてきた。「これ、食べられるかな。」「主は駄目かも。」と話しながら。その後、その雹鳥から手を離すとその雹鳥が何処かに消えた。また僕の分からない事が起きた。

「すまんな。お前の獲物を取っちまって。」

 僕の近くまで来た白い兎はそう言った。僕はなんて言って良いか分からなくて、首を振った。今思うと「ありがとう。」とか「そんな事ない。」とか言えば良かったと思う。

「食うか、これ。」

 白い兎は別の雹鳥を僕に差し出して、そう言った。これにも僕は首を振った。ちゃんと「僕は食べない。」って言えば良かった。今もあまり得意じゃないけど、この頃の僕は今よりもお話をするのが上手じゃなかった。言葉が、思っていても上手く出てこない。

「そうか。じゃ、これは俺達が貰うな。」

 白い兎は持っていた雹鳥を、四角い穴?みたいなところへ入れた。今はそれがアイテムボックスっていう技能だと知ってる。でもこの時は凄く不思議だった。

「・・・じゃあこれ食うか。」

 と言って、今度はその不思議な四角いところから、何かを出した。その出したものを見ると、それは木の実だった。甘くて、美味しいやつ。僕の好きなやつだった。僕が頷くと、その木の実を僕にくれた。

「ちゃんと帰れるか。」

 そう聞かれて、ずっと家に帰っていなかった事を思い出した。それから、今日は家に帰ろうと思った。帰りたいと思った。だから、「うん。」と頷いた。

「何があったかは知らないが、諦めるなよ。強く生きろとは言わないが。」

 そう言われて、驚いた。この白い兎は、本当は僕の事を全部知っているんじゃないかと思った。そして「じゃあな。」って言って、蛇を肩に乗せて、右の方へ行った。なんだか夢みたいだった。もらった木の実を一つ食べてから、久しぶりに家に帰った。懐かしい匂いがした。・・・少し寂しかったけど、久しぶりに安心して眠れた気がする。いい夢を見た気がするけど、目が覚めたら覚えてなかった。


 あの日から、あの兎の事ばっかり思い出していた。凄かったな、強かったな、格好良かったな。きっとお父さん達よりも強い。たぶんあの魔界獣よりも。僕もあんなふうになりたいな、なれるかな。思い出して、真似して動いてみたりしたけど、全然上手くいかなかった。

 僕も強くなりたいと思った。ちょっと前みたいに、何もしたくないと思わなくなった。そう思うとお腹が減る。だから食べ物を探しに外に出た。近くの木の実のある所に行き、木の実を採ったりした。そんな日が何日かあった。そうしたら、少し元気が出てきた。元気が出てきたら、もう一度あの白い兎に会いたくなった。探して見ようと思った。そう思って、その日から森の中を歩き回った。夜はちゃんと此処に帰ってきて。


 その日も僕はあの日出会った兎を探して森の中を歩いていると、少し遠くの方でたくさんの声がするのが聞こえた。なんだろうと思って、少し怖かったけどゆっくり近づいた。見つからないように隠れながら、声の方を見ると、たくさんの魔物が戦ってた。驚いた。たくさんの森林鼠と戦っていたのが、尻尾が二本もある白い狐と、尻尾が普通の白い狐と、少し変わった形をした尻尾をした蛇と、角の生えた小さな蛇と、見たことのない蔦の様なものを飛ばしている蛇と、白い蛇と、尻尾で戦う白い蛇と、角の生えた白い兎。いた。

 戦いはすぐ終わった。兎達が勝った。しかもあの白い兎はほとんど何もしていなかった。この時は話している事が分かる事を不思議には思わなかった。それよりも、兎と狐と蛇が一緒にいるのが不思議だったからだ。兎達はやっつけた森林鼠をこの前みたいに何処かへ消して、移動し始めた。僕はそれに少し離れて付いて行った。またすぐに別の魔物たちに襲われていたけど、それもあっという間にやっつけていた。兎はまたほとんど何もしていなかった。あの狐達も蛇達も凄く強い。


 兎達は皆で歩きながら、いろんな話をしていた。知らなかった、兎はいろんな魔物に狙われるって。そういえばお父さんもそんな事を言っていたような気がするけど、お父さんも「肉を食べないお前にはあんまり関係ないか。」と言ってたから忘れてた。その兎は、自分が兎だから狙われる事を知って、凄く驚いていた。でもあんなに強いんだから大丈夫だろうと思った。皆で楽しそうに話しているのを見て、良いなと思った。


 その後、兎達は蛇の家に行った。あそこがジュウザやハク達の前まで住んでいた家だと、この前教えてサイが教えてくれた。その家に兎が這いつくばって入って行った。少しして出てきて狐達になにか言っていた。

 その後、兎は小さい蛇達に誘われて川に行った。そこで、そこに生えていた気の枝を取った。そしてその枝を齧った。あれは・・・お兄ちゃんが齧ったら駄目だって言ってたやつ。兎は大きな声を出して少し飛び上がって、四つん這いになっていた。大丈夫かなと思ったけど、すぐに起き上がって、その枝を集め始めた。なんでだろう・・・。でもなんだか楽しそうにその枝を集めていた。


 その川の近くで少し休んでから、また移動を始めた。僕もそれについて行った。結構長い時間歩いた。なんで僕はついて行ったんだろう。でも気が付いたらそうしてた。ずっと会いたかったあの兎に会えたから。


 小さい山の一番高い所に、大きな木が生えている所が見えて来た。あそこがあの白い兎達の家みたいだ。その山は半分しか無くて、その山が無くなっちゃってるところが、木や岩や藪で囲まれている。そこの空いてる所から兎達は入っていった。僕はその不思議な感じのする所の、その空いてる所に立って中を見ていた。そうしたら、白い兎が立ち止まって「はぁっ。」と息を吐いて、振り返った。

「しょうがない。・・・おい。俺に何か用か。」

 白い兎が、僕にそう言った。急に話し掛けられて、驚いた。上手く答えられないでいると、

「あぁっ、お前は・・・。主、あの時の。」

 と、角の生えた小さな蛇が言った。二匹の白い子蛇が何か話していたけど、僕はそれどころじゃなかった。

「お前・・・あの時の小妖熊。」

 覚えてた。嬉しい。

「元気そうで何よりだ。」

 本当は、「ありがとう。」とか「ごめんなさい。」とか言いたかったけど、上手く話せなくて、「・・・うん。」って頷くだけしか出来なかった。

 白いお姉さん狐と角の生えた子蛇が僕の事を話していた。

「で、俺に何か用があるんだろ。何だ。」

 白い兎が僕にそう聞いた。僕はまた上手く答えられなくて「あ、あの・・・え・・・っと・・・。」ってなった。恥ずかしくて、どんどん上手く話せなくなった。そしたら、

「ちゃんと聞くから。ゆっくりで良いから、落ち着いて話せ。」

 って、白い兎が少ししゃがんで僕の目を見ながら、優しい声で言った。そう言われて、少し平気になってきた。

「うん。・・・僕に、・・・を・・・えて・・・。」

 頑張って言ったけど、上手く言えなかった。

「・・・ん?」

 やっぱり聞こえなかったんだ。でもその白い兎は、優しく笑って頷いた。お父さんが僕の話を聞いてくれた時みたいに。だから僕も頑張って、もう一回言う。今度はちゃんと。初めて出会った時から思っていた事を。

「・・・僕に、戦い方を、教えて下さい。」

 言えた。

「なんですと。」

 あれ、頑張って言ったけど、声が小さかったのかな。ちゃんと言うんだ。だから、もう一度。さっきよりしっかり。

「僕に戦い方を教えて下さい。」

 今までで一番大きな声が出せたかもしれない。今度はちゃんと聞こえたはずだ。

「あ、いや、悪い。ちゃんと聞こえたぞ。」

 え・・・じゃあ、なんで。

「ただ、ちょっと予想外だったから、驚いただけだ。」

 そうだったのか、良かった。ちゃんと言えてた。

「あぁと、つまりお前は、俺に戦い方を教えて貰う為に此処までついてきたと。」

 白い兎は少し考えてから、そう言った。本当のことを言えば、たぶんそれだけじゃないと思うけど、嘘じゃないから、僕は「うん。」と返事をした。

「って事は、簡単に言うと俺に弟子入り弟子入りしたいって事だな。」

「でし?」

「そう、弟子だ。なんで戦い方を知りたいのか、教えてくれるか。」

 白い兎はゆっくり僕にそう聞いた。僕は強くなりたい理由を話した。そうしたらその兎は僕に「仇をとるために戦うな、恨みで戦うな。」と言った。・・・大丈夫だ。もうその魔界獣はいない。その事と強くなりたい事は違う事だ。だから僕は兎と約束した。

「そうか。その覚悟があるならいいぞ。」

「本当?」

 やった。嬉しい。

「ああ。・・・じゃあ、その前に名前だな。」

 と、白い兎は言った。名前ってなんだろう。僕はよくわからないまま「・・・うん?」と返事をした。必要だと言うから、きっとそうなんだと思った。名前を付けると何かいろんな事が起きるらしいけど、良くわからない。後で狐や蛇が教えてくれるらしい。


 白い兎は少しの間、上の方を向いて何か考えていた。

「そうだなぁ・・・「ロック」なんてどうかな。」

 僕の方を見てそう言った。「ロック」・・・。初めて聞いた時、なんだか凄く嬉しいと思った。勝手に「ロック。」と声に出ていた。

「嫌か?」

 と聞かれたので、僕は慌てて首を横に振った。

「ロック。・・・僕の名前。ロックがいい。」

 そう言うと、僕の身体が光った。その後、頭の中にいろんな言葉が出てきた。どうしたらいいか分からなくなりそうだったけど、皆が大丈夫だと言ってくれたから、大丈夫だった。


 その後師匠が「俺の事は師匠って呼べ。」って言った。

「うん・・・はい、師匠。」

 僕はこの時から師匠の弟子になった。この時も身体が光った。それから『特殊技能・師弟の絆を取得しました。』って、頭の中に来た。この時は良く分からなかったけど、後で師匠が教えてくれた。・・・それでも、よく分からなかった。僕にはまだむずかしい。そのうちちゃんと分かるようになりたいと思った。


 「・・・ようこそ、ロック。俺はイッスンだ。只の幸運星兎だ。」

「師匠の弟子のロックです。小天使熊です。」

 この時、師匠の名前がイッスンだと知った。そして僕が小妖熊じゃなくて小天使熊だと知った。その事は師匠達も驚いていた。その後、ヤクモ兄さん、モモカ姉さん、スーアン母さん、ジュウザ、サイ、ハク、ミナお姉ちゃんの名前を教えてもらった。皆僕の事を、師匠の弟子だけど、家族だと言ってくれた。もちろん師匠もそう言ってくれた。


 これは僕が師匠の弟子になった日の話。僕がロックになった日の話。僕が進化して天使熊エンジェル・ベアになる前の話。僕に新しい家族ができた日の話。忘れられない一番嬉しかった日の話。

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