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25、小天使


「随分ご機嫌だな、ジュウザ。」

「だってみんな一緒だから。」

「そうか。」

「ヤクモ兄ちゃんは楽しくないの。」

「気持ちは解らんでも無いが。あまりはしゃぎ過ぎて勝手に先に進むなよ。」

「分かってるよぉ。」

「まぁまぁ兄上。ジュウザもこの前の事で充分反省してましたから、その位で。」

「そうですね。あれだけ母上とモモカ姉さんに叱られたら、流石のジュウザ兄さんも堪えたと思いますよ。」

「あははっ。そうだな、ハク。俺なんかその場でモモカに怒られて、家帰ってからもう一回怒られた。」

「もうっ、笑い事ではありません。」

「本当ですよ、主様。それにジュウザにはいくら言っても言い過ぎではありません。」

「えぇっ、ひどいよ母上。」

「それにしてもジュウザ、なんで角なんか生やしちゃったんだよ。」

「良いでしょ、これ。主みたいでかっこいいでしょ。」

「あぁそう・・・別に良いけど。でもお前、蛇なのにそんな角があったら邪魔になるんじゃないか。」

「それが、そんな事無いんだなぁ。見てて・・・えい。」

「角が引っ込んだ。それどうなってんの兄ちゃん。」

「身体の中に仕舞ってるのか。」

「違うよ。縮んでるだけ。さっきのが一番大きいやつ。」

「なるほど。そりゃ便利だな。」

「ふむ。私も角生やしてみるかな・・・。」

「いや、ヤクモは止めてくれ。たぶん似合わない。」

「そうですか・・・。主殿がそう言われるなら止めておきましょう。」

「私もヤクモ兄さまは似合わないと思います。」

「そうね、ミナ。私も兄上には似合わないと思います。」

「わかった、わかった。・・・そんなに似合わんか。」

「あはは。そういうミナだって、ハクもだけど白くしちゃったじゃないか。」

「はい・・・それは・・・そうですけど。」

「なんでだ。」

「僕は白い方があるじ様やヤクモ兄さん、モモカ姉さんと行動する時に姿を隠し易いと思ったんです。」

「ほぅ、なるほど。敵から狙われ難いという事か。」

「それだけじゃないぞ、ヤクモ。敵に認識され難いって事は此方の攻撃の手段も隠せるって事だ。」

「流石あるじ様、そのとおりです。あるじ様達に乗っかったままになってはしまいますが。」

「いやいや、俺は悪くないと思うぞ。戦術としてはありだな。」

「そこまで考えていたとは、ハクは賢いな。」

「えぇ。私も我が息子ながら驚きです。」

「それにですね、技能で体色変化というのを取得しました。ちょっと見てて下さい。」

「おお。凄いな。」

「今の所、あまり複雑な色や一部だけ変えるみたいな事は出来ないけど。」

「地味な様だけど良い技能だな。これに気が付けるとは良い感性だな。」

「全くですね。私には無い発想ですが、良い参考になります。」

「えへへ。」

「で、ミナは。」

「え・・・ええと、それは・・・。」

「なんだ、言いたく無いのか。別に言いたく無いなら言わなくていいぞ。」

「いや・・・その・・・主さまみたいに、なりたくて。」

「俺みたいに。」

「・・・はい。」

「そうかぁ・・・。ありがとうなぁ。」

「少しでも近づきたくて・・・。」

「そうか、じゃあ俺もミナに憧れられる俺でいられるように頑張らないとな。」

「そんな・・・主さまは・・・。」

「それに白い蛇は縁起が良い、幸運の象徴だしな。・・・サイ、降りろ。お客さんだ。」


 ーーー


「俺の出番無かったな。」

「そうですねぇ。私も殆ど何もしておりません。ヤクモ殿の指示も的確で。」

「それもそうだけど、能力を見極めているとはいえその指示通りに動けるジュウザ達もたいしたものだ。なあ、ヤクモ。」

「大分良くなってきましたが、まだまだ精度が甘いですね。」

「兄上は少し厳し過ぎです。あの数を相手にちゃんと戦えていましたよ。」

「そうだな。少し厳しい気もするが、これ以上の相手だと不安があるのは確かだな。ま、ヤクモの厳しさは優しさの裏返しだよ。」

「モモカ殿、主様のおっしゃるとおりですよ。ヤクモ殿、何時もありがとうございます。」

「あぁ・・・うん、いや、とんでもない。私も日に日に成長する彼等に教えるのが楽しくて、ついつい厳しくなってしまいます。」

「あるじぃ、やっつけたよぉ。・・・はい、これ。」

「ああ、そうか。回収しないとな。にしても随分上手く動かせる様になったじゃないか。」

「そうかなぁ、でもまだ思った通りに動かせないんだ。」

「そりゃそうだ。まだ覚えたばっかりじゃないか。」

「うん。あるじ、また一緒に練習して。」

「おう。で、ミナのその尻尾はどうなってんだ。」

「あ、これですか・・・。技能・蛇剣術・・・です。変・・・ですか。」

「いや、全然。近距離戦闘用か・・・面白いなぁ。」

「面白い・・・ですか。」

「いや、そういう意味じゃなくて。ちゃんと自分で考えていて良いなって事だ。素晴らしい発想だと俺は思うぞ。」

「そうですね。僕もミナの考え方は凄いなと思います。サイ兄さんもだけど、僕も見習いたいです。」

「ハクよ、そんなに気する事は無いぞ。ハクにはハクの良さがある。」

「ヤクモ兄さん・・・。」

「そうですよ、ハク。少なくともサイの真似はしなくて良いと、私も思います。」

「えぇ、どうして、モモカ姉。」

「サイの考えてる事はイッスン様でもよく判らないと思いますよ。」

「ええっ、あるじ、そうなの。」

「そうだな。」

「がぁん。」

「ははは。良いじゃないか。俺の予想を上回ってるって事だ。凄いじゃないか。ハク、真似しなくて良いぞ。ハクはちゃんと理由を考えて、必要な技能を選んで取得してるんだろ。それで良いと思う。それはサイには無い良さだ。ま、だからと言ってサイが悪いって事でも無いんだけどな。」

「はい。」「そっかぁ、わかった。」

「主様、そろそろ参りましょうか。」

「そうだな。じゃ、皆行こうか。」

「では・・・此方です。」


 ーーー


「兄上。」

「ん・・・。」

「どういたしましょう。」

「そうだな・・・。主殿。・・・そうですか。」

「良いのでしょうか。」

「主殿もああおしゃっておられる。問題無いのではないか。」

「畏まりました、その様に。」

「あ、主。また来たよ、お客さん。」

「だな。」


 ーーー


「また俺の出番は無かった・・・。」

「申し訳ありません。」

「まぁ立ってるだけで終わるから良いけど。」

「今回は私もすることがありませんでした。」

「にしてもやたら狙われるよなぁ、俺。」

「ですね。そのおかげで我々は立ち回り易いですが。」

「そうですね。主様は私達が戦い易い様に動いて、誘導して下さっていますよね。助かっております。」

「まぁな・・・他にする事も無いしな。なんだか良く解らないけど、俺に向かって来るからな。」

「え。あるじ、知らないの?」

「主、ホントに言ってる?」

「え?何?・・・どうした、皆。俺、何か変なこと言った?」

「あぁ、そうか。あるじ様は知らないはずです。」

「・・・そうですね、主殿は知るはずは無いですね。」

「え・・・何を。」

「狙われる理由をです。」

「俺が狙われる理由があるの。何だよ、どんな理由だよ。」

「・・・それはですね。主殿がですね、白い兎だからです。」

「・・・なんですと。」

「少なくとも我々狐の中では、親から「兎を見つけたら迷わず捕らえよ。」と教わります。」

「なん・・・だと・・・。」

「私共、眼鏡蛇もその様に教えられておりました。」

「うん。俺も母上からそう教わった。」

「その中でも「白い兎を見かけたら絶対に逃すな。」と。」

「なぜどぅわっ!」

「・・・それはですね、イッスン様。兎を食せば必ず幸せになれると言われるからです。」

「その通りです。おそらくは殆どの魔物が親の代からそう教わっているのでは無いかと思われます。」

「そういう事か・・・。」

「そして、特に白い兎を食した者には必ず幸運が訪れると。『白兎、最も良し。』と。」

「はぁぁぁっ。まさか俺の狙われる理由が「兎だから。」だったとは・・・。しかも白い兎だもんなぁ、俺。」

「主様御自身が兎なのですから、知らなくて当然ですね。」

「でも主は父上や母上から、狙われるから気をつけろとか教えてもらわなかったの。」

「ジュウザ、失敬だぞ。」

「え・・・。」

「いや、ヤクモ。良いんだ。全く問題無い。」

「しかし・・・。」

「良いんだ。・・・あのなジュウザ。俺、親に会った事無いんだ。だから知らないんだ。」

「あぁ・・・ご、ごめんなさい・・・。」

「気にしなくて良いぞ。大丈夫だ、全く知らないから悲しくもないし。それに、俺には今、お前やヤクモ達がいる。ちゃんと家族がいるから全く問題無いぞ。」

「うん。」

「だから、ジュウザ。俺に色々教えてくれ。サイもハクもミナもな。」

「うん。」「わかったぁ。」「はい。」「・・・はい。」

「主殿。我々もおります。」

「そうです、主様。」

「そうですよ、イッスン様。」

「知ってるよ、そんな事。」


 ーーー


「いやぁ、しかしまさか兎だからだったとは・・・。」

「主様にしてみれば、確かに思ってもみない理由ですね。」

「そうなんだよなあ。自分で一番初めに排除した理由だからなぁ。」

「ええ。」

「でもなぁ、冷静に考えれば、食した相手の技能が取得できるんだから、あり得る話だよな・・・。」

「・・・あぁ、なるほど。そういう事ですか。」

「・・・どういう事ですか、ヤクモ兄さま。」

「それはな、ミナ・・・。」

「それはな、俺が幸運の持主だからだよ。」

「あっ・・・。」

「私も主様から名前を戴いて、暫くしてから「白兎、最も良し。」の本当の意味を理解しました。」

「あはは。あれ・・・って事は、俺に仕えちゃって良かったのか。不必要に狙われる奴を主にしちゃって。」

「滅相もない。」

「何をおしゃっているのですか、イッスン様。私達は仕える事が出来て幸せですよ。」

「そうか。それなら良いんだ。」

「そうですとも。我々は主殿に出会えた事が幸運だと思っております。」

「僕もそう思います。」

「・・・私も、です。」

「そっか・・・。それは俺もだけどな。でも・・・じゃあ「白兎、最も良し。」って事かな。」

「全くです。」

「まさに。」

「そうですね。」

「ははは。俺の幸運も大したもんだな。狙われる訳だ。」

「あ、主ぃ。そろそろだよぅ。」

「そろそろだよぉ。」

「そうですね、あそこの茂みを左に曲がれば、すぐです。」

「久し振りに帰ってきたなぁ。」

「そうだね、ジュウザ兄さん。・・・でもあるじ様はともかく、ヤクモ兄さんとモモカ姉さんには狭すぎるんじゃないですか。」

「そうかもしれませんねぇ。どういたしましょうか主様。」

「まあ良いんじゃないか。あくまで今回は場所の確認が目的だからな。必要なら中を掘って拡げれば良いんじゃないか。」

「じゃあじゃあ、今度皆で穴掘りの技能を取得して、やろうよ。」

「おう、それもありだな。穴掘り、悪くない。」

「面白そう。ボクも何か使えそうな技能がないか考えてみよう。」

「・・・また変な技能の使い方を考えているな。」

「そう言うな、ヤクモ。こういう自由な発想が新たな可能性を生むんだ。」

「そうかもしれませんね。私も様々な組み合わせで新たな可能性を探ってみるのも悪くないかもしれませんね。」

「良いですね、スーアン殿。今度御一緒に考えてみませんか。兄上もいかがですか。」

「うん。良いかもしれんな。」

「主ぃ、ここだよぅ。」

「ようこそ、ボク達の家に。」

「確かに、私達には些か入口が狭そうですね。主殿は通れそうですが。」

「入る事は出来そうだけど、立てないかもなぁ。」

「えぇ・・・入らないのぉ、主ぃ。」

「そうだなぁ、せっかくだから入ってみるか。」

「主様、入るんですか。あえてお止めはしませんが・・・。」

「脅かすなよお。ま、いざとなったらサイの鎖で足を引っ張って助けてくれ。」

「はぁい。」

「畏まりました。我々は外でお待ちしております。」

「じゃぁ、お邪魔します。」

「いらしゃいませ、あるじ。」


 ーーー


「兄上、ずっとついてきますね。」

「そうだな。だが、ただついてきているだけだ。敵意も殺意も感じない。問題は無かろうよ。」

「そうですが・・・目的も判りませんねぇ。」

「それがかえって不気味な気もしますよね、スーアン殿。」

「何かする気なら、もう少し気配を消そうとしたり姿を隠そうとしたりするのではないか。もしそのつもりだったとしたら、あまりに稚拙な気がするが。」

「そう言われれば確かにそうですね。」

「イッスン様は始めから気にしていないご様子でした。流石ですね。」

「ええ、全くです。」

「それにも関わらず、我々に対しても謙虚であられる。」

「はい、兄上。」

「そうですね。私共は良い主を得ました。」

「あぁ、そうだな。そんな主殿を我々で支えていこう。・・・何処までお役に立てるかは分からないが。」

「はい。」

「えぇ。」


 ーーー


「いやぁ、やっぱりちょっと狭めぇな。スーアン達には悪いけど、ちょっと掘らないと駄目かもな。」

「いえいえ、此方こそわざわざ来て頂いたのに申し訳ありません。」

「いや、無理を言ってるのは俺の方だ。このままが良いなら無理する必要は無いぞ。」

「いえ。この先、子供達も成長して身体も大きくなるでしょう。家を拡げるのは問題無い事と存じます。」

「じゃあ、今度皆で穴掘るか。」

「俺、やりたい。」

「ボクも。」

「・・・という事は、まずは出入り口を少し広げて、内側は下に掘り進むのが良さそうですね。あるじ様の家と同じくらいの広さにするとなると・・・。」

「ハクぅ、今度な、今度。後でゆっくり考えれば良いんじゃないかな。」

「はっ、すみません・・・。」

「あぁ、いや、悪い事じゃ無いんだけど。そんなに慌てなくても良いんじゃないかなと思っただけだ。」

「はい、あるじ様。」

「・・・でも、流石です。ハク兄さまは一瞬でそこまで考える事ができるなんて。」

「そうだな。私も見習わないとな。」

「そんな・・・ヤクモ兄さん・・・。」

「ジュウザは見習った方が良いかもな。」

「ええっ。」

「そうですね、ジュウザは少し見習った方が良いかもしれないわね。」

「母上まで・・・。」

「そうかなぁ。ジュウザ兄はこれで良い気がするけど。普通に考えてできる組み合わせじゃ無い事が起きそうだし。」

「サイぃ。」

「ま、ボクはジュウザ兄の真似はしないけど。」

「サイぃ。」

「あはは。個性だ、個性。同じ兄妹でも個性があって良いじゃないか。」

「主ぃ。」

「主様。あまりジュウザを甘やかさないで下さいませ。」

「まあまあ。スーアン、意外とジュウザみたいな奴が将来大物になるかもしれないぞ。」

「そういうものですかねぇ・・・。」

「・・・ジュウザ兄さまだと、本当に大きな眼鏡蛇になりそうですね。」

「あっははっ。そうかもなぁ。それも面白いじゃないか。」

「そうなると・・・穴掘り計画も見直さないといけませんねぇ。」

「ああっ、ハクまでぇ。」


 ーーー


「そうだ、あるじ。近くに川があるんだけど、そこにちょっと面白いものがあるんだ。行ってみない。」

「面白いもの。」

「あっ、あれかぁ。・・・主、行こうよ。」

「いいぞ、行こうか。」

「やったぁ。」

「・・・主さま、気を付けて下さい。」

「ん。ありがとな、ミナ。・・・ジュウザは顔に出ちゃってるからなぁ。まぁ、付き合ってやるさ。」

「・・・主さま、やさしい。」

「そうかな。よし、行こうか。ジュウザ、サイ、案内してくれ。」

「はぁい。じゃあ、出発ぅ。」

「あるじぃ、こっちだよぉ。」

「ごめんなさい、あるじ様。もう、ジュウザ兄さんもサイ兄さんもやめなよぉ・・・。」

「しかし、子供達は元気ですね。」

「まぁ、子供なんてこんなもんだろ。お前は違ったのか、ヤクモ。」

「・・・覚えていません。」

「兄上もあんな感じだったと思いますよ。・・・私の方があっちへ行ったり、こっちへ行ったりで大変だったと思いますが。」

「そうだな。モモカはお転婆だった。」

「お恥ずかしい。」

「私の方が先に生まれたので、少しだけ早く落ち着いただけだと思うがな。父上も母上も大変だったであろうな。」

「・・・そうですね。」

「親の立場の私から言わせて頂ければ、それも楽しかったりするのですよ。」

「ふふ。それは今、我々も感じられている事かもしれないな。」

「そうですね、兄上。」


 ーーー


「ここだよ。ね、面白いでしょ。」

「おおっ。マングローブかぁ。」

「これは・・・不思議な光景ですね。・・・主殿、マングローブとはあの植物の名前ですか。」

「うぅん。ちょっと違うかなぁ。・・・簡単に説明すると、ああいう風に水の中から宙に浮いてるみたいに生えている木が群生してる場所、みたいな感じかなぁ。」

「なるほど。」

「流石あるじ様。いろんな事を知っていますね。凄いなぁ。」

「俺も詳しくは知らないんだけどな。本物を見たのは初めてだし。」

「・・・では何故、主さまはご存知何ですか。」

「ふっ・・・それはなぁ、ミナ。俺は生まれながらに様々な知識を持っているのさ。ははは。」

「そうなのですね。」

「主殿ならそれぐらいの事があっても、不思議ではありません。」

「おい、お前達。あんまり真に受けるなよ。」

「しかし、全て嘘という事も無いのですよね、イッスン様。」

「ああ・・・。何時かちゃんと話すよ・・・。」

「はい。」

「ねぇねぇ、主。あの木の枝、切って。」

「お。あの下の方ので良いのか。」

「うん。」

「よし。じゃあちょっと待ってろ。あの小刀、試してみるか。・・・よっと。これで良いのか。」

「うん。でね、その枝の端っこを齧ってみて。」

「ええっ・・・大丈夫なのかぁ。」

「毒は無いです、毒は・・・。」

「そうか。なら、やってみるか。切った方で良いのか。」

「うん。思いっきり。」

「よし。せぇの。・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁっ。」

「ぎゃははははははっ。」「あっははははははっ。」

「大丈夫ですか、主殿。」

「イッスン様。」

「目、目がぁ・・・。は、鼻がぁ・・・。冷たい・・・って言うより、痛い。」

「あるじ様・・・それだけで特に害は無いんです。兄さん達が、ごめんなさい。」

「あぁ、驚いた。でも・・・悪くない。」

「え。」

「なんだ、これ。植物鑑定・・・メントグローブか。なるほど、なるほど。・・・いいね。何本か持って帰ろう。」

「あれぇ・・・思ったのと違う・・・。」

「こら、ジュウザ、サイ。ちゃんと主様に謝りなさい。」

「はいぃぃぃ。」「はいぃ。」

「主、ごめんなさい・・・。」

「あるじ、ごめんなさい・・・。」

「・・・気にすんな。害が無い事は知ってたんだよな。・・・ならいい。怪我したり毒があったりしないなら許す。それから、俺以外にこういう悪戯はするなよ。」

「はい。」「はい。」

「・・・主さまは、身体は小さいのに器が大きい。」

「本当に主様は、お優しい。」

「にしても、鼻がまだスースーするぜぇ。」

「しかし主殿、何故その枝を集めておられるのですか。」

「それは・・・ちょっとねぇ。ふふふ。」

「悪い顔になってますよ。」

「これではジュウザとサイの事を言えませんよ、イッスン様。」

「ちょっと実験してみてから説明するよぉ。ふふふ。」

「分りました。では、そろそろ帰りましょう。」

「そうだな。途中で木の実のところに寄って帰ろうか。」


 ーーー


「・・・はぁぁぁっ。とうとう此処までついてきたか・・・。」

「そうですね。どういたしましょう、主殿。」

「しょうがない。・・・おい。俺に何か用か。」

「・・・・・・。」

「あぁっ、お前は・・・。主、あの時の。」

「何だ、此奴を知っているのか。と言うより、お前達も気が付いていたのか。」

「・・・最初の森林鼠と戦っていた時にはいました。」

「ええっ。そうだったんですか・・・僕はその後少ししてから気が付きました。ミナは凄いなぁ。」

「お前・・・あの時の小妖熊。元気そうで何よりだ。」

「・・・うん。」

「イッスン様、お知り合いですか。」

「あのね、モモカ姉ちゃん。雹鳥から主が助けた小さい熊だよ。」

「そうでしたか。」

「で、俺に何か用があるんだろ。何だ。」

「あ、あの・・・え・・・っと・・・。」

「ちゃんと聞くから。ゆっくりで良いから、落ち着いて話せ。」

「うん。・・・僕に・・・を・・・えて・・・。」

「・・・ん?」

「・・・僕に、戦い方を、教えて下さい。」

「なんですと。」

「僕に戦い方を教えて下さい。」

「あ、いや、悪い。ちゃんと聞こえたぞ。ただ、ちょっと予想外だったから、驚いただけだ。」

「これは私も予想外でした・・・。」

「あぁと、つまりお前は、俺に戦い方を教えて貰う為に此処までついてきたと。」

「うん。」

「って事は、簡単に言うと俺に弟子入りしたいって事だな。」

「でし?」

「そう、弟子だ。なんで戦い方を知りたいのか、教えてくれるか。」

「・・・家族を・・・守れなかった・・・。一緒に・・・戦えなかった。だから・・・。」

「そうかぁ。なるほどな・・・。じゃあ、強くなって敵討ちでもするつもりか。」

「ううん、違う。・・・生きる為に、強くなりたい。・・・守ってくれた、お父さんやお母さんやお兄ちゃんの為に、生きたい。」

「そっか。生きる為か。」

「うん。」

「主殿、私は良いと思います。此奴は嘘をついているようには思えません。」

「イッスン様、私も賛成です。悪い気配は感じません。」

「私は主様のお決めになる事に異論はございません。」

「おう。じゃあ一つだけ。もし強くなって、家族の仇に出会った時、恨みで戦わないと誓えるか。その力を復讐に使わないと約束できるか。」

「うん。・・・本当は、できることなら戦いたくない・・・。」

「そうか。その覚悟があるなら。いいぞ。」

「本当?」

「ああ。・・・じゃあ、その前に名前だな。」

「名前?」

「そうだ。ちょっと色々起こるから、詳しい事は後で皆に教えて貰え。」

「・・・うん?」

「そうだなぁ・・・「ロック」なんてどうかな。」

「ロック。」

「嫌か?」

「ロック。・・・僕の名前。ロックがいい。」

「よし。じゃあ今からお前は「ロック」だ。よろしくな、ロック。」

「うん。・・・え、何。」

「落ち着け。すぐ終わる。その後は皆でゆっくり説明するから大丈夫だ。」

「・・・消えた。」

「そして今からロックは俺の弟子だ。俺の事は師匠って呼べ。」

「うん・・・はい、師匠。」

『特殊技能・師弟の絆を取得しました。』

「おおっ。」

「どうしたの、あるじ。」

「おお。・・・後で教える。新しい技能を取得した。」

「うん、わかった。」

「よし、皆、中入れぇ。食事しながら、ゆっくり話そう。・・・ようこそ、ロック。俺はイッスンだ、只の幸運星兎だ。」

「師匠の弟子のロックです。小天使熊リトル・エンジェル・ベアです。」

「!?」

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