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異世界を目に、不安を感じる俺。

「ここ、どこ?」


返事、なし。


とりあえず後ろを振り返る。そこには俺がさっきまで籠っていたトイレは、なかった。


というか、何もない。

いや、何もないことはない。


落ち着いて。状況を整理しよう。落ち着け俺。

俺は、今夢を見ているのだろうか?


30分前に薬を飲んだ。睡眠を促す薬、不安や緊張を和らげる薬、うつ状態を改善する薬。


ベッドに潜り込む前に、つまりトイレを出た瞬間に眠ってしまったのだろうか?


そんなこと、あり得るか?今まで経験したことはない。どんなに眠くても風呂に入らなければ

眠れないのが俺だ。


手で頬に触れると若干の温もりを感じた。


夢ではなさそうだ。


足を一歩踏み出す。草の感覚。


俺は裸足。


さっきから否が応でも目に入っていたのは目の前に広がる草原。見渡す限り草原しかない。


ただし見渡せる範囲は少ない。

というのも今、ここは夜のようだ。


「ここは」っていうのがどこを指しているのか、頼むから誰か教えてほしい。


不安になってきた。


もう一歩踏み出してみる。


何も起こらない。


何か起きても怖いけれど何も起きないのはそれはそれでどうしたらいいのか分からない。


俺もライトノベルとかは昔読んでいたからな、こういう時の展開を想像することはできる。


俺が読んでいたものでは、突然美少女が現れていた、ような気がする。


いや、そもそも美少女が目の前にいる状態で自分が異世界へ転生、あるいは転移していたな。


今、俺の場合は回りに人気はない。


つまり、美少女との運命的出会いパターンではなさそうだな。


まじでどうしよう。山で遭難した時はその場から動くな、って言うよな。

草原で遭難?した場合はどうしたらいいのだろうか。


幸いなことに寒さは感じない。むしろ少し暑いくらいか。


着る毛布を着ていたがここでは必要なさそうなので脱いだ。


どうしたらいいのか分からないけれど、今は夜。

夜は出歩くな、と親に習った俺は大人になっても割とそれを忠実に守っていた。

夜は危ない。

酔っ払いに絡まれる可能性がある。そういう危険は最初から避けるべきだ。

無論、俺も社会人。行きたくもない職場の飲み会に行った回数はもう数えられない。

それでもできるだけ一次会で帰るようにしていた。それが俺のルールだった。


ここには酔っ払いはいないようだが、それでも暗がりの中をうろうろするのは危険だ。

凍え死ぬ可能性もないのであれば、朝まで横になっているのが最善のような気がする。


ということで俺は草原に横たわった。

すると空が見える。


その空が、物凄く綺麗だった。


それ以外の言葉が出てこなかった。


星が無数に散らばっていた。丸い月?が堂々とそこにあった。


何故かは分からないけれど俺は泣いていた。


なぜ涙が出てきたのかは分からない。


分からないことだらけなんだ、俺。


自分がどんな人生を送りたいのか、とか昔はそういうことを考えて生きていた。


「人生設計が大事なんだよぁ」と20代、30代、40代の目標とかを頭の中で

考えては「そこそこ順調じゃん」と一人で納得していた。


その頃の自分と今の自分が同一人物とは自分でも思えないほどに外見も、中身も変わって

しまった。


けど、この空を見ているとそういうことがどうでも良くなってきた。


あ、異世界転移ものだとこういう時ドラゴンとか、明らかに勝てなさそうな奴が出現したり

しないっけ。目を凝らすが特に空からそういったものが現れる気配はなさそうだ。


ああ、なんだろう、なぜか落ち着く。薬のおかげか、それともこの心地よく吹く風のおかげか。


俺は久しぶりに晴れやかな気持ちで眠りについた。

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