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第一話 死を乗り越えしもの

オウルアスト。この世界にはそれぞれの能力に応じて「レベル」が与えられる、そして各町にはそれを知ることのできるあるものが置いてある施設がある。


その施設は魔狩業協会と呼ばれ、そこでは魔物を素材に換金したり、ステータスボードと呼ばれる魔法石版による能力の確認と、アドバイスをしてくれる窓口が存在する。



俺は今日も魔物狩りをして、その日の収穫を換金するいつもの流れで、そのまま魔狩業協会へと足を運んだ。


「すみません、換金をお願いします‥それと、ステータス確認したいのでボードをお願いします。」

「はい、いいですよ~。」

「今回はレベル、上がっているといいですねぇ‥ほぼ毎日のように来てらっしゃるのに、普通の狩人たちであればこれだけ狩っていればレベル20になっていてもおかしくないんですが‥。」


話ながらステータスボードに手をかざし起動すると、俺の目の前へと光板を差し出してくれる。


いつも受付をしてくれるレイナさん‥彼女と話をすると、胸がきゅうっとしてしまうんだよな‥ほんとどうしてなんだろうなぁ‥好きなのかなぁ‥そうじゃないといいなぁ‥こんな俺なんかが好きになっていい人じゃないんだ‥とにかくこのステータスチェックでレベルが上がっていることこそが今は大事なことだ。


「い、いきます‥!」

光板に手をかざし、魔力を流すと空白の部分へと自分のステータスが浮かび上がった。


「これは‥」

「やりましたね!!レベル上昇です!これでレーキさんはレベル15になりました!!なので次に挑めるダンジョンが解放されます、推奨レベル15以上のダンジョン攻略可能です!」


「や、やった‥!やっと‥やっとだ‥!ありがとうございます!レイナさん!」

精一杯の感謝の言葉を彼女に伝えるとレイナさんは「わたしの力ではないですよ!レーキさんの力ですから!」と俺の努力を称えてくれた。


「おいレーキやったじゃねぇか!これなら俺たちとも一緒にダンジョン攻略ができるな!」


「あ、あぁアルカ‥そうだな‥でも俺はもう少し強くなってからにしたいんだ」

「あぁ?いけるようになったらすぐ行って少しでもつえぇ魔物狩って金とレベルとを狙わねぇと損だろうがよ!俺たちがいんだから大丈夫だって!だから明日エウグリバの噴水前で待ち合わせだからな!ぜってぇこいよ!」


エウグリバって‥15レベルで行ける中では難易度が高い部類の洞窟じゃないか‥。

噴水前ってことは洞窟から少し離れた廃墟の街まで行ってからってことになる‥廃墟の町にも魔物は出るからそこで少し腕慣らしをしてからいくんだな‥。


受付のレイナさんに別れの挨拶をしてから魔狩業協会を後にし、道具を少し買い足しに、出てすぐ隣ににある魔狩業協会公認の道具店へと入った。


「まずは…ポーション5個と‥松明、それと魔硫粉を一瓶お願いします。」

「はいよ!全部で750Gだよ」


代金を支払い、アイテムをバッグへ入れ、松明はベルトに差し店を後にする。

これで、気は進まないけど、明日の洞窟探索での準備はやれるだけやった‥お金がなくてこれくらいしかできないけど‥やるしかない。


洞窟探索当日…勢いで誘われて、その勢いに乗っちまった俺が悪いのか…?

どうしてこう、俺のステータスのラック地は低いんだ‥というか、マイナスなんじゃなかろうか‥。


「アルカっちょっなんでお前ひとりなんだよっ少なくとも4人パーティじゃねぇとあの洞窟なんか満足に探索できないだろ!」

「うるっさいなぁ!みんな今日に限って予定が入っちまってこれなくなったんだよ‥でもお前との約束やぶれねぇじゃんか‥」


しおらしくするなよ‥俺よりもレベルたけぇし強いんだから‥そんな顔するなよ‥


「と、とにかく!予定通り、二人だけでもいけるとこまで‥いくぞ!つえぇやつと戦えば経験としてレベルじゃなくても役に立つだろう!知識や経験があればレベル以上の活躍ができるやつだっているんだ」

「お前がそういうなら、わかったよ、でも危なくなったら絶対すぐ引き返すからな!」

「よし、それでいい、いくぞ」


待ち合わせの噴水を離れ、洞窟の入り口まで向かうと何やら他の人間がいた、あれは盗賊か‥?


「げっこいつらと攻略するのはまずい‥あいつらは人間として最低なやつらなんだ、スリに追いはぎ、一部では殺人までするとか‥さすがにそこは噂であってほしいが…」


盗賊団ゲールミンク、三人構成の盗人集団…話には聞いてたけど…まさかここにくるほど強いのか…。

いや、おそらくここを張って無謀な挑戦で弱って出てきたところを身ぐるみを剥いでいるんだろう‥。


「おいどうする、日を改めるか?俺はそのほうがいいと思うんだけど」

「何言ってんだよここまで来たんだから行くに決まってんだろうが」

そう話しているうちに盗賊どもは洞窟に入っていった。


「よし、俺たちも少し時間をおいたら入るぞ」

「ぜってぇ嫌だけど、お前ひとりだけにしてもいやだからついていくよ‥」

「何言ってんだよお前のためになるから一緒に行くんだよ!それにお前と久々に探索したかったし‥」

「最後のほうなんかよく聞こえなかったんだけど、なんて?」

「なんでもねぇよ、そろそろ行くぞ」


盗賊たちから時間をおいて俺たちも入っていく。


「おい少し止まれ…奴らだ‥ゲールミンク。あいつらがあそこで何かやってる、そこの岩陰で様子をみよう」


すかさず俺たちは岩陰に隠れ、盗賊団が何をしているか見てみることにした。


「この宝珠の力はすげぇ…魔物どもの力を奪って俺たちの力にできるってんだからな!おまけに力を奪った魔物を従えられるんだからこれさえあればなんだってできるぜ!金に困ることはねえ!」


盗賊たちが囲むその中央には青白くオーラを放つ宝玉が鎮座していた。


「な、なんだあれ‥明らかにやばいシロモノじゃないか‥?俺はあれに関わらないほうがいいと思うんだけど!}

「何言ってんだよこのまま帰ったらせっかく来たのにもったいねぇだろ!!」

「わかったよ‥確かに何もしないで帰るなんてもったいない‥ただの盗賊三人くらいなら‥でもやばかったら撤退するからな!!」

「いいぜ‥!そうこなくちゃな!」


勢いと好奇心‥自分自身では止められないそんな未熟な考えがあの結末を必然のものとしてしまったのだと、あの頃の俺たちは思いもしなかった。


「おいお前ら!何やら悪いこと考えてんな!!}

「おい!いきなり出るな!!!」


俺の静止が間に合わず、アルカは飛び出してしまった。


「あぁんなんだてめぇらは!今の俺たちゲールミンクに負けはねぇ!なぜならあの方からこの宝玉をいただいたからなぁ!!!」


盗賊のリーダーと思しき男は宝玉に手をかざすと周囲から異質なオーラを纏う魔物が現れ俺たちを囲んだ‥


「や、やば‥まさか魔物を呼ぶなんて‥しかもなに、この力‥これはさすがに、俺でも、無理‥」


盗賊が召喚した魔物は俺たちでは全く見たことのない姿をしていた、オオカミのような、スライムのような、ゴーレムのような‥形容しがたい容姿、それに、冷気が、死を感じるほどの怖気が全身をつつむ言いようのない気配‥それがアルカと俺を襲った。


「ご、ごめ‥レーキ‥おれ‥わたし‥まだ死にたく、ない‥ひっ‥!!」

「ぇ‥あっおいアルカ!!!まて!どこいくんだよ!!おい!!」


ま、まさかアルカが‥逃げた‥?俺より、強いはずのあいつが‥?じゃ、じゃぁ俺はこのあとどうしろっていうんだ‥!?


「ま、まて‥俺なんかじゃこの数にこの力量差はどうにかできるわけないじゃないか‥!だ、だから無害な俺なんか見逃してくれる、だろ‥?」


「いいや、俺たちの秘密を覗きみして、このまま逃がせば脅威として目を付けられるからなぁ、そうなれば俺たちの将来に安心できんのだ。だからなぁ、たとえ無害でも討伐隊でも呼ばれかねないお前らはここで始末するに限る‥だからあきらめて死ねぇぇ!!」


無様に命乞いをしてみるが盗賊どもはやはり俺を生かしてはおかないらしい‥アルカには逃げられ‥逃げるタイミングを失った俺はここで死ぬ‥のか‥なんで‥こうなっちまったんだ‥。


異形の魔物が俺に近づいてくる‥


「くそっレベルが上がったばっかで死ねるかぁぁあああ!!」


明らかに力が及ばないとわかっていても、無抵抗で死ぬのはごめんだ‥!

剣を構え、勢いをつけ魔物に切りつける。


「ぐっ!?」

「ひゃははは!こいつらに普通の剣の攻撃程度など効かねぇぞガキィ!」


俺の剣は確かにやつの身体に食い込んだが、出血はなくそのまま俺の腹部を触手で貫いていた。


「グブッ!う‥」

出血が、口、腹部から大量に噴き出しこれは致命傷だと直感する。

くそ‥くそ‥死にたくねぇな‥アルカ‥ちゃんと逃げたか‥な‥。


意識が薄くなっていき、次第にすべての感覚が無くなっていった。


「ん‥ぐっ!!??な、なんだ!ぐああ?!」


気が付けば俺は魔物のスライム部分に取り込まれ、溶かされていた‥。持続する消化の痛みがいつまでも続いた‥。

「ごぼっあ”が‥あぁぁぁ!!!」

皮膚が溶かされ、肉がゆっくり消化されていき、骨が見える‥はっきりとした意識で痛みによって脳に刻まれる凄まじい感覚‥。それが極限まで達した後、おれは再び意識を失った‥。


気が付けば俺は‥洞窟の隅でうつぶせで倒れていた。


「う‥あ‥?俺は‥そうだ体が溶かされて‥ない‥?そんな馬鹿な‥あの痛みは間違いないはずなのに‥それに、腹部の傷は‥ない‥夢‥にしては‥ここはまだ、さっきの洞窟‥?とにかく、アルカを探さないと‥」


おぼつかない足取りで洞窟の入り口を目指して歩みを進める。


「おっと‥こんなところにいたのか‥レーキ‥」

「あんたは‥誰なんだ‥」


洞窟を歩ていると、大剣を背負う男が目の前に現れた、何か悲壮を感じさせる目をしているが…ただならないオーラも感じる‥そう、あの宝玉のような‥。


「いまはお前に名乗るつもりはない、どうせお前はここでまた死ぬ‥」

「また、またってなんだよ!おい!くそ‥なんなんだよあいつは‥。」


男はそのまま俺を置いて向こうへと歩いて行ってしまった。

そのあと、俺は再び歩いてると、下級クラスの蜘蛛型の魔物、スパイラスが現れた。


「くそ‥あともう少しで出られそうだっていうのに‥けど、このレベルなら俺でも倒せる…!あともうひと踏ん張りだ‥」

俺は剣に手にかけスパイラスに切りかかった。しかし‥


ガキィン!


「そんな‥!このレベルの魔物なら切り裂けるはず‥なのになんで‥!」

「お前はまだ知らなかったな‥死んだ者、それはすなわち、一度すべてを失った者ということだ‥つまりは、今のお前は‥レベル1、その程度の魔物にも劣る存在へとなり下がったということだ‥だからお前はまた死ぬ、そう言ったんだよレーキ‥。」


「さっきの男‥お前‥何者なんだよ‥!」


俺を離れたところから見るその男は何か強い意志を感じさせる瞳でこういった。


「今の貴様如きにお前と呼ばれるのは癪だ、俺はクリードだ‥好きに呼べ、そして、そのまま死ね。」

「なっ!そんなっぐぁっ!!」



スパイラスに歯が立たずあっけなく吹き飛ばされ、倒れた俺に男は冷たい瞳で見下ろしながら言った。


「俺の用意した雑魚にあっけなく殺されるがいいレーキ‥」

「お前っ!く、がぁあ!!」


スパイラスは倒れた俺に襲い掛かると腕に噛みつき肉を引きちぢった、もう一匹は俺の左足のふとももに食らいつき骨ごと砕いた。


「あがあぁぁぁああ!!くっぐうぅぅ‥!!」

強烈な痛みが再びレーキを襲い、死を自ら求めたい気持ちにさせた。

「やめろぉぉおお!!やめてっぐ‥れぇえ‥!!」


腹を抉り、腸を抜き出され、食いちぎられる。

その痛みが気を失うまで続いた、その時間は何時間も、何日にも感じられて‥。


そして、目が覚めると、再びスパイラスに肉体を食いちぎられた。


なぜなんだ‥なんで俺は死んでるはずの痛みに、損傷を受けているのに死ねないんだ‥。

そもそもどうしてこうなってしまったんだ‥。


わからない、わからない、わからない‥肉体を食われ、目覚め、再び食われる‥。



もう何度同じことを繰り返したかわからない‥どれだけの時間この拷問のような時間が続いたのだろう‥。


もうなんのために生きねばならないのか、どうせ死んでも死にきれないのだから‥生きる理由がわからない‥。早く死にたい‥早く、死なせてくれ‥。



「レーキ!!」


声が響いた‥俺の名前を呼ぶ声‥。


目を覚ました時、目の前にいたのはアルカだった‥。


「アルカ‥?どうしてここに‥」

「あんたがっ‥未だに帰ってこないから‥置いてきたところずっと探してて‥」

俺の身体を痛ましそうに見て傷口を撫でながら、治癒魔法を当ててくれていた。


「そうか‥ありがとうアルカ‥でも俺‥せっかく上げたレベルが‥」

「そんなの、また上げればいいだろ‥それより、心配させやがって‥」

そういうとアルカは俺を抱きしめ、涙を流した‥。


「とにかく、ここから早くでるぞ‥」

涙をぬぐい、彼女はそういった‥。


それから、アルカと洞窟を脱出するころには盗賊どもは居なくなっていて、簡単に出ることができた。


「アルカ‥あのあと、無事に出られたみたいで良かった‥」

「あのあと?ご、ごめんねあの時は‥その、なんかわたしどうかしちゃって‥お前をおいて逃げるなんて‥お前よりもレベルが高いのに、本当なら俺がお前を守ってやるべきだったのに‥。

「いい、いいんだ‥もう。それよりも、早く帰ろう‥少し、休みたい‥。」

「あぁ、わかった。」


アルカは俺に肩を貸してくれながら、町までゆっくりと、俺に気を使いながら休みを入れつつ送ってくれた。


「ありがとうアルカ、ここでいいよ、また明日レベル上げに付き合ってほしいんだけど‥いいか?」

「あぁ、今度はお前に合わせたところにする、ゆっくり休んでね‥。」

すごく落ち込んだ声で見送ってくれた‥こういうところはかわいいやつなのがズルいと、少し思ってしまう。


「それと、一応魔狩業協会でステータスのチェックをしたいから‥付き合ってほしいんだ。いいかな」

「それくらいなら全然、付き合う‥付き合う‥よ、少しでもお前といたいからな‥。」

「ありがとう、それじゃぁ、休むよ‥また明日な」

「うん、また明日朝に迎えに行くから‥」

「あぁ、待ってる」


そうして別れ、翌日


「迎えに来たぞ!起きろレーキ!」

「いててっ、おいっ起こすのはいいけど両のほっぺたをはたくのはやめい!」

「けど昨日と違ってだいぶ元気そうだ‥よかった。」

「それはお前もだろレーキ!元気そうでよかったぞレーキ!それじゃぁ行くぞレーキ!!」

アルカの勢いにおされて着替えを促され、朝食を食べる間もなく魔狩業協会へと向かった。


そしてレイナさんから告げられた言葉は、あまりにも衝撃的なものだった。


「レーキさんのレベル‥マイナス3って書いてます‥」

「え‥1じゃなくて?というかマイナスってなんですか‥」

「わたしにもわかりません」

「おいレーキ‥お前なにしたんだ‥オ●ニーか、オ●ニーしてレベル出しすぎたのか?」

「おまっ仮にも女の子なんだからオ●ニーとか公に言うなバカ!」

「バカって言うなマイナスのくせに!」

「マイナスって言うな!マイナスだけど!!っていうかマイナスってなんだよーーー!!!」






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