8、心ない言葉に心巡らす
ちょっと悩んだ回です。
拙い文んですが、読んだ人に少しでも伝わりますように。
ヘーベル総括部長(第四王子ウィー)が手配してくれた宿に、馬車で宿に着くと夕飯には早かったので、少しだけ街を散策することにした。
まだ明るい夕方の街では、活気のある屋台が軒を連ねていた。
焼いた肉の匂い、揚げた甘い匂いのする物、色とりどりの飲み物、私は前世の『ニホン』でのお祭りを思い出していた。
外で飲酒する、ビアガーデンのようなものもあり、酒のつまみに目をやると、なんだかそら豆っぽい。
なんか、懐かしいなぁと思って控え目にしつつもジトッと見ていると、ゴツい髭のおじさんが、コッチを見て話しかけてきた。
「あんたら見ない顔だな。そっちの背のデカいねーちゃんは、外国人か?」
咄嗟にレン様の事を言われてるんだと気付いた時、私は思わず顔をしかめた。
まあ、この国では珍しい褐色の肌ではあるけれど、第四王子と幼なじみになってる位の家柄だ、レン様の家はきちんと手続きしたこの国の国民だろう。
だけど、、、
「あちらに座りましょうか。みんな、喉が乾いたんじゃない?」
レン様は、極めて涼しい顔で微笑むと、そう言った。
「なんだぁ?女かと思ったら、男の声じゃねーか!女の格好して脚なんか出して、外国人が気色悪ィな。」
私は胸の中がこの上なく冷たくなり、周りの雑多な音も聞こえなくなった。
「ハルさん、ハルさん!あっちに行こう、あっちに!」
私はレン様に腕を掴まれ、そのおじさん(超絶クソ野郎)から、どんどん離されていった。
かなり離れた壁際のテーブル席に四人掛けると、やんごとなき雅な和風イケメン剣士リューイが、私を見ながら呆れた様子でこう言った。
「ハルエネさん。君ね、映像記録に関しては国始まって以来の稀に見る特殊技能持ちだけども、戦闘能力も技術もからっきしダメなんだから、あんな酔っ払いのオッサン、ブチ殺すぞな殺気醸し出して睨みつけるんじゃないよ。僕ら魔王討伐に行くのであって、酔っ払いのオッサン倒すために行くんじゃ無いんだから。」
その隣でウンウンと頷く筋骨隆々魔導師も、ちょっとだけ眉尻を下げて私を見ながら静かにこう言った。
「聖女殿があのオッサンから引き離さなかったら、なんとなくだけどあのオッサンが飲んでた酒、顔にぶっかけてたんじゃないか?」
「私に投げつけられた言葉に怒ってくれたのよね。ありがとうハルさん。でもあんなの初めてじゃないから、、、」
レン様は私をジッと見てそう言った。
「辛くは、ないんですか?」
そうレン様に聞きながら、私は鼻の奥がツンとして来たので、下唇を噛んで堪えた。
「そりゃ悲しいし、辛いわ。どんなに綺麗にしてても、気持ち悪がられたり嫌われたり、去っていかれたりする。さっきみたいに言葉をぶつけられたり、、、でも、それにまんまと乗せられて私がどんどん絶望に沈んで落ちてったら、それこそ嫌だし悔しいって思うの。」
私はジッと下唇を噛みしめて、レン様の話を聞いた。
聞いて、思いを巡らせた。
気持ち悪いとか、嫌だとか思い気持ちは、誰にでも起きる事だ、私にだってある。
でも、明らかにあのオッサンの言葉は、レン様を傷つけようとして敢えてわざわざぶつけられたもの。
だから許しがたいのだ。
ヤダって思うのは、人それぞれだからどうしようもない、仕方ないさ。それでも初対面なのに、まず否定から入って、さらに傷付けようとするなんてさ!
あの野郎帰り道ドブに落ちろ!
「ハルさん、怖い顔になってる。」
レン様が、ちょっと困ったように笑って、指で私の眉間をちょんとやった。
ヤバい、、、触られた、、、レン様に初お触りされた。
神様ありがとうございます。
「今度はまるで天国に居るような顔になりましたね。実に表情豊かですねハルエネさんは。」
やんごとなき雅な和風イケメン剣士リューイが、また呆れたようにそう言った。
「ねえねえ、せっかく来たんだから、皆で飲み物注文しましょうよ。私フルーツジュースがいいなー。」
レン様がニコニコしてそう言った。
メニューを見て前世でいうカシスのような果物のジュースに決めると、レン様の「さあ、乾杯!」の声に乗せられた形で、グラスをかちゃん、と合わせあった。
私は飲み干しながら、そうか『心ない言葉』って、人への心巡らす気持ちが無いんだ。昔の人は、ちゃんとその表現する言葉を作った。
まるでその場面が見えるような、的確な言い表し方じゃないだろうか。
私の写真でも、そんな感じが表せれば良いな。
剣士、魔導師ともまるで長年の友のように打ち解けた、笑顔のレン様を見ながら、私はそう思った。
お読みいただき、ありがとうございます。