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多元世界治安維持組織【アルゴナウタエ】  作者: 浮雲士
三章  黒傷を濯げ、清流の剣
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十九話







「……!?」


 振り下ろした【閃煌剣せんこうけん】にて手ごたえを感じた雄斗。

 しかしそれがあまりにも予想とかけ離れていた。グラディウスの背中を切ったことは間違いはない。しかしその感触はまるで硬い岩盤を無理やり擦ったようなものだ。

 【剣躰】を凝縮した【閃煌剣】はあらゆるものを豆腐がごとく切り裂ける、絶対切断の剣戟だというのに──

 

「咄嗟とはいえ【黒皮こくひ】を使用してしまうとは。見事だぞ」


 賞賛の言葉と共にグラディウスより放たれる強烈な戦意と殺意、そして魔力に雄斗は怖気を感じ、即座にその場から離れる。


「周囲を覆っていた雷が消えている。さてはあれにお前の異様な不死身ぶりと俺の背後を取った秘密がありそうだな。

 しかし解除したところを見るとあれの発動時には他の神威絶技は使用できないといった欠点もあるようだ。

 そして【黒皮】の防御を突破した一撃。凄まじい威力だ。この間の戦いで見た時も思ったがまともに食らえば俺とて両断されるだろうな。

 ──まぁ、まともに食らえばの、話だが」


 そう言うグラディウスの全身を淡い闇色のオーラが包む。

 うっすらとした黒色。しかし影のように決して消えず彼の体を覆っていた。


「【黒皮】……!?」

「ああ。知らなかったか?

 【黒皮】。俺の体に重力の防御膜を発生させて敵の攻撃を軽減、制止させる技だ。

 大概の攻撃はこれで何とかなるんだがそれを突破したのは、賞賛に値するぞ」


 数千年にわたり数多の神々や英雄と戦っているグラディウス。当然ながらその戦闘スタイルや絶技についての情報はある。

 その一つである【黒皮】のことを雄斗も当然調べて知っている。しかしあらゆるものを切り裂ける【閃煌剣】の一撃さえ大きく軽減してしまうとは。


「しかし剣だけの勝負も飽きてきた。──そろそろ異能も使うとしようか」


 そう言ったのと同時、グラディウスの体から漆黒のオーラが噴き出し、それを見た雄斗は頬を引きつらせる。

 オーラ自体は決して大きくはない。だがその密度、そして距離が離れているというのに感じる底が見えない圧倒的な魔力。今まで対峙したどの神々や【異形王フェノメノ】よりも大きく、強い。


「まずは外野に大人しくしてもらおうか」


 そう言ったのと同時、マリアとシャフナーズの2人が地面に這いつくばらされる。

 

(【重潰じゅうかい】……! 対象を増加させた超重力により押しつぶすことで動きを止める殺戮技……!)


 雄斗も押しつぶされそうになるが【剣躰】を発動、呪縛を解く。

 

「それじゃあ、行くぞ」


 挨拶するような気軽さでグラディスが言ったのと同時、彼の姿は眼前に出現しており、しかも黒刀を横薙ぎに振るっていた。

 先程と同じく不可知の動きと斬撃。しかも太刀筋はさらに速くなっている。

 雄斗は【閃煌剣】を宿した【万雷ばんらい閃刀せんとう】で何とか受け止める。しかしそれと同時、黒刀より放たれた無数のオーラが雄斗の体を刻む。


(【黒沫刃こくまつじん】……!)


 黒刀がぶつかった──または切り裂いた──瞬間、水しぶきの粉末のようにオーラが飛び散り敵を切り裂く。グラディウスの殺戮技の一つだ。


「ははは、【黒沫刃】の無差別な斬撃を反射的に体を動かして深手を裂けたか。そうこなくてはな!」


 哄笑しながら黒刀を振るうグラディウス。先程よりも速く重い連撃に雄斗はかわすこともできず【万雷の閃刀】を盾にした防戦一方となる。

 しかし雄斗が信じられないのは【閃煌剣】を宿した【万雷の閃刀】で受け止めている黒刀が全く損傷しないことだ。

 【剣躰】と同じくあらゆるものを切り裂ける【閃煌剣】。当然ながら防御にも転用でき大抵の攻撃はいともたやすく切り裂けてしまう。

 だがグラディウスが振るう黒刀には微塵の破損も見られない。これは一体──


「あらゆるものを切り裂く技は、お前だけの専売特許ではないということだ。──【黒渦喰剣こっかくけん】」


 心中が顔に出ていたのか、グラディウスは教えるように言い黒刀を振るう。はっとした雄斗が【万雷の閃刀】に当たる瞬間に見えた、黒刀の中にある渦。

 それを見て雄斗は思いだす。【黒渦喰剣】。あらゆるものを飲み込み削り取っては粉砕する、グラディウスが行使する万物を切り裂く剣だ。

 黒刀と【万雷の閃刀】。双方とも大きな損傷をしないのは【黒渦喰剣】と【閃煌剣】互いの能力が打ち消しあっているからだろう。


「さてお次はこれだ」


 雄斗を吹き飛ばしたグラディウスは黒刀の切っ先を宙に掲げる。

 眩く輝く太陽。それを隠すような巨大な黒い渦が現れ、そこから巨大な水の龍が雄斗に向かってきた。


(【無垢なるキアーロ・龍王ドラゴーネ……!】)


 迫るマリアの神威絶技に驚愕しながらも雄斗は【閃煌剣】の斬撃で大龍を切り伏せる。

 しかし黒い渦から次に飛び出してきたのは数十、いや百に迫ろうかと言う光弾。今度はシャフナーズの【星矢】だ。


「【黒空】か……!」


 全方位より迫る光の弾丸を雄斗は【閃煌剣】で切り裂き、雷撃で撃墜する。 

 しかし半分ほど処理をした時、違和感を覚えた。【星矢】の速度が上がっている。いやそれだけではない。自分の攻撃速度が遅くもなっている。

 次第に無数に迫る光弾の群を迎撃しきれなくなり、【星矢】が体を掠め、回避しようと思っていた【星矢】を食らい、吹き飛ばされる。


「うーん。剣技はともかくそれ以外の絶技は使えないのか。

 ふふふ、昔の俺の見ているようで親近感がわくな。それともこちらの油断を誘うため、あえて使わないのか。どちらかな」


 体勢を持ち直した雄斗の間近に響くグラディウスの声。いつの間にか右にいた【異形王】に反射的に斬撃を放つ。

 黒刀も消し暢気に品評しているグラディウスの首を之狙った一撃。黄金の刃が首まであと数センチまで迫った時だ、グラディウスはあり得ない速度で身をかがめ、剣戟を回避する。

 回避と同時懐に入り、掌底を放ってくるグラディウス。しかしその動きは遅く余裕でかわせる。

 そう思っていた雄斗だが、なぜか自分の反応が恐ろしく鈍く、遅い。腹部に掌底を食らい、砂の大地に叩きつけられる。


「かっ……! そ、【縛放そくほう】……!」

「正解だ。だが対処が遅い。

 いかんぞ。強者に対しても情報は一つ残らず脳に刻み反射的に対応しなければ。俺たちクラスと戦うなら、そのわずかな時間が生死にかかわる」


 【縛放】。グラディス、又は他者の体の周りの周囲の重力を操り行動速度の加速、減衰を行う異能だ。

 先程の【星矢】を捌ききれなかったのと、見えていた掌底をかわせなかったのは【縛放】で雄斗の周囲の重力を強めたからだ。そして雄斗の不意打ちのような斬撃を回避したは逆に自分にのしかかる重力を弱めたからだろう。


(わかり切っていたことだが、本当に強い……!)


 全ての記憶を取り戻し、正真正銘の全力を出しているというのに子供扱い。いや赤子扱いだろうか。

 それを痛感しながら雄斗は痛みに軋む体を起こし【万雷の閃刀】を構える。

 戦える力はあるし【策】もある。赤子扱いのままで、黙っていられるものか。


「よしよし。まだ目に力があるな。

 さて、次はどんなものを見せてくれるのか」


 起き上がった雄斗を見て嬉しそうにするグラディウス。

 雄斗はそんな敵を、いや正確にはその背後を見て、不敵に微笑む。


「遅えよ、二人とも」


 かすかに呟くと同時、光と・・雷を纏った・・・・・マリアとシャフナーズの両名が背後よりグラディスに攻撃を放つ。

 迫る【邪悪を引き潰すマルヴァジタ・ロンベーレ・神馬の蹄カヴァーロ】と【星極槍ニグム・ハルバ】を振り向きもせず【黒空】が飲み込み、二人に放つ。

 しかしカウンターをされた二人は迫る自身の攻撃を一撃で霧散させ、間合いを詰めて斬りかかる。


「やれやれ。お前たちに興味はないんだが──む?」


 振り向き二人に手を向けるグラディウス。しかしその表情が怪訝なものとなる。

 先程と同じく【重潰】にて砂漠に叩きつけようとしたのだろう。だが二人は止まることなく攻撃を放つ。

 そしてまた雄斗も雷を纏い、二人と共にグラディウスに接近。【閃煌剣】による斬撃を放つ。

 【黒渦喰剣】を行使した──黒刀を出現させ受け止めるグラディウス。だが三者の振るった剣撃を受け止め弾いた漆黒の刃は砕かれる。


「ほう、これはこれは……!」


 驚き、瞳を輝かせるグラディウス。両手に黒刀を出現させ、迫る雄斗たちを力任せの剣戟で弾き飛ばす。

 空中で体勢を立て直す雄斗たち。砂地に降り立った三人は光と雷を纏い、それぞれの得物を構える。


「俺の【重潰】を無効化しているのか。鳴神雄斗はともかく女神二人もか。

 さて、一体どんな手品なのかな」

「さぁな。──だが、ここからが本番だ」

「覚悟してもらうわ、グラディウス」

「シャハブ様やアザードさん、ファルナーズ様。

 わたし達の縁者を始め数多の神々英雄を傷つけ、葬ってきたあなた。今日こそ年貢の納め時だよ!」


 そう言って雄斗が飛び出すのと同時、マリアとシャフナーズも続く。

 【剣躰】と【閃煌剣】。それを同時発動して剣戟を放つ雄斗。雷光を纏う女神二人も同じく【異形王】に攻撃を仕掛け、時には反撃を受けた互いのフォローをする。

 縦横無尽に動き攻撃を仕掛けてくる雄斗たちに対し、グラディウスは剣撃に加え【重潰】に【縛放】、【黒沫刃】を行使して対抗。

 しかし雄斗は当然だが二人も【重潰】に【縛放】に動きを阻害されず【黒沫刃】も体にまとう雷が消滅させる。


「これはこれはどういうことか。俺の異能を無効化している上、アナーヒターたちの剣技が先程とは別人だぞ。

 雷と縁がない女神だというのに雷光を纏っているところを見ると、これは鳴神雄斗、お前の仕掛か」

「さてね!」


 グラディウスの言葉通りだが、雄斗は剣戟を繰り出すことで返答とする。

 雄斗が行使する神威絶技は大半が攻撃系。しかし【剣躰けんたい】、【雷刃不滅陣らいじんふめつじん】のような強化、支援のものもある。

 その一つであり発動条件が複雑極まりないのが今、マリアたちに発動させている【剣神移譲けんしんいじょう】。他者に雄斗と同等の戦技と行使できる神威絶技を貸し与える絶技だ。

 今日の早朝、雄斗は二人に【剣神移譲】を使用。そして二人はそれを今発動し【剣躰】を行使し、雄斗と同等の剣技を持って攻撃しているのだ。

 しかし当然ながらデメリットも存在する。まず【剣神移譲】を使用してすぐに雄斗の剣技や神威絶技を使用することはできない。

 二人は先程【重潰】で叩き潰された直後に発動したはずだが、今の今まで攻撃してこなかったのは使用した【剣躰】が効果を発揮するまで時間がかかったせいだ。

 また【剣神移譲】をかけられたものは雄斗が使用できる神威絶技を一つしか使用できないし、雄斗の神威絶技を発動、維持し続けるのに大量の魔力を消費し続ける。

 マリアたちが剣技をメインに戦っているのはグラディウスの【黒空】によるカウンターを警戒すると同時、無駄な魔力消費を避ける意味もあるのだ。


「ははは! さすがに鳴神雄斗と同レベルの剣士と三人同時に剣を交えると、いい勝負になるな!

 だが拮抗が精一杯のようだ。これからどうする?」

「決まっている! お前を倒す! 俺たち三人でな!」


 グラディウスの頬に切り傷を発生させて雄斗は叫ぶ。

 マリアたちの剣戟もグラディウスの肌を切り裂き、青い血しぶきを宙に舞わせている。

 グラディウスが放つ剣撃がさらに激しく、鋭くなる。それを見て雄斗は【雷刃不滅陣らいじんふめつじん】を再び発動。

 【雷刃不滅陣】は雄斗にはもちろん、【剣神移譲】により一時的に雄斗の剣戟や神威絶技を使用しているマリアたちも雄斗と同じと認識。彼女たちにも仮初の不死を与える。

 【戦帝】が放つ剣撃は幾度となく雄斗たちを両断するが、雄斗たちが放つ斬撃もグラディウスの五体を傷つけ、切り裂く。

 防御を全く考えない攻撃一辺倒の雄斗たち。だが雄斗は心中で焦りの声を漏らす。


(ここまでやって斃せないのか……!)


 雄斗たちが放つ剣撃はグラディウスの体に無数の傷を刻んでいる。

 だがかの【異形王】の動きは衰える様子を見せない。己の体から血しぶきをまき散らしながらも嬉々とした表情で剣を振るっている。

 その異様さにマリアたちが浮かべている勇壮の表情にも恐れ、怯えが表れ始めてきていた。

 また雄斗もそろそろ体力、魔力共に限界が近づいているのを感じ、勝負に出ると決意。二人と共に一旦、グラディウスから離れる。


「なんだ、もう終わりか。俺はまだまだやれるのだかな」

「今から放つ一撃でお前を倒す。それを真っ向から迎え撃つ覚悟はあるか」

「ほう! そんな素晴らしい攻撃があるのか。いいだろう、来るがいい!」


 嬉々とした様子で黒刀を構えるグラディウス。

 それに対し雄斗は【万雷の閃刀】を高く掲げ、その両脇にいるマリアとシャフナーズは神具を頭上に投擲する。


「月よ。星天に輝く絶対にして孤高なる女王よ。我が血潮を糧として顕現せよ。

 星々の煌めきは汝が刃。宇宙を翔る流星は鏃。明明と放つ黄金の月光は星界の女王たる我の武威である」

「天道の輝きよ。大河が命を育む煌めきよ。今この時は我の御手に集いて全てを破壊する光と成れ。

 命を育む大母たる我は、万物を壊し死をもたらす冥府の女帝である。我が宣告に従い遍く全てを砕かん」


 女神二人の【命魔融和アニマ・ミュステリウム】を発動する聖句。それを聞きながら雄斗も掲げた刃に膨大な雷を宿す。


「おいおい、お前たち二人の【命魔融和】は俺に通用しないことはわかっているだろう。まさかそれが切り札なのか?」

「心配するな! お前の期待以上のものを見せてやるから、黙ってそこに突っ立っていろ!」


 白けた目を向け、構えを解いたグラディウスに雄斗は怒鳴る。

 その間もマリアたちは詠唱を続け、二人の頭上に巨大な弓矢を持つ半裸の女神と赤と紅に輝く鎧を纏う戦車に乗った女神が形成される。


「全ての存在は我が力を恐れよ。我が輝きに震えよ。我が放つ光は反徒どもを打ち滅ぼす夜の女王の神威である!」

「我は太陽に守護されし女王にして戦士。陽光を遮る魔を祓う聖なる士。世界に平和と調和をもたらすため、神聖なる破壊を齎す!」


 三者が高める魔力に空が、大地が震える。

 それを感じたのかグラディウスも再び黒刀を構えなおし、自身の魔力を高める。

 巨大な四つの魔力に天地が悲鳴のような音を上げた時、雄斗たちは攻撃を放った。


「【百鬼夜行を滅するイブリースヤクト・月光神鏃カマルマウス】っ!」

「【降魔と暗黒を祓うオヴィーナオルコ・)聖女王の進撃ヴィットーリア】──!」


 顕現した女神が攻撃を放ち、僅かに遅れて雄斗もグラディウスに突撃する。

 それに対しグラディウスは瞬時に莫大な漆黒のオーラを出現。そのオーラが刀を持った戦士の形をとる。


(これが先の戦いで二人の【命魔融和】を迎撃した理由か……!)


 どういう存在かはわからない。だが一目見てすぐに分かった。

 出現した黒の巨人は二人の【命魔融和】による一撃を粉砕するだけの力がある存在だと。先の戦いの大爆発はこの巨人が二人の【命魔融和】を破壊したために起きたのだろう。

 巨人が剣を振るいマリアたちの【命魔融和】を粉砕しようとする。だが逆に【命魔融和】に接触した刃は砕かれ、瞬く間に巨人の全身に亀裂が走っていく。

 それを見て驚愕するグラディウス。雄斗は突っ込みながら心中で勝ち誇った笑みを浮かべる。


(狙い通り、上手くいった……!)


 眼前の光景は二人が【命魔融和】と雄斗の【閃煌剣】を融合させた結果だ。 

 英雄や神が二つの神威絶技を組み合わせて新たな神威絶技を生み出すことはある。その応用と言うべきものだ。

 【命魔融和】の一撃を受けてもおそらくグラディウスは倒せない。だが多少なりともダメージは負う。そこに【閃煌剣】を宿した鳴神流奥義の天斬雷剣を放てば、わからない──

 これが今の雄斗に出せる最善の、そして最強の策だ。

 驚いた表情のまま【命魔融和】の一撃を食らうグラディウス。両腕を頭の前に交差させ漆黒のオーラで防御するが、全身に無数の傷が刻まれ青色の血飛沫が舞う。手にしていた黒刀も粉々に砕かれる。


(貰ったぞ、グラディウス!)


 【命魔融和】による爆発、爆風を【剣躰】で切り裂きながら突き進む雄斗。

 後退し体勢を崩したグラディウスの頭を切り砕くべく【万雷の閃刀】を握る手に力を込めたその時だ、顔を上げたグラディウスの目つきを見て、心中にあった勝利の確信が瞬時に消え去った。

 初めて見た、鋭く冷たい、覇気と殺意に満ち満ちた眼。今までのような格下を見る目ではない。敵を見据え、打ち倒すと決めた戦士の視線だ。


「見事な一撃だ。──なら俺も、本気の一撃を放つことでお前たちへの返礼と賞賛としよう」


 そう、眼差しで語るグラディス。それと同時、グラディウスの手元に出現する刀。

 黒刀ではない。少しの穢れもない純白と底が見えない奈落を思わせる純黒が入り混じっている刀だ。

 陽と陰。生と死。破壊と再生。天と地。それを見た雄斗の脳裏に背反する言葉やイメージが浮かぶ。


「【天地斬てんちざん】」


 振るわれた白黒の剣。放たれたのは武蔵の【天燼地滅てんじんちめつ炎風剣ふうえんのけん】と同じく眼前の世界全てを切り裂く、斬撃と化した空間だ。

 回避不可能なそれを雄斗は全力の天斬雷剣を放つ。しかし雷を宿す巨大な黄金の刃は迫る白と黒の空間によってあっけなく砕かれ、雄斗を飲み込んだ。







次回更新は9月20日 夜7時です。

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