その温もりをこの身へと請い
薄暗い山道、雨で視界の悪い中。弱々しい救難信号の笛の音を頼りに必死に探す。
斜面を滑り降り、雨に消される痕跡と音をどうにか辿ったその先。
灰色の視界に映り込む、毒々しいまでの赤。
目の前の光景があまりに現実離れしていて、俺は足を止めてしまった。
俺に気付いたジェットがくわえていた笛をポトリと落として、すまなそうに瞳を細める。
「…ごめんな、ダン…。…ちょっと…しくじった……」
脇腹を枝に貫かれ、雨に流れる血溜まりの中、かろうじて足がつくだけで動けない様子のジェット。
その腕には、大事そうに丸めた雨避けのマントを抱えていた。
「ジェットっ!!!」
我に返って駆け寄る俺に、血の気の失せた顔で、それでもジェットは笑う。
とにかく助けを、と、自分の首から下げていた笛で『要救助者発見』の合図を思い切り吹く。
「…頼む……」
そろりとジェットが差し出した雨避けの中には、ぐったりとした赤ん坊が入っていた。
「…このままじゃ持たない…。先にその子を……」
「何を…」
「…リゼルと…被って……だから頼む…」
ジェットの姪のククルに、先月娘が生まれて。共にライナスの町へ会いに行ったのは、ついこの間のこと。
同じぐらい小さな赤ん坊。泣きもしないその子が一刻を争う状況だということはもちろんわかる。
だが、それはジェットも同じこと。
「置いていけない」
「…俺まで行くと…間に合わない…」
足手まといになると、自ら言い切って。
「だがっ」
「頼む」
こんなときなのに、有無を言わさぬ強い声。
赤ん坊の命がかかっている限り、ジェットは引かない。
わかっては、いるのだが。
ここでジェットを置いていくことがどういう結果になり得るのかなんて、考えるまでもなく。
それでもその選択を俺にはさせず、ジェットはただ赤ん坊のことだけを俺に頼む。
「……前後、斬ってくれたら……自力で行くから…」
もう、呑むしかなかった。
濡れた服を剝いだ赤ん坊を自分の服の中に入れ、雨避けで固定する。
肌に触れる冷え切ったその身体に、時間がないことを改めて知った。
「斬るぞ」
一掴みほどの太さの枝、おそらく力のある俺がひと思いに斬ったほうが、ジェットの負担が少ないだろう。
両手を使える状態で剣を抜き、血濡れた枝を掴む。
今抜くことはできないので、長すぎる腹側と幹につながる背中側、両方を斬った。
呻き声ひとつ上げずに耐えきったジェットは、解放されるなりがくりとその場に膝を着く。
「ジェット!」
「すぐ追うから…早く…」
青ざめた顔。ジェットもまた、血を失い、雨で冷えている。
「救助要請はしている。動かなくていい」
その場に座らせ、自分の雨避けをジェットに被せる。
「この子を預けたら俺もすぐ戻る」
「…ダン」
頷いたジェットが、力の抜けたように笑った。
「ありがとな」
「礼ならあとで聞く」
そう言い残し、俺は赤ん坊を連れて走り出す。
それが、ジェットとの最期の会話となった。
暗闇の中、汗びっしょりで飛び起きて。
自室のベッドの上だと気付くまでにしばらくかかった。
もう一月も前のことなのに、寝る度に今目の前で起きているかのように思い出す。
あの日、俺たちは警邏隊と合同で行方不明の定期馬車を探していた。
道を逸れたジェットに何があったのか、もう正確にはわからない。
笛を聞きつけて来てくれた警邏隊員に赤ん坊を預けて戻ったときには、もうジェットは目を閉じていて。
安心したように笑みすら浮かべて、ジェットはその場で息絶えていた。
何度声をかけて揺さぶっても動かないジェット。
現実なのだと。ジェットは死んだのだと。
理解してからの記憶は、俺にはない。
ジェットが死んだあの場所の先で、落ちた馬車が見つかったこと。
ほかに生存者はいなかったこと。
あの赤ん坊は一命を取り留めたこと。
戻ってきてからそんな話を誰かから聞いたが、もうどうでもよかった。
俺があのとき無理矢理にでも連れていっていれば。
そうしていたなら、もしかするとジェットは助かっていたかもしれない。
後悔なんて言葉では生温い。
自分のした行動に絶望した。
ジェットは俺の弟弟子で。
パーティーのリーダーで。
仲間で。家族で。尊敬する男で。
ようやく重責から解放されたジェットと共に、これからも恩返しの旅を続けていくはずだったのに。
ジェットの故郷に増えた家族の成長を楽しみにしていたのに。
何故。
何故こんなことになってしまったんだろう。
何度自問しても納得いく答えなど出ない。
ジェットはもういない。
俺は俺の半身を失ってしまったのだから。
ジェットの最期の様子を知っているのは俺だけで。
助けられなかったのも、ほかでもない俺。
ギルドに対しても最低限の報告しかしておらず、ジェットの故郷ライナスへも、まだ行けないままだった。
本当なら俺がジェットの最期を伝えなければならないことはわかっていた。
ジェットが何を言っていたのか。ジェットがどんな顔をしていたのか。それを伝えなければならないことはわかっていた。
だが、ジェットを助けられなかった俺が何を言ったところでただの言い訳でしかない。
ギルドでの葬儀には出たものの、ライナスでの葬儀には出ないまま。
もう身寄りのない俺にとって、家族のようなライナスの皆。
しかしもう、俺にその資格はない。
だからこそ、あの町に行くのが怖かった。
ギルドも辞めて。
抜け殻になった俺のところにそれでも心配して来てくれる人はいたが、正直なところ、もう捨て置いてほしかった。
微睡んではあの日の記憶に飛び起きて。
その度に絶望して。
覚めぬ悪夢の中を延々と歩くような一月を過ごすうち、これは俺への罰なのかと思うようになった。
ジェットを助けられなかった俺。
こうして苦しむのは、当然の報いなのかもしれない。
その日、ナリスが訪ねてきた。
ジェットの弟子で、十年以上パーティーを組んでいたナリス。二年半程前にギルドを辞め、ククルの夫の妹と結婚してライナスに住んでいる。
ナリスはジェットの死後しばらくギルドに戻って、混乱を収めるために尽力してくれた。
「…久し振り」
「……ああ」
未だライナスに来ない俺を心配して、こっちに来てくれたんだとわかってはいる。
「ちゃんと食べてる?」
目についたものを片付けながらそう問われるが、答えなかった。
食べてもろくに味もしない。酒にも酔えない。俺にとってはもうあまり意味のない行為だった。
「……皆心配してるよ」
そう言われても、何も返せない。
ライナスへは、行けない。
答えない俺に少し寂しそうに微笑んで、たまには髭でも剃ってきたら、とナリスが呟いた。
仕方なく言われた通り身を清めて。
戻るとテーブルに食事が置かれていた。
「ククルから」
掌程の包みもいくつか並べて置かれていた。中は焼き菓子だろう。
「いつでも待ってる、って」
ククルらしい優しい言葉に、それでも何も返せなかった。
明日も来るから、とナリスが帰って。
ひとりの部屋、悪いと思って食事の前に座るものの、食べる気になれず。
早々に諦め、溜息をついた。
翌朝来たナリスは手付かずのままの食事に息をついて、まっすぐに俺を見た。
「…ダンまでどうにかなったら、俺たちはどうすればいいんだよ……」
泣き出しそうにも見える表情で、苦々しく呟く。
「お願いだからもっと自分を大事にして。…ジェットだって、絶対こんなこと望まない」
出されたジェットの名に、それくらいわかっていると返そうとして、声を失う。
俺が言うべき言葉じゃない。
それに。俺にそんな価値はない。
黙り込む俺にナリスはうなだれ、頼むから、と呟いた。
食事を片付けて新しく日持ちのする食料を置いたナリスは、今日ライナスに帰ると告げた。
「…皆、ダンのこと待ってるよ」
何も言わないままの俺を一言も責めることはなく、ナリスは寂しそうに俺を見て、待ってるからと念を押した。
ナリスが帰り、再びひとりの静かな部屋で。
何もする気になれない俺は、ただそこに座っていた。
もう俺のことなど待たなくていい。
忘れてくれていい。
あの日以来冷え切った心と身体。
ジェットと同じように。
もう、動かなくなってしまえばいい。
もう放っておいてほしい。
そう思う俺と裏腹に、午後になってまた人が来た。
何度も扉を叩かれて、仕方なく開けると思いもよらない姿があった。
見上げる翡翠の瞳に一瞬動きを止める。
アリヴェーラ・スタッツ。
俺とジェットの師、ゼクスさんの孫のひとりで、ライナスでも何度も顔を合わせた。
俺たち同様ゼクスさんに鍛えられた彼女は、並のギルド員では歯が立たない程の実力者で。請われて一度手合わせもしたが。
家に来るような間柄ではもちろんない。
「入るわよ」
俺が声をかける前に、するりと俺の横を通り抜けて中へと入っていくアリー。
仕方なく扉を閉める。
テーブルの横で立ち止まったアリーは、上に置きっぱなしの包みを見ていた。
何をしに来たかと問うまでもない。大方ナリスに頼まれでもしたのだろう。
しばらくすれば気も済むかと思い、そのまま待っていた。
アリーは俺を見ないまま、ただその包みを見つめていた。眉を寄せ、何かを堪えるように唇を引き結び、その場に立ち尽くしている。
一度瞳を伏せたアリーが俺へと視線を向けたときには、その顔に先程までの憂いはなかった。
「どうしてライナスに行かないの?」
睨むように俺を見上げ、強い声でアリーが問うが。
行かないのではなく、行けないのだと。もちろん答える気などない。
黙り込む俺に。
目の前のアリーの瞳に、ゆらりと殺気が立ち昇る。
アリーが拳を振りかぶるのがわかったが、今の俺には避けることができなかった。
頬への衝撃と共にうしろへ下がって、もつれる足では踏み留まることができずに尻をつく。
俺を見下ろすアリーの怒気が増した。
突き飛ばすように押し倒され、馬乗りでもう一度殴られる。
「しっかりしなさいっ! ダリューン・セルヴァ!!」
泣き叫ぶようなその声に、俺はただアリーを見上げた。
翡翠の瞳に涙は見えず。怒りと悲しみが混ざる眼差しを向けたまま俺を見下ろすアリーが、握りしめた拳で俺の胸を叩く。
「あんたがジェットの気持ちを汲めなくてどうするの!! あんた以外の誰にジェットの気持ちがわかるというの!」
何度も胸を叩きながらのその言葉。
俺自身も。そうだと自負していた。
誰よりもジェットのことをわかっていると、そう思っていた。
だが―――。
「あんたが伝えないと…ジェットの最期を知るあんたが皆に話さないと! ジェットの気持ちは誰にも伝わらないままなのよ!」
横っ面を張り倒すような、容赦ないアリーの罵倒が続く。
―――わからないんだ。
ジェットはもういない。
それでいいのだと。
間違ってないのだと。
屈託なく笑って肯定を示すジェットがもういないから。
俺にはもう、わからないんだ。
答えられない俺を捉えたままのアリーの瞳。
泣き出しそうにも見えるのに、帯びる光はどこまでも強く。
どうしてわからないのかと。まっすぐに、俺に問いかける。
「ジェットの遺した思いを! あんたが示さなくてどうするの!!」
真剣な、心からのアリーの叫び。
言いたいことを言ったからか、見下ろすアリーから怒気が抜け、残る悲しみと心配が吐息となって降ってくる。
それ以上の言葉はなかったが、わかっているのかと問いかける強い眼差しは変わらない。
目を逸らせずに見返しながら、それはわかっているのだと心中呟く。
俺だって。できることならそうしたい。
だが、俺にはもうわからないんだ。
あのときのジェットが本当にそれを望んでいたのか。
俺はあのとき本当にジェットの望むよう動けていたのか。
ジェットが何を思って逝ったのか。
俺のしたことは、本当にジェットの望むことだったのか―――?
渦巻く思いを口に出せずに見返すだけの俺に。
馬乗りのままのアリーもただ俺を見据える。
覗き込む翡翠の瞳が揺らぎ、次第に問い詰めるような圧が薄れて。
残る、ただ俺を心配するだけの眼差しに。
「……自信が………ないんだ……」
つい、本音が零れた。
唐突な俺の言葉に瞠目したアリーが、次の瞬間ふっと力の抜けたように表情を崩した。
「…やっと口を利いてくれたわね」
見下ろす瞳に責める色がないことに、ただ驚く。
先程までの剣幕さが嘘のように穏やかな声で、何のことかとアリーが聞いてきた。
溜息をついて、目を閉じる。
こんな不甲斐ない俺にこれだけ真剣に向き合ってくれているアリーに、ごまかすようなことはしたくなかった。
改めてアリーを見て、ずっと抱えていた不安を口にする。
あのとき俺はジェットの望むように動けていたのだろうか。俺の判断は間違っていたのだろうか、と。
あの事故からずっと悔やんできた、あのときの行動。
答えを求めていたわけではない。ただわからないと言ってもらえれば気が済んだのかもしれない。
だが。
「ダンがジェットの気持ちを読み違えることなんてあるわけないでしょう?」
アリーは何の迷いもためらいもなく、あまりにあっさりと否定した。
当然のように言い切られてただ驚く俺に。
じっと見ていたアリーが、不意に手を伸ばしてきた。
軽く髪に触れられて、思わず身を固くする。
驚いたのか、アリーもすぐに手を引っ込めた。
見下ろすその瞳とわずかに触れた指先。妙な疼きを感じたことに戸惑う俺に、アリーはあのときのことを話してみてと言った。
俺を見据える眼差しに責める色はなく。おそらくはライナスで話す為の練習に、といった意味合いなのだろう。
穏やかな声音につられるように、俺は少しずつあの日のことを話し。急かすことも疑問を挟むこともなく、アリーはただ黙って俺の話を聞いてくれた。
俺がジェットを連れていっていれば、と。未だ夢に見る絶望を最後に口にして、うなだれる。
そうしていればと肯定されるのか。
それとも今更何をと呆れられるのか。
罵られる覚悟すらして、俺はアリーの反応を待った。
しばらく沈黙したままだったアリーが、ふっと息をつく。
「ダン」
呼ばれた名に顔を上げると、思っていたよりも柔らかな表情でアリーは俺を見ていた。
責めるつもりはないのかと、呆然と見返す俺に。
「…そのときのジェットの一番の願いは何だと思う?」
笑みすら浮かべてアリーは優しい声音で尋ねてきた。
ジェットの一番の願い。
あのときジェットは何よりもまず赤ん坊を俺に託して。
何度も何度も、頼むと言って。
思い出して、愕然とする。
―――それで、いいのだろうか?
ありがとうと言ってくれた、あの言葉が心からのものだったのだと。
俺はジェットの期待に応えることができていたのだと。
そう思っていいのだろうか?
胸が詰まる。
込み上げる涙に両手で顔を覆い、嗚咽を逃がすように息を吐く。
「……赤ん坊を、助けること…」
どうにかそれだけ答えると、すぐさまアリーがそうよねと肯定する。
「…ダンが赤ちゃんを連れていってくれたから、ジェットは安心できて。…亡くなってしまったけど、ダンがいるから大丈夫だって。不安も悔いもなかったんじゃないかって。私はそう思うのよ…」
諭すつもりなどない、ただ個人の意見として。柔らかな声音で紡がれるその言葉に、ジェットの最期の姿を思い出す。
あのときジェットは命に関わる傷を負いながらも、場違いなくらい安心したように微笑んでいた。
あの日俺は、ジェットの命を助けることができなかった。
だが。ジェットの心は―――その思いは守れたのだと。
そう思っていいのだろうか。
「…ダンは間違いなく、ジェットが一番望むことをしたのよ」
声にならない心中の問いに答えるように。
アリーはあの日の俺を、ただ肯定してくれた。
顔を覆ったまま動けずに、手の下で涙が止まるのを待つ。
何も言わずにアリーは俺の上から降りた。離れてしまわずに、腰に触れたままであることにどこか安堵する。
ようやく自分を立て直して起き上がると、アリーは俺に背を向けて座っていた。そんなところも、俺が起きたことに気付いていても動かないところも、周りを気遣う彼女らしい。
本当に。四十も過ぎた男が、十七も年下の女性に慰められて、目の前で泣いて。まだこれだけ気遣われている。
全く、我ながら情けないにも程がある。
「アリー」
こちらを向いても大丈夫だと伝えるべく声をかけると、ゆっくりとアリーが振り返った。
謝るべきか、礼を言うべきか、少し悩んで。結局はすまないと謝った。
小さく首を振ってから、アリーがじっと俺を見る。
「ごめんなさい、殴ったときよね」
殴られたときに切れた唇を見て、本当に自然な動作でアリーが手を伸ばして頬に触れた。
その手を温かいと感じて驚く。
あの日以来感じることがなかった温かさ。
アリーの手から確かに伝わる熱に、俺は呆然とアリーを見つめた。
アリーのおかげであの絶望が薄れたからか。
それとも、アリーだからか。
それはわからないが、冷え切った身体にその手は泣きたくなる程心地よくて。
無意識に自分の手を重ねようとしたそのとき、アリーが近付いてきた。
触れた唇同士。
キスをされたことと温かさに驚いているうちに、すぐに離れてしまったその唇。
追い縋りたいと思う自分に驚く間もなく、続いて離れかけた手を掴む。
長く忘れていた温かさが恋しくて。
離れないでほしい、離したくないと、そんな思いが胸を占めて。
驚いて俺を見返すアリー。
その熱が、ほしくて。
「……温めて………」
自分が口走った言葉に、俺自身愕然とした。
―――俺は。
何てことを口にしたのか。
慌てて撤回しようと名を呼ぼうとした俺の口を、アリーがその唇で塞いだ。
抗う間もなく押し倒され、声を出すどころか息をつく暇もない程重ね続けられる唇。
本気で抵抗すればもちろん離れることはできるのだが、それを望まない俺がいて。
むしろ抱きしめそうになる手を必死に堪える。
俺が俺自身とせめぎ合う間に、アリーが俺のシャツを開き。身体を起こしたと思うなり、自分の服も脱ぎ捨てた。
目を逸らすよりも早く重ねられる身体と唇。肌に直接触れるその熱と柔らかさに、やがて俺は理性を手放した。
キスに応え、抱きしめて。そのまま上下を取って代わる。
組み敷いたアリーから熱を奪うように、ひたすらにその身体を抱いた。
抵抗するどころか声ひとつ洩らさず、人形のようにただ俺を見上げるアリーは。
温かなその身体で、俺のすべてを受け入れてくれた。
覆い被さったままだったアリーからゆっくりと降りる。この期に及んでまだ離れ難く思う自分に苦笑した。
俺を見上げるアリーに手を伸ばしかけ、そんな立場ではないと引っ込める。
「…アリー……」
「誘ったのは私。謝らないで」
何を言おうとしたのかは気付かれていたらしい。先に口止めされ、俺は続く言葉を失った。
床の上にそのままのアリー。かなり乱暴に抱いてしまったから、すぐには動けないのかもしれない。
今となっては目のやり場に困るその身体に何かかけようにも、脱ぎ散らかした服しかなく。仕方なくアリーの服を身体にかけて、床の上では休まらないだろうと思って抱き上げた。
「ダ、ダン?」
慌てた声に応えずに、寝室に連れていく。ベッドに降ろして、服の上から上掛けをかけた。
「…しばらく休むといい」
意図はわかってくれたらしい。見上げるアリーの瞳が柔らかく細められる。
「ありがとう」
さっきまでの感情の起伏のない彼女ではなく、俺の知る、明るく無邪気な彼女らしいその表情に。
手を伸ばし、頬に触れ、問いたくなる。
抵抗もせずに俺を受け入れ、自分から誘ったと言う割に、心はどこかに置いてきたように無反応だったアリー。
無茶な抱き方をしたからかもしれない。だが。
だったら今になって何故、こんなに優しい顔を見せるのか、と。
「ダン?」
傍らで動かなくなった俺に、アリーが怪訝そうな声で名を呼んだ。
含まれる俺を気遣う響きにとどめを刺される。
もう一度彼女に触れてしまうと止められないことは、わかっていたのだが。
アリーの頬に手を添えてキスをする。
さっきは温めてほしくて抱いたその身体。
今はただ、彼女自身がほしかった。
そっと唇を離し、呆然と見上げる彼女の髪を指で梳く。
以前手合わせしたときに、こうして触れたことがあった。そのときはただ、こちらの都合で髪を切らせてしまったことを詫びたかっただけだったのだが。
すっかり伸びた、柔らかな赤茶の髪。
「…やはり、長い髪も似合うな」
素直にそう告げると、心底驚いたようにその翡翠の瞳を見開いて。
「……また、そんなこと…」
赤らむその頬とその言葉に、彼女があのときのことを覚えていてくれたのだと知った。
恥じらうアリーにキスをしながらベッドに上がり、今度は彼女自身を確かめるように触れていく。
さっきと同じようにあまり反応を見せないアリーだが、それでも堪えきれなかったように時折小さく声を洩らすようになって。押し殺したその声とどこか羞恥に耐えるようなその瞳に情欲を掻き立てられ、ますます強く彼女を抱く。
最初はただ温めてほしかっただけだった。
しかし今は確実に、彼女を抱きたいと思う自分がいた。
微睡んではうなされて目を覚まし、その度に心配そうに覗き込むアリーを抱いて。そうして慰められるうちに少しずつ眠る時間が長くなり、朝を迎える頃には夢すら見ずに眠ることができた。
俺に付き合わせてロクに寝ていないだろうに、アリーは既に起きていて。
「眠れたみたいね」
安心したように微笑んでベッドから起き上がる。
「お茶、淹れさせてね」
ベッドへ連れてくるときにかけた服を掴み、俺のほうが目を逸らす程堂々とアリーは寝室を出ていった。
扉が閉まってから寝室にある服に着替え、少し待ってから部屋を出る。
既にアリーは身支度を終えていて、昨日脱ぎ捨てた俺の服まできちんと畳まれて置かれていた。
アリーが淹れてくれたお茶を前に、ふたり向き合ってテーブルについたものの。目の前の彼女に何を言えばいいのかわからずに、ただカップに視線を落とす。
同意してくれていたのかもしれないが、昨日の午後にうちに来てから今朝までずっと、恋人でもないのに何度も抱いて。
もちろん責任は取るつもりだし、そうできればと思いはするのだが、こんなにも年の離れた俺でいいのだろうか。
彼女はまだ若い。
俺とのことは一夜の気の迷いとしておいたほうがいいのだろうか。
いくら考えてもわからずに。とりあえずは謝るべきかと思って顔を上げた。
視線が合うなりにこりと笑うアリー。
「お腹すいちゃったから、これ、もらってもいいかしら?」
テーブルの上に置きっぱなしの菓子のことを言っているのだと気付き、もちろんと頷く。
ありがとうと言って、アリーは包みをひとつ自分の前に置いてから。
「ダンも」
俺の前にもひとつ置く。
「…ククルからでしょう?」
静かに続けられた言葉にはっとした。
ギルド経由で報告しただけで、事故から一度も会いに行けないままの俺。
ナリスの言葉を聞くまでもない。あの町の皆が俺を心配してくれていることなど、わかりきったことなのに。
助けられたかもしれないジェットを死なせたことを悔やみ、責められて当然だと思い込み、ひとり殻に籠もっていた。
昨日アリーがあの日の俺を肯定してくれたように。話を聞いて皆がどう思うのかは、実際話してみないとわからないのだと。そんな当たり前のことに今更気付いた。
もちろん責められるかもしれない。
しかしそれでも、皆に心配をさせたままでいる理由にはならない。
包みを開けて食べ始めるアリー。俺も手に取り、口にする。
生地だけのパウンドケーキからは、ほんのりと酒の香りがして。菓子らしく、甘い。
何を食べても味がしなかったのに。菓子は甘く、お茶は温かく。あるべき味と温度をきちんと感じる。
理由は間違いなく、俺の気持ちの変化で。俺を導いてくれたその人は、どこか嬉しそうに菓子を食べていた。
そういえば、ライナスでも幸せそうにククルの菓子を食べていたなと思い出す。
思わず浮かぶ笑みに気付かれてどうしたのかと問われるが、何でもないと首を振った。
片付けは自分がすると言って立ち上がった俺に、アリーは少し安心したような笑みを見せてから。お願いするわね、と任せてくれた。
おそらくもう大丈夫だと思ってくれたのだろう。片付け終えるのを待ってから、アリーは帰ると告げて。送ると言ったが大丈夫だと断られた。
「…ギルドと、ライナスと。ちゃんと行くのよ?」
扉の前、俺を振り返ってアリーが笑う。
「必要以上に心配かけたこと、皆に怒られてきなさいね」
その日のうちにギルド本部へ行って、世話になった人たちにジェットの最期の様子を伝えた。
アリーの言うように、そんなことを気にしていたのかと優しい眼差しで呆れられ、話してくれればと怒られた。
一度辞めた身だがもう一度一から出直したいと言うと、まだ除籍にはなっていないからと返される。
俺がひとりで塞いでいる間、それでも皆は俺を待っていてくれたのだと。
そうわかり、嬉しくも情けない思いで礼を述べた。
ギルドにはもう数日休みをもらい、翌日にライナスへと行った。
謝る俺を皆は怒りもせずに迎え入れてくれて。ジェットの最期を伝えると、ククルからはアリーと同じ理由で礼を言われた。
そして。
ようやくジェットの墓の前で、遅くなったことと助けられなかったことを詫びることができた。
あの日の俺の選択が正しかったのかどうかはわからない。
もしかするとジェットを助けられる道があったのかもしれない。
だが、ジェットの最期の願いだけは叶えられたことを―――あの赤ん坊だけは助けられたことを、おそらくジェットは喜んでくれると。
そう、思えるようになっていた。
中央へ戻ってからは、落ちた体力を戻す為の訓練の日々だった。
あれ以来、時々家に来るようになったアリー。
共に食事をし、他愛もない話をし、お茶を飲むだけ。
手にさえ触れてこないアリーに、俺はまだ、謝ることも責任を取りたいと告げることもできずにいた。
今の穏やかな関係の心地よさと、また触れたいと思う気持ちがせめぎ合う。
間違いなく彼女に惹かれている自分。
救われたからなのか。抱いたからなのか。
アリーだからなのか。
それを突き詰め自覚したとしても、これだけ年の離れた俺に責任を取らせてもらえるのだろうか。
俺の目の前、微笑むアリー。
何故あの日彼女は俺を受け入れてくれたのだろうか。
何故今なおここへ来てくれるのだろうか。
…触れたいと言ったらどんな顔をするのだろうか。
思い返せば、以前手合わせしたときにもキスをされた。
あのときは驚いているうちに何も聞けなくなって。結局うやむやになってしまったが。
もしかして、と思う気持ちも、正直少しありはする。
だが今の関係が崩れれば、アリーはもうここへは来なくなるかもしれない。
また失うのは怖くて。それくらいならこのままでいいと、そう思っていた。
やがて体力も戻り、ほぼ元のように動けるようになった頃。
もう私がいなくても大丈夫ね、と。
最後にそう告げ、アリーは来なくなった。
来る日も来る日もひとりの部屋は、すっかり明るさも温かさも失ってしまった。
自分がどれだけアリーの存在に頼り切っていたのかを思い知ると同時に、ここにいてくれる彼女を当然のように思っていたことに気付く。
この部屋で、共に食事を作り、共に食べ。
妙な貫禄でしっかりしなさいと励まされる一方で、俺の何気ない言葉に頬を染めてはにかむ姿も見た。
年齢よりも大人びた外見に見合う態度と、年相応のかわいらしい反応と。その両方をあわせ持つ彼女を知る程に惹かれる自分に気付きながらも。
責任を取る為ではなく、俺自身が傍にいてほしいのだと。そう告げることができなかった。
自分の気持ちを伝える大切さを、俺は彼女に教えられていたはずなのに。
相手がどう思うのかは聞いてみなければわからないと、教えられていたはずなのに。
現状に甘え、年齢差に怯え、彼女に何も言わなかった。
また同じ過ちをして。
このまま何もせずに彼女を失って、本当にいいのか?
ようやく覚悟を決めて、俺はアリーの家を訪れた。
アリーの家はそれなりに大きなガラス工房で。以前に一度だけ訪れたことがあった。
前回はギルドの用事だったので気にせず店側から入ったが、さすがに今回はためらわれた。しかし家側の出入口がどこにあるのかわからない。
店の前でしばらく佇んでいると、見知った顔が近付いてきた。
アリーの双子の弟で、ギルドの非正規員のロイヴェイン。
気配を読むのに長けているロイのことだから、俺に気付いて出てきてくれたのだろう。
「ダン! 何やってるの」
「アリーに話があるんだ」
駆け寄るロイにそう告げた瞬間、すっとロイから笑みが消えた。
「……やっぱりダンなの?」
「何のことだ?」
問い返すがロイは答えない。
じっと俺を見返し、首を振った。
「……アリーには会えないよ」
向けられる冷えた眼差し。
「悪阻がひどくて人と会える状態じゃない」
淡々と告げられた言葉に、殴られたような衝撃を受ける。
「……悪阻…?」
……つまり、妊娠した……?
「……俺の…こどもを……?」
呟いた瞬間、ロイに殴り飛ばされた。
「ふざけんなっっ!!」
よろけたところを反対からも殴られて、胸倉を掴んで引っ張られる。
「何を今頃来てんだよ! アリーがどれだけ苦しんでると思ってんだよ!!」
いつもどこか飄々としたロイがこれ程までに怒りをあらわにしていることに、アリーの状態の悪さが窺い知れて。
アリーが俺の子を身籠ったということを、まだ受け止めきれない上に。
「親父とじぃちゃんにどんなに責められても相手のこと話さなくって! ただでさえ悪阻がひどいのに、家族を壊してごめんって謝ってばっかりで!!」
続くロイの言葉にさらに愕然とする。
俺のせいでアリーの家族が?
何も言葉の出ない俺に、アリーと同じ翡翠の瞳を泣きそうに歪めたロイが、胸元を掴む手に力を込めた。
「アリーは見てられないくらい苦しんでるのに! 何でお前は今の今まで何も知らないままなんだよっ!!」
―――本当に、俺は何も知らないままで。
知ろうとしなかったことを、今更悔いた。
最後に俺の部屋に来たアリーは、きっと妊娠したことに気付いていたのだろう。
おそらく初めからアリーは俺に知らせる気はなく、黙って産むつもりで。だから家族にも俺のことを話さなかったのだろうが。
何故、と思う。
話してくれれば、アリーひとりを苦しめることはなかった。
話してくれれば、俺にできることは何だってしたのに。
そう。話してさえくれれば―――。
そこでようやく俺も気付く。
俺だって、アリーに何も話していない。
傍にいてほしいと。共にいたいと。
愛しているのだと。
年齢差に気後れして。会えなくなることを恐れて。
俺はアリーに、何も伝えていない。
アリーをここまで追い込んだのは、間違いなく俺の煮えきらない態度だった。
「アリーに会わせてくれ」
口にするなりロイに殴られる。
「今更会ってどうするつもりなんだよ!」
「愛しているんだと伝えたい」
ロイが動きを止めた。
何か言いたげに俺を見返すその顔に、もう一度願う。
「会わせてほしい」
もし、アリーが許してくれるなら。
もし、まだ間に合うのなら。
今度こそ、俺の気持ちを伝えたい。
仕方なさそうに溜息をついてから、ロイは俺を家へと連れていってくれた。
「親父は工房、母さんは店にいるから」
そう言いながら、二階へと上がっていく。
「アリー、本当に具合悪いから。無理させないでね」
「わかっている」
ロイの言葉に頷いてから、そういえばと思い出す。
やっぱり俺なのかとロイは言った。
どういう意味だったのかと改めて問うと、ロイは少し笑って首を振って。
「…アリーに会えばわかると思うよ」
と、それだけしか言わなかった。
そうして案内された部屋の前。礼を言うと、ロイはまっすぐ俺を見据えた。
「…アリーのこと、頼んだよ」
扉を叩くが返事はなく。仕方なくしばらく待ってから扉を開けた。
部屋に入り、ベッドの上に座るアリーを見つける。
「…何しに来たの?」
口調だけは変わらず、俺を見返すアリーだが。
最後に会ってから二十数日、げっそりと痩せ細ったその姿に言葉を失う。
「見ての通りの体調だから。早く帰ってほしいんだけど」
「気付かなくてすまなかった」
謝る俺に、アリーが眉を寄せる。
「……何のこと?」
明らかに苛立ちの混ざる声。
「…俺の子、なんだろう」
「何言ってるの。そんなわけないじゃない」
呆れたように息をついて、アリーは強く否定する。
「確かに私は妊娠してるけど、ダンの子じゃないから」
頑なに認めないアリー。
強がりだとは思う。いや、本当でも構わない。
もう俺には、それは些細なことなんだから。
「用がそれだけなら、もう帰って―――」
「俺の子じゃなくてもいい。俺の子として産んでくれ」
アリーが目を瞠った。
信じられないものでも見るように、俺を凝視するアリー。
「……な、に、言って…」
「愛しているんだ」
戸惑うアリーに、俺はようやく自分の気持ちを告げた。
呆然と俺を見たままのアリー。
近付いて、その手を取る。
「俺はアリーを愛している。こんな俺でよければ、これからは俺にふたりを守らせてほしい」
取られた手を見て。もう一度俺を見上げて。
アリーの瞳から、見る間に涙が溢れ出す。
「アリー…」
「……どうして…」
ぎゅっと手を握り返される。
「…どうして、あれから一度も手を出してくれなかったの……」
絞り出すようなその声に、アリーも俺を求めてくれていたのだと知った。
「すまない」
謝りながら片手で抱きしめると、縋るようにしがみついてくるアリー。
「…だから私は……もう…必要ないんだと…」
「すまない」
「……なのに…こどもができて…ダンは責任を取るって言うだろうけど……」
俺の腕の中ふるふると首を振って。
「私は…そんなのいらないの……。…好きな人に…好きになってもらえたら…それでよかったの……」
好きな人、と言われたことを嬉しく思う反面、何もせずにアリーを苦しめたことが悔やまれて。
「伝えるのが遅くなってすまなかった」
心から詫びると、アリーの声が嗚咽に変わった。
年齢差を気にしていたこと。関係が変わることを恐れたこと。自信がなかったのだと素直に白状する。
すすり泣くアリーを抱きしめながら話した俺に。やがて泣きやんだアリーは、ばかね、と一言呟いた。
アリーの涙を拭って。どちらからともなくキスをして。
「…俺と、一緒になってくれないか?」
改めてそう聞くと、アリーは嬉しそうに瞳を細めた。
「ええ。喜んで」
即答に、嬉しくなって抱きしめる。
くすりと笑いながら抱きしめ返してくれたアリーが、俺の耳元でぽつりと呟く。
「…ねぇ、ダン。お願いがあるの」
「何だ…?」
「抱いてくれない?」
思ってもいない言葉に、俺は驚いてアリーを引き剥がした。
「何言って…」
「私のことを愛してくれてるあなたに。ちゃんと抱かれたいの」
まっすぐに俺を見つめて、アリーが笑う。
「私も、あなたを抱きたい」
確かに俺たちの関係は一方的だったけれども。
「…こどもが……」
「大丈夫。あなたの子だもの。そんなにヤワじゃないわ」
さらりと父親だと認められて、もう一度驚いた。
辛いなら無理をするなと念を押して。改めて向き合うと少々気恥ずかしい。
「…こんなになっちゃったから、前より抱き心地は悪いと思うけどね」
自嘲気味につけ足すアリーに。
「惚れた女を抱くのに、最高以外の何があるんだ?」
当然のことを言っただけなのだが、赤くなって視線を逸らされた。
「もう…」
恥じらうその様子に、年相応のかわいらしい女性であったことを再認する。
思わず笑うと、少し拗ねた顔を返してくるアリー。
「…なぁに」
「いや。かわいいと思っただけだ」
さらに赤らむその頬に口付けてから抱きしめた。
少し疲れた様子のアリーは、並んでベッドに腰掛ける俺にもたれかかるように身体を預けていた。
「…アリーは以前から俺のことを好いてくれていたのか?」
あの日何故俺を受け入れてくれたのだろうかと、ずっと思っていた。
うぬぼれではないと思うが、もちろんそんなに急に自信など持てず。
おずおずと聞くと、アリーはふふっと笑った。
「好きでもない男に身体を許したりしないわよ」
当たり前のように返され、少し嬉しい。
「……いつから?」
手合わせした頃にはおそらくと思いながら、興味本位で聞いてみると、アリーは少し考えてから。
「…ダンが思ってるより、もっとずっと前からよ」
アリーらしいいたずらっぽい笑みで、そう答えた。
俺たちふたりが一緒になるには、まだまだ問題は山積みだが。
どんなに頭を下げてでも、アリーと家族の絆を取り戻すと誓って。
生まれてくる子を皆で迎えることができればと。
そう、願った。
読んでいただいてありがとうございました。
同一話の『その愛を』はアリー視点になります。
『丘の上』をお読みの皆さまへ。
ダンの後日譚です。三八七年雨の月の中頃から、同年実の月の末頃の話です。
冒頭からこんな展開ですみません…。
アリーが初めにダンのところへ来た時点では、ダンは誕生日前なのでまだ十六才差なのですが、アリー編とズレてややこしいので十七才差としております。ちなみに四十一歳です。
まだもう少しすっきりしないところではありますが、これ以上は『丘の上』を読んでいない前提では書きづらく…。できたらもう一話書きたいなと思っています。