24、新星
声も出なかった。そのまま仰向けに大地に落ちる。その衝撃すらあまりの出来事に痛みを感じなかった。遠くでモモカの悲鳴が聞こえたような気がする。背中に翠玉馴鹿が近づいてくる振動が伝わってくる、勝ちを確信した様に余裕たっぷりにゆっくりとした振動が。おそらく間違いは無いだろう。
モモカが何かを叫びながら近づいて来ている。取り乱しているのと殆ど泣き声なのと薄れゆく意識でよく聞き取れない。
「来る・・・な。は・・・や、く、離れ・・・ろ・・・。」
最後の力を振り絞りモモカに伝える。・・・言っても聞かない事も分かっていたが。何度も俺の名を呼び、癒しの法術を力の限り掛けている。その効果もあって少し意識が戻ってくる。傷口は塞がり血は止まったが、流石に失った腕は戻らない。そして立ち上がるのも難しそうだ。
「モモカ、ありがとう。でも、もういい。早く離れろ。お前達だけでも逃げてくれ。」
俺の最後の願いにも、モモカは歯を食いしばり涙目で首を横に振る。そんな俺達に大きな影が覆い被さる。モモカは振り返りその影の主を見上げる。翠玉馴鹿は勝ち誇った様にこちらを見下ろしている。右の前脚をゆっくりと振り上げる。二度目の生もこれまでか。そう覚悟してみても、走馬灯すら見えない。まぁ、走馬灯が見える程長生きしてないし、前世の思い出も殆ど何処かへ置き忘れてきたみたいだしな。一年にも満たないが、この世界ともさよならか。
「モモカ姉、伏せて。」
モモカの後方から声がする。・・・この声は、サイ!?その声に反射的にモモカはその身を伏せる。
「眼鏡蛇流鎖闘術・鎖蛇。」
仰向けのままの俺とモモカの上を二本の鎖が通過する。二本の鎖は脚を振り上げた翠玉馴鹿を強烈に殴打する。その一撃に怯み体勢を崩し後方へと二三歩蹌踉めく。続いてハクの声がする。
「連鎖捕縛。」
翠玉馴鹿の脚元から数本の鎖が出現しその四本の脚を絡め取る。俺達と翠玉馴鹿にできた間に一陣の白い疾風が滑り込む。
「白狐流法闘術・炎雷尾槍。」
重なった二本の尻尾から、雷を纏った円錐状の炎が身動きが出来ない翠玉馴鹿を刺し貫く。右の鎖骨から右の肩甲骨へ通り抜けた。その直後、サイの後方辺りからもう一つ声が上がる。
「眼鏡蛇流法術・蛇氷・氷塊撃。」
離れた場所で大きな音と大斧箆鹿の断末魔が聞こえた。スーアンか、良い判断だ。
「主殿、遅くなりました。・・・!?その御姿は、大丈夫ですか。」
ヤクモは俺の姿を見るなり、真っ青になり声を震わせた。
「いや、間に合った。そしてたった今、大丈夫になった。」
自分自身に兎の祝福を掛け、立ち上がる。
「全員、距離を取れ。離れるぞ。」
俺の指示に従い間合いを取る。
「皆、助かった。・・・でもどうして。」
「私とモモカはこの前、思念伝達という技能を取得しまして。」
「なるほど、そういう事か。」
「主様、腕が・・・。」
近づいて来たスーアンが悲鳴にも似た声で言う。
「問題無い。だから少し時間を稼いでくれ。」
「・・・そういう事ですか。お任せ下さい。」
ヤクモは察しがいいな、良すぎるくらいだ。頭を上げて皆を見渡し一呼吸する。
「スーアン、主殿の護衛を。モモカはサイと共に左側に回り込み遠距離から牽制。ハクは此処に残り幻影で援護を。ミナは結界を張るスーアン殿とハクの護衛。ジュウザは私と一緒に来い。」
素早く指示を出す。各々返事をし配置に付く。子蛇達の表情も引き締まる。だがモモカだけが不安そうに此方を見ている。
「モモカ、大丈夫だ。主殿は進化をなさるおつもりだ。その時間を我々で稼ぐ。」
見兼ねてヤクモが説明する。その言葉を聞いてやっと表情に明るさが戻る。ジュウザとサイは目を輝かせ此方を向いた。俺はモモカの目を見て、微笑みながら頷いた。
「頼むぞ、皆。少しだけ頑張ってくれ。勿論、やっつけてくれても構わないが。無理しなくていいからな。」
先程より明るい返事が一斉に返ってきた。頼もしい。
「では始めようか。いくぞ。」
ヤクモが号令を掛ける。・・・台詞を取られたな。
ヤクモとモモカがお供を背中に乗せて左右に弾ける様に飛び出す。それを見送るとスーアンが結界を張る。半球状の結界を三重に。何時もなら観察してしまうところだが、今はそんな暇は無い。早急に種族進化の儀式に取り掛かる。
『種族進化を開始します。』
進化する種族を選択して下さい。
▷幸運蹴兎(角)
幸運拳兎(角)
幸運耳飛兎(角)
幸運刀角兎
幸運星兎(角)
じっくり検討する時間も無いが、前々からこれにしようと決めていた。決定する前にセッテさんにお願いする。
「説明等は後程ゆっくり聞くので、今は省略して貰ってもよろしいですか。」
『是、肯定します。』
「無理を言って申し訳ありません。」
『とんでもございません。』
「それでは、幸運星兎(角)に進化したいと思います。」
『了解しました。幸運星兎(角)への種族進化を開始します。欠損部位の修復も同時に行います。よろしいですか。』
「ぜひ。」
問答が終わると身体が光りだす。粒子が集まり消し飛んだ部分が元の形を取り戻す。そして儀式の終わりを告げるように光が徐々に淡くなって消える。自分の目で身体を見回す。特に大きな変化は無いようだ、少なくとも俺自身で確認できる箇所には。そして確かめる様に新品の左腕を二回回し、左手を二回握った。問題無し。
「スーアン、どっか変わったかな。」
「そうですね・・・特に変わった様には見えません。」
こんな状況なのでゆっくりと眺めた訳では無いだろうが、変化が見受けられず申し訳無さそうに答えた。本当ならここで新技能の一つも取得したいところだが、とりあえず能力値だけ確認する。
「主さま。」
画面を開いた俺にミナが話し掛けてきた。
「ん?どうした。」
画面から目を離しミナの方を向く。
「主さま、目の中に星が。」
「なんですと。」
そんな変化が。思っても見ない変化だな。それにどんな意味があるのかしら。
「そうか、後で確認してみよう。でもよく気が付いたな。」
そう笑顔で言うと、ミナは恥ずかしそうに顔を逸らした。あらら。開きっぱなしの画面に視点を戻す。嘘みたいに能力が跳ね上がっている。呆気に取られた意識を、首を振って呼び戻す。画面を閉じ、戦場に目を向ける。
左右に別れた白狐の兄妹はなるべく反撃の機会を与えないように攻撃を繰り出している。それでも絶え間なくという訳にもいかないが、その間を埋めるようにサイの鎖と飛針と蛇眼が飛び交う。そして思い出したように極稀にジュウザが毒牙で噛み付いている。素晴らしい連携だな。特に忘れた頃にやってくるジュウザの毒牙が良い・・・非常にいやらしい。おそらくさっき言っていた、思念伝達って言う技能で意志の疎通をしているのだろう。放っておいてもなんとかなりそうな気もするが、あの翠玉馴鹿は赤目熊より巨体だ。眼鏡蛇の毒の回りも遅いはずだ、それに耐性がある可能性もある。ヤクモやモモカの攻撃では決め手を欠くか。強力な攻撃を繰り出すにも少なからず時間が必要だろう。それにヤクモの事だ、律儀に俺の頼み事を遂行する事に注力しているのだろう。
「近づくまでの時間で良い、「霧」いけるか。」
スーアンは「お任せ下さい。」と微笑む。頷き、細石水苺をスーアンとハクに渡す。ハクとミナの頭をひと撫でして「ちょっと行ってくる。」と声を掛け「後は任せろ。」と付け加える。跳ね上がった能力値とは別に、理由の見つからない自信がある。進化前まではあった恐怖心がどういう訳か何処かへ消えた。全く無くなった訳でもないけれど、なぜか勝てると確信できる。
「じゃあ、終わりを始めようか。」
そう言って走り出す。それと同時に翠玉馴鹿の周りが白み始める。戦場の変化に気づきヤクモとモモカは素早くサイとジュウザを背に乗せ、俺に役目を譲る。霧に包まれ此方からも翠玉馴鹿の姿が見えなくなる。その霧の塊に跳ね上がり、まさしく飛び込む。頭の後ろにアイテムボックスの口を開き、両腕を振り上げ突っ込む。左右の手で一本ずつ武器を掴む。霧の輪の内側へ、狙い通り翠玉馴鹿の顔の正面付近へと飛び出す。掴んだ両の獲物を引き抜きながら勢いよく翠玉馴鹿へと振り降ろす。
ーー《白兎流格闘術・影技・流髭交鎖》ーー
鞭の様に撓り交差しながら襲い掛かる鎖は、片方は鼻先を捉えもう片方は肩から首、そして胸にかけてを一閃した。着地して相手の身体の左へ二本の鎖を引き摺り回り込んだ。息を吸い込む。
ーー《白兎流格闘術・影技・乱気流》ーー
乱気流という名の二本の鎖による滅多打ちだ。俺の奇襲が上手くいったのもあるが、ヤクモ達が削ってくれたおかげで相手の動きもかなり鈍っていたので、殆ど無抵抗に鎖が当たる。とにかく息の続く限り腕を振る。そして翠玉馴鹿は膝を突き、遂にその巨体を地に伏した。・・・だが、まだ終わった訳では無い。滅多打ちを止め、地に伏した翠玉馴鹿の背に飛び乗る。間近で見る翠玉色の角は大変立派で、少し圧倒される。左右の角にそれぞれ一本づつ鎖を絡ませる。鎖を強く握り締め、力の限り高く跳び上がる。その力に伏していた翠玉馴鹿は引き上げられ、強制的に立ち上がらされる。更に少しだけ浮く。身を屈めれば脚の下を通れるぐらいだが。力一杯引かれた鎖を自分の方へと引き寄せる様にしながら己の身体をY字型の投射武器の球の様に、翠玉馴鹿の後頭部へ向けて跳び出し鎖を離す。これで決める。右の膝を後頭部へ激突させ左右の角の根元を掴む。ここで新技能を使用する。
「重力魔法・重加速。」
落下速度を増すだけの単純な魔法だ。だが総重量の小さい俺にとってはこれ以上無い位重要な、そして画期的な、まさしく魔法。加速度を増し地面へ向けて翠玉馴鹿の頭部を降下させる。これぞテキサスブロンコの真骨頂、沈めぇ。
「カァァァフ・ブランディング。」
ーー《白兎流格闘術・カーフ・ブランディング》ーー
翠玉馴鹿の頭部は強烈に叩きつけられ、低く重い音を響かせ辺りの霧を吹き飛ばす程の衝撃で大地を震わせた。告知を聞くまでもない、間違い無い手応えが身体に伝わってきた。告知を聞き、角から手を離し今までで一番の強敵の頭の上から飛び降りた。そして深呼吸を一つした。
歓声が上がる。その歓声に顔を上げると、皆が笑顔で駆け寄って来るのが見えた。・・・うお、凄い勢いだな。
「ちょ、ちょっと待てっ・・・。」
間に合わなかった。ジュウザとサイの身体が目の前に飛んできた所までは確認できたが、その後はもう分からなかった。スーアンとヤクモは寸前で思いとどまったようだが、それ以外の皆に揉みくちゃにされた。重ひ。
「狼狽えるな、小僧共っ。」
両腕を天空に向けて突き上げながら立ち上がり、全員を弾き飛ばす。モモカとミナは咄嗟に一歩引き被害を免れていたが、子蛇三兄弟は仰向けに落っこちた。目を何回か高速で瞬いて、笑い出した。意外だったのはこの塊の中にミナが参加していた事だ、モモカはなんとなく判らんでもない。
「今回はかなり危なかった、助かったよ。ありがとう。」
皆にきちんと姿勢を正して頭を下げる。今回ばかりは俺だけでは確実に命を落していただろう。従者に、仲間に・・・いや家族に感謝を。そして出会えた事にも感謝を。俺の謝意にそれぞれ照れたり恐縮したり様々に個性的な反応をした。
「間に合って何よりです。しかし進化を回復に利用するとは。」
ヤクモは感心したように言った。
「まぁ、選択肢としてはこんな使い方も出来ると思って。でもやっぱり単独ではだいぶ無理があるな。無防備過ぎるし、一瞬とはいえ時間が掛かるからな。」
「確かにそうかもしれませんね。でも参考になります。」
「使うような事態にならないのが一番だけどな。」
「おっしゃるとおりです。」
「それにしても今回は、本当に危なかった・・・。あぁ疲れた。ちょっと一休みしてから帰ろう。」
そう言ってひとまずその場に腰を降ろす。さて、お礼と回復の為に木の実を振舞おうとアイテムボックスの中身を物色しようとしていた時だった。目の前に怒りと悲しみの入り混じった表情のモモカの顔が現れた。
「イ・ッ・ス・ン・さ・ま、本当に心配したんですからね・・・。」
から始まる長いお説教が早口で続いた。最初に「はい。」と引き攣った返事をした後は暫く口の開閉を繰り返し、更にその後は正座で俯き手を膝の上に置いたまま話を聞き続けた。最後に「わかりましたか。」と聞かれ、何時になく弱々しく「はい。」と答えた。そして「本当に申し訳ありませんでした。」と、わが祖国に古来より伝わる最上級の謝罪の姿勢を取り、深々と頭を下げる。危なく角が地面に突き刺さってしまうところだった。
「ちゃんと反省してるんですね。」
「はい。」
「じゃあ今回は許します。」
やっとお許しが出た。恐る恐る顔を上げると、涙目で笑顔のモモカがそこにいた。・・・反省だな。そして帰るにはもう少し休む時間が必要な様だ。足が痺れて暫く立てそうにない。この事は決してあの小僧共に知られる訳にはいかない、格好の餌食だ。眉間に皺を寄せて右の眉だけを上げて、意図的に近寄り難い表情を創り出す。俺に眉毛があるかは怪しいが。
にしても流石Lv1000を超える魔物、種族進化したての俺のLvが一気に300を超えた。まぁ俺の上限も1260まで上昇してはいるが。おそらくこの分だと子蛇達もかなりLvが上昇したはずだ、進化する日も近いかな。自分の事でもないのに、なんだか楽しみだ。スキルポイントも大量に取得出来たが、此方も上限が1万4千を超えだいぶ余裕が出来た。・・・が、それでも少し消費しておいた方が良い位は所持している。馴鹿肉と箆鹿肉を食したら技能を取得しよう。
そして遂に格闘家のLvが上限に達した。おそらく翠玉馴鹿を撃破する前に達していたと思われる。緊急時につきセッテさんが気を利かせて報告を省略したものと思われる。そして後程種族進化の諸々の確認の際に一緒にという予定だったのだろう。『ご明察です。差し出がましかったでしょうか。』とんでもございません。ご配慮に感謝します。『恐れ入ります。』何時もありがとう。貧乏性の俺としては些か勿体ない事をした様な気もするが、命には変えられない。・・・今回、一度完全に諦めたが。反省だな、あんなに最後まで諦めないと誓ったのに。おっと。反省は帰ってからにしよう。
俺、転職しようと思うんだ。『了解しました。職業を選択して下さい。』ここであらためて一覧を見て気が付いた事がある。始めから気になっていた事、疑問に感じていた事の答えが見つかった。「魔法使い」という職業が存在しているのに「魔法」ではなく「法術」という技能しか取得出来ない事に。だが「魔法」は存在した。この世界では「魔法」とは「魔界の法術」の事を指すらしい。少なくとも俺達魔物にとっては。で、俺は魔法使いになろうと思っている訳では無いのだが。俺、盗賊になろうと思う。『承認しました。職業を盗賊に変更しました。』毎度の事ながらあっさりしてるな。・・・盗賊と言っても山賊の様な野党になろうと言うのでは無く、いわゆる冒険者的な盗賊だ。基本職の一つで、ゲーム創世記の白と黒の小さな四角形だけの頃から存在する由緒正しき職業だ。探索や察知、隠蔽などの技能が取得出来るのではないかという期待と、能力値への補正と成長率の加算を考慮した結果だ。俺、盗賊になったよ。『是、肯定します。』あぁ、うん。でも盗賊って胸を張ってなったよと言い難い響きだよな。『職業を変更しますか。』いや、そういう事じゃなくて。『承知しています。』ぐぅ・・・ありがとう。『恐れ入ります。』はい。
足の痺れも治まった。立ち上がり帰り支度を始める。皆で仕留めた馴鹿と箆鹿を一頭づつ回収していく。この作業中、子蛇三兄弟が一緒に着いて来た。ジュウザとサイは忙しなく動き回っていた。こんなに無駄に動き回って疲れないのかと心配になるよ。ハクは見た事の無い魔物達を興味深そうに観察していた。回収無する前に「もう大丈夫か。」と確認した。ハクのお許しが出てから回収した。解体する前にもう一度聞いてみる事にしよう。実はこの時に倒した魔物が、回収した素材が、特に角がこの先大きく役に立つ事になった。
全ての回収を終え皆に「帰ろう。」と伝えた。・・・のだが、だいぶ派手に逃走劇を繰り広げた結果、此処が何処だかよく判らない。帰巣本能を全開で使用する。お、二箇所感じる。ただ、どちらが近いかまでは判らない。どうするかな。
「ヤクモ、どっちが近いかな。」
「そうですね・・・どちらとも言い難いですかね。」
なるほど技能もほぼ正確な反応だったという事が解った。じゃあ二択で困った時は。
「モモカはどっちが良いと思う。」
「今日はイッスン様の方が良い気がします。」
急に振られたにも関わらず、即答だな。その事に俺の方が驚く。
「そうか、じゃあそうしよう。」
という事は此処からだと南方面だな。暫くヤクモ邸から北には近づかないようにしようと固く誓い、激戦の地を後にする。
「ところで、サイ。あの鎖どうやって飛ばしてたんだ。」
帰り道、聞いてみた。まさか口に咥えてぶん投げた訳でも無いだろう。それに相手はサイだ、変わった技能でも取得したに違いない。
「あぁ、あれ。あれはねぇ、この前特異能力で超能力っていうのを開放して、その時に取得出来る様になった技能の中に念動力っていうのがあってぇ、それ。」
「なんですと。そんな特異能力があったとは。」
まさか念動力、サイコキネシスとは。思っても見なかった。・・・あれ、ってことはヤクモとモモカの思念伝達って、テレパシーって事か。よもやこの世界に超能力が存在するなんて考えもしなかった。
「でもぉまだ技能取ったばっかりだからぁ、真っ直ぐ飛ばすぐらいしか出来ないんだ。それに今は凄く効率が悪いんだ。」
「なるほどなあ。でも充分助かったよ、ありがとな。」
俺も超能力欲しいな、後で確認してみよう。
「えへへ。でもそのうち蛇みたいに動かせたら面白いなぁと思って、練習中。」
実に楽しそうに話している。鎖を自由にねぇ・・・星雲的なやつか、確かにちょっと楽しそうだな。サイが「僕はあなたと戦いたくない。」とか言い始めたら、近づくのは止めておこう。眼鏡蛇と鎖蛇は相性良さそうだな。
「何時でもとは言わないが練習に付き合うぞ。」
「ほんとぉ、あるじぃ。やったぁ。」
ジュウザやハクも俺に練習に付き合って欲しいと言われた。それは別に良いんだが、ミナとヤクモにも付き合って欲しいと頼まれたのは意外だったな。日課にそういう時間を組み込むか、何日かおきにそういう日を設けるかする必要がありそうだな。俺にとっても良い訓練になりそうだから皆と相談して決めよう。
帰宅後に今日の獲物の肉を少しづつ切り出し皆で食べた。その後セッテさんに保留していた進化による変化事項の説明を受けた。
・幸運星兎の尻尾への変化
・星兎の幸運の追加
・従者への星兎の加護の追加
・アイテムボックスの拡張
・取得可能な各種技能・特異能力の追加
・選択可能職業の追加
・特殊技能「星目」取得
大方予想通りだった。が「変化」ではなく「追加」だったものがあったのは意外だった。幸運や加護の説明はしてもらえるが、星目の能力が皆目見当がつかない。目が良くなったのか、今まで見えなかったものが見えるようになったのか。それとも何か他の能力なのか。まあ、悪い影響があるものでは無いだろうから、ゆっくり解明していけば良いだろう。・・・今の所は解らない。
馴鹿と箆鹿を食べて取得したものを含め新技能を取得した。特異能力の超能力を一覧に発見したので開放したのだが、どの技能を取得するかは保留した。全部取得するという選択肢もあったが、サイが言っていた「効率が悪い。」という事を考慮するとあまり意味が無さそうだと判断し止めた。保留した理由は、単純に迷っただけだ。だが、どれか一つは必ず取得するつもりだ。
馴鹿言語と箆鹿言語の取得。翠玉眼取得。これは食事で。スキルポイントを消費し、二段飛、麻痺耐性、角技を取得。それ以外はスキルポイントを「3006」残し取得済みの技能のLvを向上させるのに使用した。口笛と星見のLvを上限の10まで上げた。というのも消費するポイントが比較的少なかったので勢いで、ついと言った感じだ。だがこれが意外な結果を生んだ。星見の技能が星詠に進化した。大体睡魔という強敵に屈し、日が沈んでからの活動が殆無い俺にとって、どれ程の恩恵があるのかを体感する機会が少ないが。口笛の方は進化はしなかったが、新しく超音波という技能が取得可能になった。使い勝手が判らないが、なんとなく便利そうな気がしたので即取得したかったが一時保留した。
この日から数日後に新職業の盗賊のLvが5になった。その際に新しい技能を自動的に取得した。
『技能・鍵開けを取得しました。』
技能の意味はとても良く理解できる。おそらく俺の頭の中で思い描く効果と大きな間違いは無いだろう。・・・だがこの技能、何の意味があるんだ。この世界で、少なくともこの大自然、この森林の中で何の鍵を開けろってんだ。今までで一番使い道が無い技能だ。まぁ持っていて損があるって訳でもないから良いけど。この先、役に立つ機会が訪れるのだろうか。
超音波を取得した。




